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クレスコは上値試す、25年3月期も増収増益予想で収益拡大基調
- 2024/6/17 09:54
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
クレスコ<4674>(東証プライム)は独立系のシステムインテグレータで、ビジネス系ソフトウェア開発や組込型ソフトウェア開発のITサービスを主力としている。成長戦略として顧客のDXを実現するデジタルソリューションも強化している。25年3月期も受注が堅調に推移し、生産性向上効果なども増収増益予想、そして連続増配予想としている。良好な受注環境も背景に積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。なお効力発生日24年7月1日で1株を2株に分割する。株価は急伸して17年の高値に接近する場面があった。その後は上げ一服の形となったが、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。
■ITサービスを主力としてデジタルソリューションも強化
独立系のシステムインテグレータで、ビジネス系ソフトウェア開発や組込型ソフトウェア開発のITサービスを主力としている。さらに成長戦略として顧客のDXを実現するデジタルソリューションも強化している。
セグメント区分は、ITサービス(エンタープライズ、金融、製造の各分野のコンサルティング・開発・保守の総合サービス)と、デジタルソリューション(自社製品Creage、インテリジェントフォルダなど、顧客のDXを実現する製品・サービスからなるソリューション群)としている。
24年3月期のセグメント別業績はITサービス事業の売上高が489億08百万円で営業利益(全社費用等調整前)が66億01百万円(内訳はエンタープライズの売上高が203億11百万円で営業利益が20億73百万円、金融の売上高が147億40百万円で営業利益が20億73百万円、製造の売上高が138億55百万円で営業利益が24億54百万円)、デジタルソリューション事業の売上高が38億47百万円で営業利益が2億25百万円、営業利益の調整額が▲17億05百万円だった。収益面では案件別の採算性が影響し、企業のIT投資関連のため年度末にあたる第4四半期の構成比が高くなる特性がある。
■M&A・子会社再編
M&A・アライアンスおよびグループ子会社再編では、20年2月に北海道大学公認AIベンチャーの調和技研と資本業務提携、20年4月にシステムインテグレータのエニシアスを子会社化、21年7月に組込型ソフトウェア開発に強みを持つOECを子会社化、22年5月に子会社クリエイティブジャパンの商号をクレスコ・デジタルテクノロジーズに変更、22年7月に子会社のアルスが同じく子会社のエヌシステムおよびネクサスを吸収合併して商号をクレスコ・ジェイキューブに変更、23年2月に日本ソフトウェアデザイン(JSD)の全株式を取得して子会社化した。
23年3月には、フォーラムエンジニアリング<7088>およびインドのSRM Globalとの3社共同で、フォーラムエンジニアリングのインド現地法人コフナビインディア社(22年10月設立)が行う第三者割当増資を引き受けて資本出資した。23年9月には、飲食業界のDX推進支援の拡大に向けて、ベトナムのレストラン&リテールテックスタートアップ企業CAPICHI社へ出資し、業務提携した。23年12月には、セキュリティ脆弱性診断サービスやSOC(セキュリティオペレーションセンター)構築・運用など情報セキュリティサービスを展開するセキュアイノベーションと資本業務提携した。24年4月にはシステムコンサルティングやインフラ設計構築・運用などを展開するジェット・テクノロジーズを子会社化した。24年6月には連結子会社クレスコ ワイヤレスの全株式を譲渡した。
また24年7月1日(予定)付で同社、連結子会社JSD、および連結子会社メクゼスの3社の組織再編を実施する。メクゼスを存続会社、JSDを消滅会社とする吸収合併(合併後の商号はメクゼス)を行うとともに、同社がJSDの一部事業(JSDが名古屋営業所において営む事業の全て)を譲り受ける。3社のノウハウおよびリソースを地域別に整理・統合して人財・経営資源を有効活用する。
■働き方改革や健康経営を推進
24年4月に発表した新中期経営計画2026(24年度~26年度)では、成長に向けた方向性として「IT・技術を通じて顧客の競争優位性を創出し、ともに社会を前進させるデジタル価値創造企業を目指す」を掲げた。目標値としては30年までに売上高1000億円企業を目指し、27年3月期売上高700億円、営業利益80億円、営業利益率11.5%、ROE15%を掲げた。配当性向は25年3月期より40%に引き上げる。またサステナビリティ経営関連の目標としては女性管理職比率13%、エンゲージメントスコア70などを掲げた。
重点戦略としては、共創型モデル確立、品質リーダーシップ発揮、人的資本経営推進、技術・デジタルソリューション拡張、事業連携促進、デジタル変革実現、グループ一体経営を掲げた。
事業別戦略としては、ITサービス事業のエンタープライズ分野ではワンストップサービスの提供拡大・効率化、主力業界の深耕、エンタープライズ領域のさらなる拡大、新しい価値のサービスの顧客との共創、金融分野ではバックエンド領域の拡大、データ連携・処理技術(ミドルウェア)の強化、共創をテーマとした業務推進、さらなるデータ利活用、業務知識の強化・法規制対応、製造分野ではインフォテインメント系の統合・充実、サイバーセキュリティ対応・セーフティな製品設計、モビリティ領域への集中、モビリティサービスの実装、顧客企業のITケイパビリティ強化、デジタルソリューション事業ではクラウド・オートメーション領域の継続的なアップデートへの取り組み、プリセールス・カスタマーサクセスの強化、経営課題の解決に寄与するソリューションの拡充、クレスコブランドのデジタルソリューション開発・実装、ブランド力向上による業界内の地位確立を推進する。
なお健康経営・社会貢献関連では、23年3月にスポーツ庁が認定する「スポーツエールカンパニー2023」に認定された。24年2月には2年連続でスポーツ庁「スポーツエールカンパニー」に認定された。24年3月には経済産業省と日本健康会議が選定する健康経営優良法人認定制度に基づく健康経営優良法人2024(ホワイト500)に認定された。
■デジタルソリューションや自社オリジナル製品を拡大
オリジナル製品・サービスではIoTのKEYAKI、AIのMinervae、クラウドのCreageを3大ブランドと定義し、ソフトウェア開発・システム開発の需要喚起を推進している。23年3月にはビジネスパートナー契約を締結しているUiPath社のダイヤモンドパートナーに認定された。23年10月には新たに開発したホテルの部屋割り業務最適化ツール「RooMagic」をリリースした。九州・東京・京都に展開するJR九州ホテルズでの導入が決定している。23年11月には歯のパノラマレントゲン画像から個々の歯を識別する情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラムの特許を取得した。
24年1月には子会社のクレスコ・デジタルテクノロジーズが経済産業省から「DX認定事業者」に認定された。24年2月には情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際標準規格ISO/IEC27001:2022の認証を全社で取得した。24年3月には子会社のエニシアスが、Google Cloud Partner Advantageプログラムでデータ分析スペシャライゼーションを取得、Google CloudのAIパートナーエコシステムのパートナー企業の1社に登録された。
■25年3月期も増収増益予想で収益拡大基調
25年3月期の連結業績予想は、売上高が24年3月期比10.9%増の585億円、営業利益が15.2%増の59億円、経常利益が6.0%増の60億円、親会社株主帰属当期純利益が7.3%増の40億円としている。配当予想は38円(第2四半期末19円、期末19円)としている。24年7月1日付株式2分割を遡及修正すると24年3月期(年間26円)比12円増配の形となる。連続増配で予想配当性向は39.1%となる。
25年3月期も受注が堅調に推移し、生産性向上効果なども増収増益予想、そして連続増配予想としている。前期の不採算案件発生の影響が一巡することも寄与する見込みだ。良好な受注環境も背景に積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株価は上値試す
株価(注:以下の株価指標は1株当たり数値を24年7月1日付株式2分割前に換算した数値で算出)は、急伸して17年の高値に接近する場面があった。その後は上げ一服の形となったが、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。6月14日の終値は2339円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS194円18銭で算出)は約12倍、今期予想配当利回り(会社予想の76円で算出)は約3.2%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1343円78銭で算出)は約1.7倍、そして時価総額は約515億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)