【どう見るこの相場】宇宙開発のロケット3連発は3発目が強力支援なら関連株相場打ち上げの前触れ

■2030年代に8兆円市場へ、政策支援も追い風に

 今週の当コラムは、不真面目とお叱りを受けるのを承知で謎掛けから始めることにすることとした。例のお馴染みの「空(ソラ)の上には何がある?」と聞く謎謎である。訳知りの読者なら即座に「シド」と答えて苦笑するところだろう。七音音階の「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド」では「ソ・ラ」の上にあるのが「シ・ド」だからである。しかしもっと訳知りの兜町関係者なら思い当たるフシがあるはずだ。そして「ソ・ラ」の上にあるのは「宇宙」と答える可能性が大きい。

 というのも、兜町の空の上に宇宙関連のロケットが、合計3発も打ち上げられ、打ち上げられる予定であるからだ。その1発目は、前週27日にkudan<4425>(東証グロース)が発表したNASA(米航空宇宙局)が開発している月面探査向けのソリューションである環境地図や月面探査車両などへ技術協力である。同社の株価は、一時ストップ高と急騰したがその後往って来い以上に下落し、前週末1日は急続伸して引けたが、まだ直近高値に届いていない。2発目は、住友林業<1911>(東証プライム)が、28日に発表した世界初の木造人工衛星の開発である。京都大学との共同開発で、今年9月に米国フロリダ州のケネディ宇宙センターから打ち上げられるスペースXのロケットに搭載され宇宙空間に放出される予定である。こちらの株価は、まったく反応がなく、全般急落相場に巻き込まれて下値追いとなり、前週末は小反発した程度である。

 しかし3発目は、株価的には様相が異なるかもしれない。3発目は、今週5日のアストロスケールホールディングス<186A>(東証グロース)の新規株式公開(IPO)である。同社株は、宇宙ゴミ(スペースデブリ)の除去や人工衛星の寿命を延長させる事業を展開する宇宙ベンチャーである。この宇宙ベンチャーのIPOは、同社株が初めてではない。昨2023年4月にispace<9348>(東証グロース)、同12月にはQPS研究所<5595>(東証グロース)が、それぞれIPOされ、ispaceが公開価格比3.9倍、QPS研究所が同2.2倍上回って初値を形成するなど高人気となった。

 今回のアストロスケールHDも、業績そのものは赤字継続となっているが、宇宙空間に3億個以上も超高速で飛翔し運用中の人工衛星などに衝突すれば多大な被害を及ぼす可能性の高い宇宙ゴミを対象としているだけに成長可能性を秘めており、公開価格850円に対する初値倍率も2倍~3倍が観測されている。3発目のロケットが、前2社の宇宙ベンチャー並みにIPO人気を高めるようなら、ダメ押しとなって兜町の空高く宇宙ビジネス関連株相場が展開される前触れとなることも想定される。

 しかも宇宙産業は、兼ねてから強力な政策支援が続いてきた。2021年6月に閣議決定された宇宙基本計画では、2020年に宇宙機器産業、宇宙ソリューション産業合計で4兆円だった市場規模を2030年代の早期に8兆円に拡大させることを目標にしており、2023年4月に閣議決定されJAXA(宇宙航空研究開発機構)が資金配分機関となった宇宙戦略基金では10年間に1兆円の政策支援を計画している。JAXAとNASAの間では、人類の月面再訪を目指す「アルテミス計画」などの各種プロジェアクトも進んでおり、宇宙機器産業、宇宙ソリューション産業が、新たな成長産業としてスタートアップすることになる。

 宇宙産業には、大手重工3社などの主力株から直近IPO株の宇宙ベンチャー株まで幅広く関連する。相場全般は、前週末31日に日経平均株価が、ほぼ高値引けで4日ぶりに反発し、米国のダウ工業株30種平均(NYダウ)も、昨年6月以来1年ぶりの上げ幅で4日ぶりに反発し、きょう週明けの一段のジャンプアップ・スタートの期待を強めそうだ。ただ依然として6月11日から6月14日までに相次いで開催予定の日米中央銀行の金融政策決定会合次第ではなお一波乱も二波乱もする懸念は拭えない。東京市場が、再び円安・株安・債券安のトリプル安懸念を強めるようなら、この圏外に位置するニッチ株として宇宙ビジネス関連株が兜町の上空高く打ち上げられる展開も有力でマークは怠れない。(情報提供:日本インタビュ新聞社・Media-IR 株式投資情報編集部)

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