■弁護士3割超が誹謗中傷相談件数の増加を実感
インターネット上の誹謗中傷投稿への迅速な対応を大規模プラットフォーム事業者などに求めるプロバイダ責任制限法の改正案が、5月10日に参院本会議で可決し、成立したことを受けて、弁護士ドットコム<6027>(東証グロース)が登録弁護士を対象に調査を行った。その結果、弁護士の36.2%が直近3年間でインターネット上の誹謗中傷相談件数の増加を実感していることがわかった。今後は「ますます増えていく」との指摘があり、弁護士側のさらなる対応の必要性が示唆されている。
■改正プロバイダ責任法は評価8割、「被害回復不十分」の声も
一方で、改正プロバイダ責任制限法については、「評価できる」が16.0%、「一定程度は評価できる」が61.3%と、約8割の弁護士が評価に値すると考えている一方、プラットフォーム事業者が表現の違法性を適切に判断できるかといった懸念も示された。弁護士から「削除依頼がしやすくなる」「迅速な判断が得られるようになる」など実務への好影響を期待する声が聞かれる一方で、相手が無資力だった場合の有効な対応手段の欠如なども指摘されている。
■被害の実質的救済が困難、手続き簡素化の必要性や投稿者のマナー向上を求める声
また、自由回答でインターネット上の誹謗中傷に関する残された課題について尋ねたところ、「被害者が費用をかけて開示しても、慰謝料額が低い」など被害の回復や賠償額が不十分であることへの指摘、「投稿者に対する啓蒙が不可欠」といったインターネット投稿におけるマナーの確立の必要性、そして「表現の自由との関係が問題になる」など、表現の自由との調整が難しいことが示された。
弁護士から、今回の法改正を「評価できる」との意見が多数を占める一方で、被害の実質的な救済が困難であること、手続きの簡素化、投稿者のマナー向上の必要性、そして表現の自由とのバランスをいかに図るかについて、課題が残されていることが明らかになった。被害者の救済と表現の自由を両立させるため、より丁寧かつ大胆な議論が求められている。(情報提供:日本インタビュ新聞社・Media-IR 株式投資情報編集部)