【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ヨコレイは悪地合いに伴う調整が一巡、低PBRでTPP関連も注目

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ヨコレイ(横浜冷凍)<2874>(東1)は冷蔵倉庫の大手で食品販売事業も展開している。株価は悪地合いに伴う調整が一巡したようだ。16年9月期も増収増益基調が予想され、1倍割れ水準の低PBRも評価材料だ。そしてTPP(環太平洋経済連携協定)関連としても注目度が高まる。8月の年初来高値1042円を目指す展開だろう。なお11月13日に15年9月期の決算発表を予定している。

■冷蔵倉庫事業と食品販売事業を展開、17年9月期純利益32億円目標

 冷蔵倉庫事業、および水産品・畜産品・農産品などの食品販売事業を展開している。

 14年10月スタートの第5次中期経営計画「Flap The Wings 2017」に基づいて、冷蔵倉庫事業では「COOLネットワークのリーディングカンパニー」を目指し、食品販売事業では「安定的な利益追求を基本としながらも、強みのある商材を全社的に展開する」ことを命題としている。
 
 目標数値としては17年9月期の売上高1500億円(冷蔵倉庫事業258億円、食品販売事業1242億円)、営業利益57億円、経常利益57億円、純利益32億円、ROE5.1%、配当性向40%以上、EBITDA100億円、自己資本比率52.0%を掲げている。安定・着実な成長で持続的な企業価値向上を目指す方針だ。

■低温物流サービスの戦略的ネットワークを構築

 冷蔵倉庫事業では物流アウトソーシングサービスを軸とした総合低温物流への取り組みを強化し、低温物流サービスの戦略的ネットワーク展開に向けて積極投資を進めている。

 国内では14年4月北海道小樽市・石狩第2物流センター、14年6月大阪市・夢洲物流センター、14年10月宮崎県都城市・都城第2物流センターが竣工した。海外はASEAN地域への展開で14年2月にタイ・ワンノイ物流センター2号棟が竣工した。

 また15年4月には、北海道・十勝物流センターおよび十勝第2物流センター隣接地に「十勝第3物流センター(仮称)」を新設(15年5月着工、16年8月竣工予定)すると発表した。隣接する2センターを含む3センター合計の収容能力は6万1千トンを超え、道内最大級の低温物流基地となる。

 さらに8月11日には、タイ・バンパコン物流センター敷地内に、バンパコン第2物流センターが竣工したと発表した。同センターの稼働により、タイヨコレイ全体の保管収容能力は約9万6000トンとなり、タイ国内トップシェアがさらに拡大した。

■16年9月期も増収増益基調

 前期(15年9月期)連結業績予想(11月14日公表)は売上高が前々期比1.4%増の1436億30百万円、営業利益が同7.2%増の44億円、経常利益が同3.8%増の42億60百万円、そして純利益が同36.2%増の25億円としている。配当予想は前々期と同額の年間20円(第2四半期末10円、期末10円)で予想配当性向は41.4%となる。

 セグメント別計画は、冷蔵倉庫事業の売上高が同5.9%増の236億円、営業利益(全社費用等調整前)が同0.2%増の48億円、食品販売事業の売上高が同0.6%増の1200億円、営業利益が同24.5%増の16億円である。

 冷蔵倉庫事業では、前期稼働で費用が先行していた北海道小樽市・石狩第2物流センター、大阪市・夢洲物流センター、宮崎県都城市・都城第2物流センター、タイ・ワンノイ物流センター2号棟の収益寄与が期後半に向けて本格化する。食品販売事業は水産品の市況が軟化傾向だが、販路拡充や回転率重視の販売などで収益確保に取り組む方針だ。

 第3四半期累計(10月~6月)連結業績は売上高が前年同期比10.2%増の1145億52百万円で、営業利益が同9.0%減の30億51百万円、経常利益が同5.0%減の32億07百万円、純利益が同0.8%増の20億48百万円だった。

 冷蔵倉庫事業は売上高が同8.5%増の179億74百万円、営業利益(全社費用等調整前)が同4.5%減の37億43百万円だった。前期新設のワンノイ物流センター2号棟がフル稼働状態に達したことも寄与して、入庫取扱量が同3.3%増、出庫取扱量が同1.5%増、平均保管在庫量が同7.3%増と好調に推移した。ただし減価償却費の増加などで営業減益だった。

 食品販売事業は売上高が同10.5%増の965億53百万円、営業利益が同17.8%減の7億85百万円だった。食品相場の軟化や円安の影響で営業減益だった。ただし不採算在庫圧縮徹底や戦略的商材拡販などの効果で、四半期別にみると第2四半期累計(10月~3月)までの減益基調から、第3四半期(4月~6月)は増益(前年同期比2.6倍の5億22百万円)に転じた。

 なお15年9月期の四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(10月~12月)399億38百万円、第2四半期(1月~3月)350億45百万円、第3四半期(4月~6月)395億69百万円で、営業利益は第1四半期12億95百万円、第2四半期5億28百万円、第3四半期12億28百万円だった。食品販売事業の営業利益は第1四半期3億30百万円の黒字、第2四半期67百万円の赤字、第3四半期5億22百万円の黒字だった。

 通期会社予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が79.8%、営業利益が69.3%、経常利益が75.3%、純利益が81.9%である。食品販売事業の営業損益が改善基調であることを考慮すれば、通期会社予想に増額の可能性もありそうだ。

 今期(16年9月期)も増収増益基調だろう。冷蔵倉庫事業では入庫・出庫取扱量および平均保管在庫量が順調に増加し、新規稼働物流センターの収益寄与本格化も期待される。食品販売事業では引き続き、不採算在庫圧縮徹底や戦略的商材拡販などの効果が期待される。

■株価は悪地合いに伴う調整が一巡

 配当政策の基本方針は安定的な配当を継続して行うとしている。そして企業価値向上に必要な設備・IT投資等を勘案しつつ、配当性向40%以上を維持していくことを目標としている。

 株主優待については毎年9月30日現在の1000株以上保有株主に対して実施している。優待内容は1000株以上~3000株未満保有株主に対して鮭切身詰め合わせ、3000株以上保有株主に対して北海道産ホタテ・いくらセットを贈呈する。

 株価の動きを見ると、悪地合いの影響で8月の年初来高値1042円から反落したが、9月末の配当・株主優待権利落ちの影響も限定的であり、900円台前半の水準で調整が一巡したようだ。そして10月5日には959円まで上伸した。TPP関連としても注目されたようだ。

 10月5日の終値954円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS48円31銭で算出)は19~20倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間20円で算出)は2.1%近辺、そして前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS1135円88銭で算出)は0.8倍近辺である。なお時価総額は約500億円である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線を突破した。また週足チャートで見ると26週移動平均線近辺から切り返す動きだ。調整が一巡して強基調へ回帰した可能性がありそうだ。16年9月期も増収増益基調が予想され、1倍割れ水準の低PBRも評価材料だ。そしてTPP関連としても注目度が高まる。8月の年初来高値1042円を目指す展開だろう。

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