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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】建設技術研究所は下値切り上げて調整一巡、TPP関連としても注目
- 2015/10/6 06:54
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
建設技術研究所<9621>(東1)は総合建設コンサルタントの大手である。株価は下値を切り上げて調整が一巡した形だ。15年12月期増収増益予想であり、中期的にも事業環境は良好だ。農業ビジネスへの参入でTPP(環太平洋経済連携協定)関連としても注目される。指標面の割安感も評価して水準切り上げの展開だろう。
■総合建設コンサルタントの大手
総合建設コンサルタントの大手で河川・ダム・海岸・海洋、道路、橋梁、トンネル、都市・地方計画などの分野に強みを持っている。13年9月に農業・農村関連ビジネスへの参入を視野に入れて子会社CTIフロンティアを立ち上げた。また14年4月には太陽光発電事業に着手した。
15年6月にはユニチカ<3103>からユニチカ環境技術センターの全株式を取得して完全子会社化した。同社の子会社化によって土壌、大気、水質などさまざまな環境要素のモニタリング・解析が可能となり、当社グループの環境分野でのソリューション提供力のさらなる強化を目指すとしている。
また15年8月、民事再生手続中の日総建(東京都)に対するスポンサー支援の覚書締結を発表した。日総建の主力分野である建築設計と当社関連部門との連携による業務拡大が見込まれるとしている。なお支援の具体的方法は現在協議中で、有利子負債は引き継がないとしている。
■中長期ビジョンで事業領域拡大を推進
15年5月にCTIグループ中長期ビジョン「CLAVIS2025」を策定した。グループの目指す方向は、幅広いインフラを対象としてあらゆるニーズに対応する「マルチインフラ企業」、世界に貢献するために海外業務をさらに拡大する「グローバル企業」であり、これを技術者と技術を経営資源とする「アクティブ企業」への推進によって実現するとしている。
そして25年の事業規模目標を600億円(国内500億円、海外100億円)として、環境調査・分析、物流、エネルギー、インフラ整備・運営、農業経営・コンサルタント、気象予測サービスなど、新分野・未参入分野・周辺分野・新業種等へ事業領域を拡げる方針を掲げている。
■15年12月期増収増益基調
なお14年12月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)100億06百万円、第2四半期(4月~6月)108億72百万円、第3四半期(7月~9月)92億80百万円、第4四半期(10月~12月)93億66百万円、営業利益は第1四半期10億22百万円、第2四半期8億85百万円、第3四半期3億76百万円、第4四半期1億05百万円だった。期後半の利益が低水準だった。
また14年12月期の配当性向は17.1%だった。ROEは13年12月期比2.2ポイント上昇して6.9%、自己資本比率は同4.2ポイント低下して53.1%だった。
今期(15年12月期)の連結業績予想(2月13日公表)は、売上高が前期比3.7%増の410億円、営業利益が同4.6%増の25億円、経常利益が同3.0%増の26億円、そして純利益が同4.0%増の15億50百万円としている。配当予想は前期と同額の年間18円(期末一括)で予想配当性向は16.4%となる。
受注高は同0.9%減の400億円の計画としている。東日本大震災の復興関連業務の重点が設計段階から施工段階に移行することに加えて、財政再建のための公共工事発注減少も予想されるとして、やや慎重な見通しだ。
第2四半期累計(1月~6月)は、売上高が前年同期比3.2%増の215億46百万円、営業利益が同11.0%減の16億97百万円、経常利益が同10.1%減の17億53百万円、純利益が同3.1%減の10億78百万円だった。
受注高は同0.9%増の227億42百万円だった。人件費の増加などで減益だったが、技術力によって契約企業を選定するプロポーザル方式において優位性を発揮し、受注は順調に推移したようだ。
なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)78億09百万円、第2四半期(4月~6月)137億37百万円、営業利益は第1四半期1億92百万円、第2四半期15億05百万円だった。第1四半期は売上高が低水準だったが、第2四半期は順調に推移した。
通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が52.6%、営業利益が67.9%、経常利益67.4%、純利益69.6%と高水準である。通期会社予想はやや保守的な印象が強く増額の可能性もあるだろう。
■中期的に事業環境は良好
中期的には良好な事業環境が追い風となる。20年東京夏季五輪関連、リニア新幹線関連など建設ビッグプロジェクトが目白押しであり、国土強靭化基本計画に沿って社会資本整備に対する計画的な投資が実行される。
防災・減災関連、老朽化インフラ補修・更新関連、都市再開発関連、アベノミクス重点戦略「地方創生」関連の案件が増加し、土木コンサルタント業務の積算に用いられる技術者単価や一般管理費の比率が上昇して採算改善も期待される。
中期的に事業環境は良好であり、CTIグループ中長期ビジョン「CLAVIS2025」で掲げた新分野・未参入分野・周辺分野・新業種等への事業領域拡大戦略も奏功して収益拡大が期待される。農業ビジネスへの参入でTPP(環太平洋経済連携協定)関連としても注目されそうだ。
■株価は下値切り上げて調整一巡
株価の動きを見ると上値が重くやや反発力の鈍い展開だが、一方では6月安値1055円、7月安値1093円、8月安値1114円、9月安値1153円、そして10月2日の1180円と下値を切り上げて調整一巡感を強めている。
10月5日の終値1220円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS109円61銭で算出)は11~12倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間18円で算出)は1.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1539円79銭で算出)は0.8倍近辺である。なお時価総額は約173億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線および26週移動平均線を挟んでモミ合う形だが、下値を切り上げて調整が一巡した形だ。15年12月期増収増益予想であり、中期的にも事業環境は良好だ。農業ビジネスへの参入でTPP(環太平洋経済連携協定)関連としても注目される。指標面の割安感も評価して水準切り上げの展開だろう。