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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ジェイテックは下値切り上げ、16年3月期収益改善基調で改正労働者派遣法も追い風
- 2015/10/8 06:51
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ジェイテック<2479>(JQS)は技術職知財リース事業を主力として人材サービス事業を展開している。株価は調整が一巡して下値を切り上げる動きだ。16年3月期収益改善基調であり、さらに改正労働者派遣法も追い風となりそうだ。出直り展開だろう。
■技術者派遣の技術職知財リース事業を展開
製造業の開発・設計部門向けに技術者を派遣する技術職知財リース事業を主力として、子会社ジオトレーディングは製造業向け一般派遣・エンジニア派遣事業を展開している。12年10月にエル・ジェイ・エンジニアリング(旧トステム・エンジニアリング・オフィス)を子会社化して建築設計分野にも事業領域を広げた。
専門教育による知識を基盤として新たな付加価値を顧客に提供する社員を「テクノロジスト」と呼称し、一般的な「エンジニア」と区別していることが特徴だ。そして「技術商社」を標榜し、当社のテクノロジストが保有する知恵を提供(リース)することで、顧客とともに新たな価値を創造する「技術職知財リース事業」としている。
なお15年10月1日付で、旧ジオトレーディングがジェイテックアドバンストテクノロジに、旧エル・ジェイ・エンジニアリングがジェイテックアーキテクトに各々商号変更した。ジェイテックグループの社名によるアイデンティティの確立と、知財リース事業におけるコアコンピタンスの確立を目指す。
■機械、電気・電子、ソフトウェア、建築の4分野が柱
技術職知財リース事業では、機械設計開発、電気・電子設計開発、ソフトウェア開発、および建築設計分野を柱としている。
15年3月期の顧客業種別売上構成比は、建築関連29.8%、自動車関連22.1%、産業用機器関連16.2%、情報処理関連9.8%、電子・電気機器関連6.6%、精密機器関連6.0%、半導体・集積回路関連3.5%、情報通信機器関連3.3%、航空機・宇宙関連2.6%だった。特定の業界・企業への依存度を低くして業種別・顧客別売上構成比のバランスを維持していることも特徴だ。
■新規ビジネスなどで事業領域を拡大
15年3月に飲食店向け多言語対応注文支援システム「グルくる」を発表した。NFC(近距離無線通信技術)など先端IT技術を活用し、飲食店の運営効率化を支援するために提供するサービスだ。スマートフォンからNFCタグまたはQRコードを読み取るだけで注文できる。約十カ国後の多言語対応のため外国人旅行客もスムーズに注文できるとしている。
そして15年8月にはバージョンアップした多言語対応注文支援システム「グルくる」(Ver.2)のサービス開始を発表した。
またベンチャー総研グループのヒューマンリソース事業およびポスティング事業の一部を譲り受け、子会社ベンチャービジネスサポートを設立して15年7月に事業開始した。一般派遣事業の業務領域の拡大によって、新たな人材サービス事業を掘り起こす方針だ。
■新卒テクノロジストが戦力化する期後半の利益構成比が高い収益構造
なお15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)8億27百万円、第2四半期(7月~9月)8億18百万円、第3四半期(10月~12月)8億46百万円、第4四半期(1月~3月)8億57百万円、営業利益は第1四半期45百万円の赤字、第2四半期18百万円の黒字、第3四半期37百万円の黒字、第4四半期69百万円の黒字だった。
期後半の利益構成比が高い収益構造である。期前半は新卒テクノロジストの研修期間中の人件費や教育・研修費用が先行するため利益がやや低水準だが、期後半に向けて新卒テクノロジストの戦力化が寄与する。
15年3月期は契約単価の上方改定に伴って期前半は稼働率が低下したが、期後半には稼働率が回復した。契約単価改定も寄与して営業損益は改善基調のようだ。なお15年3月期の平均単価は3702円で14年3月期比392円(11.85%)上昇した。
また15年3月期の配当性向は14.6%だった。ROEは14年3月期比2.9ポイント低下して9.9%、自己資本比率は同3.2ポイント上昇して45.9%だった。
■16年3月期は収益改善基調
今期(16年3月期)の連結業績予想(5月8日公表)は、売上高が前期比8.2%増の36億21百万円、営業利益が同68.0%増の1億33百万円、経常利益が同69.8%増の1億32百万円、純利益が同89.7%増の1億10百万円としている。
配当予想は前期と同額の年間1円(期末一括)で、予想配当性向は7.8%となる。なお現時点では1株当たり1円の予定だが、株主優待も含めて今期の業績を勘案して決定するとしている。
第1四半期(4月~6月)は売上高が前年同期比2.7%減の8億05百万円、営業利益が2百万円の赤字(前年同期は45百万円の赤字)、経常利益が2百万円の赤字(同45百万円の赤字)、純利益が20百万円の赤字(同60百万円の赤字)だった。単価上昇および稼働率上昇で営業赤字が縮小した。
技術職知財リース事業は売上高が同1.7%減の7億83百万円、営業利益(全社費用等調整前)が同2.1倍の87百万円だった。高付加価値業務の機械設計開発分野などへの配属が進捗し、テクノロジストの単価上昇および稼働率上昇で営業損益が改善した。一般派遣およびエンジニアリング派遣事業は情報処理関連の顧客企業からの取引が減少し、売上高が同28.8%減の22百万円、営業利益が同32.3%減の2百万円だった。
通期ベースでも技術職知財リース事業の稼働率回復や契約単価改定効果で増収増益予想だ。前期から販売開始した飲食店向け多言語対応注文支援システム「グルくる」の代理店開拓も寄与する。なお事業を譲り受けたベンチャービジネスサポートの影響を織り込んでいない。また9月30日施行の改正労働者派遣法も追い風となりそうだ。
■中期経営計画で18年3月期純利益1億52百万円目指す
中期経営計画では基本戦略として、さらなる成長発展に向けた収益基盤の強化、財務基盤の一層の強化と安定した株主還元、経営理念に基づく新たな挑戦を掲げている。経営目標値は18年3月期の売上高42億23百万円、営業利益1億90百万円、経常利益1億90百万円、純利益1億52百万円としている。
主要取引先の大手製造業では新製品開発など高水準の研究開発投資を継続しているため、自動車関連、産業機器関連、電機・精密機器関連などを中心に、技術開発や製品設計に対応可能なスキルを持つ技術者に対して派遣需要が一段と高まっている。中期的に受注環境は良好だろう。
■株価は調整一巡して下値切り上げ
株価の動きを見ると、悪地合いも影響した8月の年初来安値177円から、9月8日194円、9月25日207円と下値を切り上げ、10月以降は概ね230円近辺で推移している。調整が一巡して下値を切り上げる動きだ。
10月7日の終値236円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS12円87銭で算出)は18~19倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間1円で算出)は0.4%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS75円66銭で算出)は3.1倍近辺である。なお時価総額は約20億円である。
日足チャートで見ると25日移動平均線を突破した。そして25日移動平均線が上向きに転じ始めた。また週足チャートで見ると8月の年初来安値から下値を切り上げて、13週移動平均線突破の動きを強めている。8月の年初来安値で底打ちして強基調に転換する動きだ。16年3月期収益改善基調であり、さらに改正労働者派遣法も追い風となりそうだ。出直り展開だろう。