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ゼリア新薬工業は調整一巡、25年3月期増収増益・連続増配予想
- 2024/5/30 06:40
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ゼリア新薬工業<4559>(東証プライム)は消化器分野が中心の医療用医薬品事業、および一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。第11次中期経営計画では、好調な欧州事業に加えてアジア地域での事業展開も推進する方針としている。また国内では医療用医薬品市場におけるプレゼンスの確保や、コンシューマーヘルスケア事業の拡大を推進している。25年3月期は医療用医薬品事業、コンシューマーヘルスケア事業とも順調に伸長して増収増益予想、そして連続増配予想としている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は安値圏に回帰したが調整一巡して出直りを期待したい。
■医療用医薬品事業とコンシューマーヘルスケア事業を展開
消化器分野が中心の医療用医薬品事業、および一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。収益面では薬価改定、ライセンス収入・ロイヤリティ収入、研究開発費、広告宣伝費などの影響を受けやすい。
24年3月期のセグメント別業績は、医療用医薬品事業の売上高が495億71百万円で営業利益(全社費用等調整前)が92億46百万円、コンシューマーヘルスケア事業の売上高が259億98百万円で営業利益が52億60百万円、その他(保険代理業・不動産賃貸収入)の売上高が1億54百万円で営業利益が2億51百万円、全社費用等調整額が▲51億36百万円だった。地域別売上高は日本が367億52百万円、イギリスが95億39百万円、欧州が244億07百万円、その他が50億25百万円だった。
■医療用医薬品事業は潰瘍性大腸炎治療剤アサコールなどが主力
医療用医薬品事業は、潰瘍性大腸炎治療剤アサコールを主力として、炎症性腸疾患治療剤Entocort(エントコート、国内販売名ゼンタコート)や、機能性ディスペプシア治療剤アコファイドなども拡大している。20年9月に国内で販売開始した鉄欠乏性貧血治療剤フェインジェクトについては、消化器科・産婦人科を中心に市場構築を推進している。
また、アステラス製薬の英国子会社が欧州を中心に販売しているクロストリジウム・ディフィシル感染症治療剤ディフィクリア錠(英名DIFICLIR)については、20年11月に欧州、中東、アフリカおよび独立国家共同体(CIS)における製造販売承認を承継する資産譲渡契約を締結し、21年6月に欧州テリトリーでの製造販売権承継をほぼ完了した。
23年4月には、アステラス製薬が日本において製造販売しているクロストリジウム・ディフィシルによる感染性腸炎治療剤「ダフクリア錠200mg」(一般名:フィダキソマイシン、以下:ダフクリア)について製造販売承認を継承した。
24年3月期の主要製品の売上高はアサコールが209億18百万円、ディフィクリアが135億08百万円、エントコートが54億16百万円、アコファイドが30億67百万円、その他が66億61百万円だった。
海外展開については、アサコールは欧州を中心に高用量製剤の販売国数を拡大中である。競合する高用量製剤の処方獲得を目指してプロモーションを展開している。
アコファイドについては、Meiji Seika ファルマとタイにおける独占的開発・販売ライセンス契約、スペインのFAES社とラテンアメリカにおける独占的開発・販売ライセンス契約を締結している。
子会社のTillotts Pharma(ティロッツ社、スイス)は、アストラゼネカ社からエントコートの米国を除く全世界における権利を取得(国内ではゼンタコートカプセルとして販売)し、アサコールとともに海外での拡販を推進している。また20年11月に、アステラス製薬の英国子会社からクロストリジウム・ディフィシル感染症治療剤ディフィクリア錠(英名DIFICLIR)の欧州、中東、アフリカおよび独立国家共同体(CIS)における製造販売承認を承継し、販売を拡大している。
■コンシューマーヘルスケア事業はヘパリーゼ群などが主力
コンシューマーヘルスケア事業はヘパリーゼ群、コンドロイチン群、ウィズワン群を主力として、日本で初めて月経前症候群の効能を取得した西洋ハーブ・ダイレクトOTC医薬品プレフェミン、連結子会社イオナ インターナショナルの「イオナ」ブランド化粧品なども全国の薬局・薬店・ドラッグストアなどに販売している。
24年3月期の主要製品の売上高はヘパリーゼ群が109億68百万円、コンドロイチン群が57億52百万円、ウィズワン群が12億92百万円、その他が79億85百万円だった。
事業拡大に向けて、西洋ハーブ群の開発・育成、ヘパリーゼ群およびコンドロイチン群に続く新規主力製品の開発・育成、既存製品(OTC医薬品プレバリン群、オーラルケアのマスデント群やイオナ化粧品など)の育成を推進している。20年4月にはヘパリーゼ群の主原料である肝臓加水分解物の安定調達とコンシューマーヘルスケア事業拡大を目的として、日水製薬<4550>から日水製薬医薬品販売の全株式を譲り受けて子会社化(現社名:健創製薬)した。
西洋ハーブ関連では21年12月に、軽度の静脈還流障害による足のむくみを改善する内服薬「ベルフェミン」(要指導医薬品)を発売した。欧州において下肢の静脈疾患(慢性静脈不全症)の治療に伝統的に使用されてきたセイヨウトチノキ種子の乾燥エキスを主成分としている。
22年3月には過敏性腸症候群(IBS)改善薬「コルペルミン」(要指導医薬品)を発売した。ペパーミントのオイルを有効成分とする医薬品である。ティロッツ社が開発し、1981年の英国での発売以降、スイスやドイツをはじめ十数ヶ国でIBSの諸症状を改善する一般用医薬品として販売されている。国内で実施された過敏性腸症候群患者を対象とした臨床試験において有効性と安全性が確認された。
23年11月には、湿疹・皮膚炎に優れた効果を示すアンテドラッグステロイドを配合した「プレバリンαクイック」シリーズ(指定第2類医薬品)を、全国の薬局およびドラッグストアにて発売開始した。
24年3月には、デンマークの子会社ZPD A/Sが、デンマークの栄養補助食品の原料メーカーであるEHP ApSと共同で、栄養補助食品の企画・販売会社JoinHealth ApSを設立し、デンマークにおいてコンドロイチン硫酸を配合した栄養補助食品「Movagain Pro」を発売した。デンマークにおいて唯一のコンドロイチン硫酸を配合した栄養補助食品である。
■消化器分野を最重点領域として新薬開発を推進
消化器分野を最重点領域と位置付けて新薬開発を推進している。新薬パイプラインの状況(24年5月9日現在)は以下の通りである。
高カリウム血症を適応症とするZG-801(ビフォーファーマ社から導入、パチロマーソルビテクスカルシウム)については、日本において承認申請中である。米国では15年12月販売開始し、欧州では17年7月EMA(欧州医薬品庁)から承認取得している。
Z-338(自社品、一般名アコチアミド)は、日本では小児機能性ディスペプシアを適応症として第3相段階、低活動膀胱を適応症(開発コードZG-802)として第2相段階、食道胃接合部通過障害を適応症として第2相(九州大学で医師主導治験)段階、欧州では機能性ディスペプシアを適応症として第3相段階である。なお九州大学における医師主導治験は日本医療研究開発機構(AMED)の助成事業に採択されている。
Z-338の海外導出では、Faes Farmaが機能性ディスペプシアを適応症としてメキシコで23年10月に発売開始、ホンジュラス、ドミニカ共和国、エクアドル、チリ、エルサルバドル、ペルーで承認取得、コロンビア、コスタリカ、グアテマラ、パナマ、ニカラグアにおいて承認申請中である。また、Meiji Seikaファルマが機能性ディスペプシアを適応症としてタイで承認取得、Pharmaceutical Joint Stock Company of February 3rdが機能性ディスペプシアを適応症としてベトナムにおいて承認申請中、United Italian Trading社がシンガポールで承認申請中である。
なお23年7月には、子会社のTillotts Pharmaが世界的ベンチャーキャピタル大手TVMと共同で、潰瘍性大腸炎に対する経口抗体療法開発を目的として、米国のバイオベンチャーMage Bioに対して最大28百万USドル出資した。
■好調な欧州事業に加えてアジア地域での事業展開も推進
第11次中期経営計画(24年3月期~26年3月期)では経営目標値に、最終年度26年3月期連結売上高900億円、海外売上比率50%以上を掲げている。
重点戦略としては、欧州地域における継続的な市場形成(アサコール、ディフィクリア)に加えて、アジア地域への展開(ゼリア新薬工業の製品輸出拡大、ベトナムFTファーマの新工場建設や東南アジア近隣諸国への製品輸出拡大)を推進する。また国内の医療用医薬品事業では、自社創薬品であるアコファイドをはじめ、フェインジェクト、ダフクリアの拡販に加えて、第11次中期経営計画中に上市が見込まれる高カリウム血症治療剤ZG-801の投入などにより、国内医療用医薬品市場におけるプレゼンスを確保する。コンシューマーヘルスケア事業では、コンドロイチン群やヘパリーゼ群などの主力製品群に加えて、ローヤルゼリー群、西洋ハーブ群、化粧品群など多くの製品群において市場拡大を図る。
■上場維持基準適合に向けた計画書
なお23年3月31日時点で流通株式比率がプライム市場の上場維持基準に適合しない状況となったため、23年6月29日付で上場維持基準への適合に向けた計画を策定・公表した。
基本方針としてステークホルダーの期待に応えて持続的な企業価値の向上を図るとともに、流通株式比率を引き上げるために株主との対話による保有目的の確認や資本政策(自己株式消却など)など各種取組を総合的に検討し、25年3月末までに上場維持基準の適合を目指すとしている。
■24年3月期増収増益、25年3月期も増収増益予想で収益拡大基調
24年3月期の連結業績は売上高が23年3月期比10.7%増の757億25百万円、営業利益が6.7%増の96億21百万円、経常利益が12.3%増の85億13百万円、親会社株主帰属当期純利益が24.8%増の77億31百万円だった。配当は23年3月期比4円増配の44円(第2四半期末22円、期末22円)としている。連続増配で配当性向は25.1%となる。
増収増益だった。医療用医薬品事業、コンシューマーヘルスケア事業とも伸長し、費用増加を吸収した。なお営業外費用では為替差損が2億34百万円減少した。特別利益では投資有価証券売却益4億99百万円、契約解除損失引当金戻入額9億77百万円、特別損失ではのれん償却額4億76百万円を計上した。
医療用医薬品事業は売上高が14.9%増の495億71百万円で、営業利益(全社費用等調整前)が6.0%増の92億46百万円だった。潰瘍性大腸炎治療剤アサコールは国内が薬価改定の影響で苦戦したが、海外市場において高用量製剤アサコール1600mg錠を中心に伸長した。クロストリジウム・ディフィシル感染症治療剤ディフィクリアは欧州地域を中心に売上が大幅拡大した。国内においても23年4月にアステラス製薬から製造販売承認を承継(国内販売名ダフクリア)し、製品普及を推進している。炎症性腸疾患(IBD)治療剤エントコートは海外の一部の国における後発医薬品の上市の影響を受けたため減少した。アコファイドにつてはほぼ前年並みだった。フェインジェクトについては産婦人科・消化器科領域を中心に市場構築を推進している。
主要製品の売上高は、アサコールが7.2%増の209億18百万円、ディフィクリアが61.9%増の135億08百万円、エントコートが4.8%減の54億16百万円、アコファイドが1.3%減の30億67百万円、その他が2.6%増の66億61百万円だった。
コンシューマーヘルスケア事業は売上高が3.6%増の259億98百万円で、営業利益が5.8%増の52億60百万円だった。行動規制緩和や人流回復により医薬品ヘパリーゼ群・コンビニエンスストア向けヘパリーゼW群とも好調だった。またコンドロイチン群や植物性便秘薬「ウィズワン群」も伸長した。
主要製品の売上高はヘパリーゼ群が11.4%増の109億68百万円、コンドロイチン群が6.1%増の57億52百万円、ウィズワン群が2.0%増の12億92百万円、その他が6.6%減の79億85百万円だった。
その他(保険代理業・不動産賃貸収入)は、売上高が1.6%増の1億54百万円で、営業利益が3.7%増の2億51百万円だった。
全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高183億04百万円、営業利益29億70百万円、経常利益33億55百万円、第2四半期は売上高183億74百万円、営業利益23億57百万円、経常利益21億40百万円、第3四半期は売上高212億41百万円、営業利益41億63百万円、経常利益39億49百万円、第4四半期は売上高178億08百万円、営業利益1億31百万円、経常利益9億31百万円の損失だった。
25年3月期の連結業績予想は売上高が24年3月期比9.6%増の830億円、営業利益が3.9%増の100億円、経常利益が17.5%増の100億円、親会社株主帰属当期純利益が0.9%増の78億円としている。配当予想は24年3月期比2円増配の46円(第2四半期末23円、期末23円)としている。連続増配で予想配当性向は26.0%となる。
医療用医薬品事業はアサコールやディフィクリアの海外市場における売上伸長などで増収、コンシューマーヘルスケア事業はヘパリーゼ群やコンドロイチンの売上増加に加え、「ウィズワン群」や薬用歯みがき「マスデント群」なども寄与して増収を見込んでいる。利益面は、研究開発費やマイルストン支払などの増加が見込まれるが、増収効果で吸収して増益予想としている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株主優待は年2回、9月末と3月末の株主対象
株主優待制度は毎年9月末および3月末現在の株主を対象として、保有株式数に応じて自社グループ商品を贈呈(詳細は会社HP参照)している。なお23年9月末対象より株主優待品コース内容を変更した。
■株価は調整一巡
株価は安値圏に回帰したが調整一巡して出直りを期待したい。5月28日の終値は1961円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS176円95銭で算出)は約11倍、今期予想配当利回り(会社予想の46円で算出)は約2.3%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1806円33銭で算出)は約1.1倍、そして時価総額は約1042億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・Media-IR 株式投資情報編集部)