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Jトラストは調整一巡、24年12月期減益予想だが保守的
- 2024/5/27 09:55
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
Jトラスト<8508>(東証スタンダード)は日本、韓国・モンゴル、およびインドネシアを中心とする東南アジアにおいて金融事業を展開し、成長に向けて継続的にポートフォリオ再編や事業基盤拡大を推進している。24年12月期第1四半期は負ののれん発生益の剥落などにより大幅減益(営業赤字)だが、営業収益が第1四半期として過去最高と順調に推移し、営業利益も計画を上回る水準で着地した。そして通期予想(負ののれん発生益の剥落により減益予想)を据え置いた。第1四半期の営業利益が計画を上回ったことなどを勘案すれば保守的な印象が強く、通期予想にも上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は安値圏に回帰してやや軟調だが、指標面の割安感も評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。
■日本、韓国・モンゴル、東南アジアで金融事業を展開
日本、韓国・モンゴル、およびインドネシアを中心とする東南アジアにおいて金融事業(銀行、信用保証、債権回収、その他の金融)を展開し、さらなる成長に向けて継続的にポートフォリオ再編や事業基盤拡大戦略を推進している。
23年12月期のセグメント別利益(全社費用等調整前営業利益)は日本金融事業が46億56百万円、韓国およびモンゴル金融事業が33億34百万円の損失、東南アジア金融事業が10億19百万円の損失、不動産事業が108億10百万円、投資事業が20億72百万円の損失、その他は55百万円の損失だった。韓国およびモンゴル金融事業では前期のJT親愛貯蓄銀行の取得に伴って計上した負ののれん発生益の剥落が影響、不動産事業では吸収合併したミライノベートの取得に係る負ののれん発生益計上が寄与した。収益はM&A・事業再編・不良債権処理などで変動する可能性がある。
■成長加速に向けて事業基盤拡大
日本金融事業は日本保証が保証事業、パルティール債権回収が債権回収事業、Frontier Capitalがファクタリング事業を展開している。なお、20年11月にNexus Bank(旧SAMURAI&J PARTNERS)と株式交換によってJトラストカードおよびJトラストカードの子会社である韓国・JT親愛貯蓄銀行を連結除外としたが、その後22年4月にNexus Bankを株式交換によって完全子会社化し、Nexus Bank傘下の子会社3社(SAMURAI TECHNOLOGY、Nexus Card、JT親愛貯蓄銀行)も連結子会社となった。そして、SAMURAI TECHNOLOGYについては22年4月に全株式を譲渡して連結除外、Nexus Bankについては23年4月に吸収合併した。また23年10月には西京カードを子会社化した。
Jトラストグローバル証券(JTG証券、22年3月に子会社化したエイチ・エス証券が22年10月に商号変更)については、22年12月に主幹事を担当したアップコン<5075>が名証ネクストに上場した。TOKYO PRO Market上場支援と、一般市場へのステップアップ上場支援を1社完結で実現させた実績を持つ国内唯一の証券会社である。23年7月にはIFA事業者の事業拡大支援サービスを本格的に開始した。また新TVシリーズで、高島彩さんと石原良純さんが共演した「JTG証券プライベートバンキング編」を、5月22日より放映開始した。
韓国およびモンゴル金融事業では、韓国・JT親愛貯蓄銀行を直接親会社のJトラストカードと一緒に売却したが、Nexus Bankを完全子会社化したことに伴ってグループに復帰した。韓国・JTキャピタルについては21年8月に全株式の譲渡を完了して連結除外した。韓国・JT貯蓄銀行については、株式売買契約締結期限までに契約内容の合意に至らなかったため株式譲渡を中止した。
この結果、韓国およびモンゴル金融事業は、韓国・JT貯蓄銀行、韓国・JT親愛貯蓄銀行、および債権回収業務の韓国・TA Asset、割賦業務のモンゴル・JトラストクレジットNBFIが展開している。JT貯蓄銀行とJT親愛貯蓄銀行を合計すると、総資産および貸出金で韓国の貯蓄銀行79行のうち7位規模(21年9月現在)となる。なお23年12月にはJT貯蓄銀行が、大韓民国障害者体育発展への貢献が認められて大韓障害者体育会の会長賞を受賞した。
東南アジア金融事業は、Jトラスト銀行インドネシア(BJI)が銀行業務、Jトラストインベストメンツインドネシア(JTII)が債権回収業務、カンボジアのJトラストロイヤル銀行(JTRB)が銀行業務を展開している。
23年6月には第4回インドネシアトップバンクアワード2023において、コンベンショナル-KBMI 1カテゴリーでの「2023年度トップバンクアワード」を受賞した。23年9月にはBJIがJKT48を運営するIDN MEDIAと、JKT48のブランドアンバサダー契約を締結した。23年10月にはBJIが西京銀行と業務提携した。インドネシアに進出している、または進出を予定している西京銀行の取引先事業者をBJIへ紹介する。
なお23年6月に、Jトラストアジアが保有するJトラストオリンピンドマルチファイナンス(JTO)の株式を譲渡(譲渡実行日はインドネシア金融庁の承認後)する株式売買契約を締結した。これによりJTOは連結除外となる。
不動産事業は同社、Jグランド、グローベルス、ライブレントが展開している。23年2月には同社がミライノベートを吸収合併した。23年5月にはJグランドが、東京の城西地区を中心に不動産業を展開するライブレントを子会社化した。なお24年3月には子会社グローベルスについて、東京証券取引所のTOKYO PRO Marketへの株式上場準備を行っているとリリースした。
投資事業はJトラストアジアが展開している。なおJトラストアジアは販売金融事業のタイGLH社に出資したが、17年10月にタイGLH社CEO此下益司氏がタイSECから偽計および不正行為で刑事告発された。このため現在はタイGLH社、此下益司氏、およびGLH社の関連取締役に対して、刑事告発手続き、会社更生法申し立て・補償請求・賠償請求などの訴訟を提起している。
GLH社に対する訴訟の解決・債権回収が課題となっていたが、勝訴判決に基づいて履行を受けるなど解消に向けた動きが進展している。
タイにおいては、21年3月の控訴審判決でJトラストアジアによる権利行使は適法であるとしてGLH社の請求を全面的に棄却したが、この控訴審判決を不服とするGLH社の上告受理の申し立てが最高裁判所において22年8月31日付で受理の決定がなされた。ただし最高裁判所における審理においても、引き続き主張が認められるよう尽力するとしている。またGLH社に対する会社更生の申し立てについては、最高裁判所において21年12月に申し立てが却下されたが、民事訴訟については第1審の審理が継続している。なおGLH社が同社に対して提起していた損害賠償を求める訴訟については、2月13日にタイの民事裁判所による判決の言い渡しがあり、GLH社の請求が全て却下された。
英領バージン諸島においては21年5月に、控訴裁判所が昭和ホールディングスによる上訴を棄却した。そして22年5月には、民事訴訟における支払命令(約95百万米ドル)判決が確定した。キプロスにおいては21年8月に、此下益司氏ならびにキプロス所在4社に対して約130百万米ドルの賠償を求める訴訟を提起し、裁判所が被告らに対する全世界的資産凍結命令を発令した。
日本では21年6月に、A.P.F.GROUP、昭和ホールディングス、ウェッジホールディングスに対して、約24百万米ドルの支払いを求める損害賠償請求訴訟を東京地裁に提起した。日本における損害賠償請求訴訟については、22年3月の東京地方裁判所による第一審判決で損害賠償請求が認められなかったが、判決内容を十分に精査し、弁護士とも協議のうえ今後の対応を検討するとしている。
シンガポールにおいては、23年4月にシンガポール高等法院が被告らに対して連帯で約1億24百万米ドルおよび21年8月1日からの利息の支払い等を命じる判決(第1審判決)を言い渡し、控訴審においてシンガポー高等法院上訴部が23年11月22日付で第1審判決を維持する判決を言い渡した。さらに24年1月11日付で控訴裁判所が控訴を棄却し、23年4月の第1審判決が確定した。24年3月にはシンガポー高等法院がJトラストアジアの申し立てに基づき、GLH社の清算手続開始を決定し、GLH社に対して清算人を選任した。また5月14日には、1月11日付の確定判決により約1億24百万米ドル(判決言い渡し当時の為替レート1米ドル=146円換算で約181億円)および21年8月以降の利息に係る判決債権を有しているが、同判決に基づき、キプロスにおいて此下益司氏実質的に保有している銀行預金口座等に対する強制執行を実施し、合計約8億47百万円(1ユーロ=167円、1米ドル=155円で換算)を差し押さえて回収したとリリースしている。
その他事業は主にJ Sync(旧Robotシステム)がグループのシステム開発・運用・管理業務を展開している。J Syncは22年3月に不動産クラウドファンディングシステム「fundingtool」の提供を開始した。23年3月には電子決済等代行業の登録が完了した。
KeyHolder<4712>については、保有する同社株式の一部を、ミクシィ<2121>が設立したミクシィエンターテインメントファンド1号投資事業有限責任組合など5社に譲渡(20年12月)した。引き続き当社が筆頭株主だが、KeyHolderおよび同社の連結子会社は持分法適用関連会社となっている。
なお遊戯場運営のガイア(23年10月30日付で民事再生手続きの開始申立)については、23年10月にガイアグループの再建支援を目的とする基本合意書を締結し、24年1月にKeyHolderがガイアの子会社であるトポスエンタープライズに対して民事再生支援(スポンサー支援)を行うと表明した。
■24年12月期1Q営業減益だが計画超、通期減益予想だが上振れ余地
24年12月期連結業績予想については営業収益が23年12月期比12.0%増の1280億円、営業利益が8.2%減の74億円、親会社の所有者に帰属する当期利益が60.8%減の64億円としている。配当予想は23年12月期と同額の14円(期末一括)としている。予想配当性向は30.0%となる。
セグメント別営業利益計画は、日本金融事業が22.9%増の57億22百万円、韓国およびモンゴル金融事業が8億37百万円(23年12月期は33億34百万円の損失)、東南アジア金融事業が17億32百万円(同10億19百万円の損失)、不動産事業が89.5%減の11億33百万円、投資事業が1億53百万円(同20億72百万円の損失)、その他事業が50百万円(同55百万円の損失)としている。
日本金融事業は信用保証業務、債権回収業務、証券業務が順調に伸長して大幅増益を見込む。韓国およびモンゴル金融事業は質の成長を目指し、貯蓄銀行業務と債権回収業務による安定的な利息収益計上を見込む。東南アジア金融事業は、インドネシアでは銀行業務の積極的な貸出残高の増強など、債権回収業務の買取債権増加による収益機会の拡大、カンボジアでは富裕者層顧客のニーズを汲み取った商品開発などを推進する。不動産事業では総合不動産会社として商品ブランド認知に注力する。投資事業では裁判費用等の回収コストを抑制しつつ、GL社に対する債権回収強化を図る。
第1四半期は営業収益が前年同期比21.2%増の315億54百万円、営業利益が2億81百万円の損失(前年同期101億35百万円の利益)、そして親会社の所有者に帰属する当期利益が99.6%減の38百万円だった。
ミライノベートを吸収合併したことに伴い前期計上した負ののれん発生益101億円の剥落や営業費用の増加などにより大幅減益(営業赤字)だが、負ののれん発生益を除くベースでは小幅減益(2億円減益)となる。また、日本金融事業および東南アジア金融事業が牽引して営業収益が第1四半期として過去最高と順調に推移し、これに伴って営業利益も計画を約9億円上回る水準で着地した。
日本金融事業の営業利益は66.4%増の14億63百万円だった。証券業務やクレジット・信販業務における手数料収益の増加などで23.4%増収となり、貸倒引当金(損失評価引当金)繰入額の減少なども寄与した。
韓国およびモンゴル金融事業の営業利益は12億86百万円の損失(前年同期5億78百万円の損失)だった。貸倒引当金(損失評価引当金)繰入額の増加や債権売却損の計上などで営業損失が拡大した。ただし概ね計画水準であり、下期以降は営業黒字を見込んでいる。
東南アジア金融事業の営業利益は32.3%増の10億26百万円だった。銀行業における貸出金の増加や保有有価証券の増加に伴う利息収支増加などで36.2%増収となり、貸倒引当金(損失評価引当金)繰入額の減少なども寄与した。
不動産事業の営業利益は43百万円の損失(前年同期100億56百万円の利益)だった。Jグランドの不動産取扱件数の増加、ライブレントの連結取込などにより不動産販売収益が増加したが、ミライノベートを吸収合併したことに伴い前期計上した負ののれん発生益が剥落した。
投資事業の営業利益は9億16百万円の損失(前年同期2億04百万円の損失)だった。訴訟費用が増加した。その他事業の営業利益は2百万円の損失(前年同期3百万円の利益)だった。
通期予想は据え置いて、負ののれん発生益の剥落により減益予想としている。ただし、第1四半期の営業利益が計画を上回ったことなどを勘案すれば保守的な印象が強く、通期予想にも上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。
■株主優待制度は毎年6月末日対象
株主優待制度については23年3月末対象から再開した。そして24年3月末日権利確定分より変更する。変更後は毎年6月末日時点で1単元(100株)以上保有株主を対象にDSクリニック(メンズ・レディース痩身、AGA、美肌施術など)で使用可能な3万円の金券1枚を贈呈する。24年6月末対象より実施する。また5月7日には宝塚歌劇公演チケットを抽選により贈呈するとリリースした。
■株価は調整一巡
2月13日発表の自己株式取得(上限400万株・20億円、取得期間24年3月27日~24年11月30日)については、24年4月30日時点の累計取得株式総数が63万3900株となっている。また2月29日付で自己株式938万株の消却が完了した。
株価は安値圏に回帰してやや軟調だが、指標面の割安感も評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。5月24日の終値は396円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS46円61銭で算出)は約8倍、今期予想配当利回り(会社予想の14円で算出)は約3.5%、前期実績連結PBR(前期実績の連結1株当たり親会社所有者帰属持分1104円10銭で算出)は約0.4倍、時価総額は約545億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)