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朝日ラバーは下値切り上げ、25年3月期大幅増益予想
- 2024/6/17 09:52
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
朝日ラバー<5162>(東証スタンダード)は自動車内装LED照明光源カラーキャップを主力として、医療・ライフサイエンスや通信分野の事業拡大も推進している。2030年を見据えた長期ビジョンではSDGs・ESG経営を意識して経営基盤強化を目指している。25年3月期は自動車関連製品の需要回復などにより大幅増益予想としている。売上高は過去最高の計画としている。積極的な事業展開で収益回復基調だろう。株価は小動きだが徐々に下値を切り上げている。高配当利回りや1倍割れの低PBRも評価材料であり、戻りを試す展開を期待したい。
■自動車内装LED照明の光源カラーキャップが主力
シリコーンゴムや分子接着技術をコア技術として、自動車内装照明関連、卓球ラケット用ラバー、RFIDタグ用ゴム製品などの工業用ゴム事業、およびディスポーザブル用ゴム製品などの医療・衛生用ゴム事業を展開している。車載用LED照明の光源カラーキャップASA COLOR LEDなどを主力としている。
24年3月期のセグメント別業績は、工業用ゴム事業の売上高が56億45百万円でセグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が3億04百万円、医療・衛生用ゴム事業の売上高が15億35百万円でセグメント利益が1億20百万円だった。地域別売上高は国内が53億02百万円、海外が18億78百万円(アジアが17億48百万円、北米が1億08百万円、欧州が21百万円)だった。
なお20年11月には白河工場が自動車産業の国際的な品質マネジメントシステム規格であるIATF16949の認証を取得した。22年7月には白河第2工場で医療機器に関する国際的な品質マネジメントシステム規格であるISO13485の認証を取得した。
■重点分野は光学、医療・ライフサイエンス、機能、通信
2030年を見据えた長期ビジョンを「AR-2030VISION」として、SDGs・ESG経営を意識して経営基盤強化を目指している。
中期事業分野を光学事業(ASA COLOR LED、ASA COLOR LRNS、白色シリコーンインキなど)、医療・ライフサイエンス事業(採血用・薬液混注用ゴム栓、プレフィルドシリンジ用ガスケット、ARチェックバルブ、マイクロ流体デバイスなど)、機能事業(自動車スイッチ向けゴム製品、同社独自のペルチェデバイス「F-TEM」、卓球ラケット用ラバー、風力発電関連など)、通信事業(RFIDタグ用ゴム製品、やわらか保護カバー、伸縮配線など)として、それぞれの製品群を成長させるコア技術や工場の役割を整理し、これまで整えてきた生産環境を最大限に生かす取り組みを推進する。
24年3月期の中期事業分野別の売上高は光学事業が24億85百万円、医療・ライフサイエンス事業が15億63百万円、機能事業が26億88百万円、通信事業が4億42百万円、主要製品の売上高はASA COLOR LEDが22億50百万円、医療用ゴム製品が15億17百万円、卓球ラケット用カバーが7億02百万円、RFIDタグ用ゴム製品が3億40百万円だった。
第14次三カ年中期経営計画(23年5月公表)では数値目標に26年3月期売上高85億円以上、営業利益率5%以上を掲げている。基本戦略として、売上構成の転換(ゴム単品からモジュール・完成品へ、OEMからODMへ)によって収益力の向上を図る方針だ。
光学事業(売上高23年3月期実績26億円、26年3月期計画30億円)では、テーマに「再構築と挑戦」を掲げた。標準製品の付加価値向上と複合モジュールの開発・展開などにより、光の可能性を追求した高付加価値製品による市場への貢献を目指す。
医療・ライフサイエンス事業(売上高23年3月期実績15億円、26年3月期計画20億円)では、テーマに「第2の柱へ成長させる」を掲げた。ODM設計・複合デバイスやシステム機器への挑戦により診断・治療機器の製造販売を目指す。23年12月には、医療・ライフサイエンス事業における今後の開発製品の受注見通しを踏まえて、第二福島工場を増築して生産能力を増強(26年4月稼働予定)すると発表した。また3月19日には医療・ライフサイエンス事業の強化に向け、医療機器・医療機器用製品の販売子会社として朝日フロントメディックを設立(24年内予定)すると発表した。
機能事業(売上高23年3月期実績25億円、26年3月期計画29億円)では、テーマに「新たな柱を創る」を掲げた。サーモモジュール応用製品の開発・ものづくり体制の確立(23年2月に相互製品販売特約店契約を締結したフェローテックマテリアルテクノロジーズとの販売連携活動強化)や、子会社で研究開発・実証実験を行ってきた風力発電のO&M(Operation and Maintennance)事業化に向けた製品開発を推進する。
通信事業(売上高23年3月期実績6億円、26年3月期計画6億円)では、テーマに「基礎基盤を固める」を掲げた。モノ・センサ・通信規格・情報処理アプリケーションを駆使して、新たな社会価値への取組に参画するなど、スマート社会の発展に貢献することを目指す。
成長基盤整備とWell-beingへの取組では、人材育成や社内環境整備など無形資産価値の向上、ものづくり自動化・合理化・省人化などスマートファクトリーの実践、従業員の声を聞き反映させていく環境・体制整備などWell-beingの向上、さらに地域社会貢献を推進する。
なお資本コストと株価を意識した経営の実現に向けた対応としては、第14次三カ年中期経営計画で掲げた各種施策を着実に推進し、EPS(1株当たり利益)などの指標を向上させ、企業価値向上に向けて収益性を高めていくとともに、株主還元の強化やIR活動の強化にも積極的に取り組む方針としている。
■新技術・新製品
23年3月にはフェローテックマテリアルテクノロジーズとの相互製品販売特約店契約締結(23年2月)を発表した。やわらかいサーモモジュール「F-TEM」を共同開発した両社の協業により、多様な分野の製品開発において新たな可能性を提案する方針としている。
23年5月には、人に寄り添ったインテリジェントHCL照明システムに関する共同研究成果が、日本設計工学会2022年度武藤栄次賞優秀設計賞を、埼玉大学大学院理工学研究科の綿貫啓一教授と同社が受賞した。
23年8月には、心臓の冠状動脈モデルの製品化を発表した。医療関係の学生向けの教育ツールとして、国際医療看護福祉大学校(学校法人国際総合学園、福島県郡山市)に採用された。
23年9月には、独自の表面改質処理によってシリコーンゴム同士を強固に接着させる分子接着接合技術を応用し、シリコーンゴムで覆ったオリジナルのRFIDタグ「やわらか保護カバーRFIDタグ」を2種類開発した。21年から展開している「やわらか保護カバー」のラインナップを拡充した。そして23年10月には、丸紅情報システムズが代理店販売を行うEnOceanデバイスに「やわらか保護カバー」が採用された。
24年2月には独自技術で開発した極薄「ナノシート電極」などをセットにした筋電計測スターターキットを発売した。
■SDGsへの取り組みを強化
21年8月に「サステナビリティビジョン2030」を策定し、SDGsへの取り組みを強化している。21年12月には、福島県の生産4拠点の購入電力をCO2フリー電力に転換した。年間約3000tの温室効果ガス排出削減を見込んでいる。また、みずほ銀行のホームページに、SDGs推進サポートローン実行事例として同社の取り組みが紹介された。23年3月には、未来を拓くパートナーシップ構築推進会議の趣旨に賛同して「パートナーシップ構築宣言」を宣言した。
23年12月には、白河工場(福島県白河市)の敷地内にV2Hシステム(Vehicle to Home:クルマから家へ)を導入した。電気自動車などに蓄えられた電気を有効活用するためのシステムで、エネルギーの有効活用を推進する。
■25年3月期大幅増益予想で収益回復基調
25年3月期の連結業績予想は、売上高が24年3月期比8.2%増の77億72百万円、営業利益が79.6%増の2億81百万円、経常利益が34.8%増の2億63百万円、そして親会社株主帰属当期純利益が36.7%増の1億83百万円としている。配当予想は24年3月期と同額の20円(期末一括)としている。予想配当性向は49.8%となる。
売上高は過去最高の見込みとしている。セグメント別売上高の計画は工業用ゴム事業が10.3%増の62億27百万円、医療・衛生用ゴム事業が0.6%増の15億44百万円としている。工業用ゴム事業では特に自動車向けゴム製品の受注回復を見込み、医療・衛生用ゴム事業は引き続き堅調に推移する見込みとしている。
中期事業分野別の売上高計画は光学事業が4.2%増の25億90百万円、医療・ライフサイエンス事業が11.0%増の17億35百万円、機能事業が10.3%増の29億66百万円、通信事業が8.1%増の4億78百万円、主要製品の売上高計画はASA COLOR LEDが4.0%増の23億41百万円、医療用ゴム製品が0.6%増の15億26百万円、卓球ラケット用カバーが4.8%増の7億36百万円、RFIDタグ用ゴム製品が10.0%増の3億74百万円としている。
光学事業では自動車内装照明用ASA COLOR LEDの受注回復、医療・ライフサイエンス事業ではプレフィルドシリンジ用ガスケット、採血用・薬液混注用ゴム栓、ARチェックバルブなど診断・解析向けゴム製品の好調推移、機能事業では自動車スイッチ用ゴム製品や卓球ラケット用ラバーの好調推移、通信事業ではRFIDタグ用ゴム製品の堅調推移を見込んでいる。利益面は増収効果に加えて、コスト低減なども寄与する見込みだ。積極的な事業展開で収益回復基調だろう。
■株価は下値切り上げ
株価は小動きだが徐々に下値を切り上げている。高配当利回りや1倍割れの低PBRも評価材料であり、戻りを試す展開を期待したい。6月14日の終値は559円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS40円13銭で算出)は約14倍、今期予想配当利回り(会社予想の20円で算出)は約3.6%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1105円64銭で算出)は約0.5倍、時価総額は約26億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)
(情報提供:日本インタビュ新聞社・Media-IR 株式投資情報編集部)