- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- ケンコーマヨネーズは反発の動き、25年3月期営業・経常増益予想で収益拡大基調
ケンコーマヨネーズは反発の動き、25年3月期営業・経常増益予想で収益拡大基調
- 2024/6/17 09:58
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ケンコーマヨネーズ<2915>(東証プライム)は、サラダ・総菜類、タマゴ加工品、マヨネーズ・ドレッシング類などを展開し、新たに策定した経営計画ではビジョンに「サラダ料理で世界一になる」を、経営目標値に36年3月期ROE(自己資本利益率)8%以上、DOE(株主資本配当率)2.5%以上などを掲げている。なお7月1日より24年秋冬向け新商品(9品)を発売する。25年3月期は新たな経営計画に基づく各種施策を推進し、収益性や生産性の向上により営業・経常増益予想としている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は5月の年初来高値圏から急反落の形となったが、調整一巡して反発の動きを強めている。戻りを試す展開を期待したい。
■サラダ・総菜類、タマゴ加工品、マヨネーズ・ドレッシング類などを展開
サラダ・総菜類、タマゴ加工品、マヨネーズ・ドレッシング類の調味料・加工食品事業、フレッシュ総菜(日配サラダ、総菜)およびグループ内生産受託の総菜関連事業等、その他事業(サラダカフェなど)を展開している。ロングライフサラダは国内市場シェア1位である。ショップ事業のサラダ専門店Salad Cafe(サラダカフェ)は、対面の量り売りサラダや弁当の販売を展開し、新たなブランド創出に向けて百貨店など駅近店舗戦略を推進している。
なお同社は8月24日を「ドレッシングの日」と制定している。ドレッシングは野菜にかけて使用することが多いため、831(やさい)にかける→8×3×1=24で24日を、またカレンダーで見ると野菜の日(8月31日)の真上にあるのが8月24日であることから、野菜にドレッシングをかける様子をイメージして8月24日を「ドレッシングの日」と制定している。
24年3月期のセグメント別売上高は調味料・加工食品事業が691億01百万円(マヨネーズ・ドレッシング類が269億96百万円、タマゴ加工品が187億48百万円、サラダ・総菜類が219億03百万円、その他が14億53百万円)で、総菜関連事業等が187億14百万円、その他事業が9億08百万円だった。セグメント別利益(経常利益)は調味料・加工食品事業が25億71百万円、総菜関連事業等が9億36百万円、その他事業が41百万円、調整額が▲4億50百万円だった。また販路別の売上高構成比は外食が29%、量販店が28%、CVSが22%、パンが12%、その他が5%、給食が4%だった。CVSの構成比がやや低下傾向となっている。
■ビジョンは「サラダ料理で世界一になる」
同社は24年5月に25年3月期~36年3月期を対象期間とする中長期経営計画「KENKO Vision 2035」を策定し、Phase1の25年3月期~28年3月期を事業構造改革の期間、Phase2の29年3月期~32年3月期を再成長の期間、Phase3の33年3月期~36年3月期を進化・発展の期間と位置付けた。
経営目標値には、Phase1の最終年度である28年3月期の売上高1020億円以上、営業利益33億円以上、DOE1.5%以上、Phase3の最終年度である36年3月期の売上高1250億円以上、営業利益75億円以上、営業利益率6%以上、ROE8%以上、海外売上高比率10%以上、DOE2.5%以上を掲げた。
Phase1~Phase3合計(25年3月期~36年3月期)の資本配分(投資額)の計画としては、成長戦略に239億円(M&A含む海外進出62億円、新規事業投資25億円、システム投資31億円、事業拠点強化120億円)、スマート化に182億円(事業拠点再編70億円、DX推進等112億円)、人材投資に122億円(教育・人材育成施策62億円、エンゲージメント向上施策60億円)、サステナビリティと社会的責任に205億円(株主還元104億円、自己株式取得45億円、ESG投資54億円)、合計749億円としている。
事業環境の変化に対応した抜本的改革と企業価値の更なる向上を目指し、基本戦略としては、成長戦略(既存事業の収益基盤強化、ブランド構築の実行、事業ポートフォリオの再構築、事業環境変化への対応など)、スマート化(DXを通じた企業改革と生産性向上、成長・合理化・効率化に向けた事業拠点再編など)、人材投資(グローバル企業化、働き方改革としてのダイバーシティ推進、人材育成の強化、キャリアプランが形成できる施策の検討など)、サステナビリティと社会的責任を推進する。
成長戦略ではマーケットインの発想による商品開発、基盤商品のブランディングとNB商品比率の上昇、海外比率の上昇、SNSを活用したEC事業の拡大、持続可能な原料調達、新規事業へのチャレンジなどを推進する。スマート化ではRPAやAIを活用したDXの推進、グループシステムの最適化、生産分野における新技術構築や合理化・集約化・環境効率化などを推進する。人材投資では人材育成の充実化、育成システムの構築、働き方改革の実行、ダイバーシティへの対応などを推進する。サステナビリティと社会的責任ではサステナビリティ方針に沿ったロードマップと投資の実行、人を大切にする健康経営、地域社会への貢献と共創、リスクマネジメントの徹底、コーポレート・ガバナンスの強化を推進する。
また、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応については、事業基盤の強化と事業ポートフォリオの再構築による成長戦略を推進し、資本戦略も強化しながら企業価値の向上を図るとしている。資本・財務戦略では株主還元強化(安定的な配当)、政策保有株式の縮減、自己株式取得、株主・投資家との対話強化などを推進する。
■サステナビリティを意識した新製品
23年7月には、フードサービス業界向けロングライフサラダの新シリーズ「FDF(ファッションデリカフーズ) Plus」の発売を開始した。ロングライフサラダで同社最長となる90日の長期賞味期限で、美味しく食品ロス削減に寄与する。
23年9月には、新たなプラントベースフードとして、植物性原料を使用した「タマゴ風加工品」を発表した。プラントベース商品「HAPPY!! with VEGE」シリーズとして、植物性たまごの研究開発・販売を行うUMAMI UNITED JAPANと協業し、主力の「タマゴ加工品」の新たなカテゴリーとなる「植物性タマゴ加工品」として商品を開発・展開する。23年10月にはフードサービス業界向けプラントベース商品「HAPPY!! with VEGE」シリーズとして、たまご不使用のプラントベースのたまご風サラダ「まるでたまごのサラダ」を発売開始した。
■25年3月期営業・経常増益予想
25年3月期の連結業績予想は売上高が24年3月期比1.4%増の900億円、営業利益が8.5%増の32億円、経常利益が6.5%増の33億円としている。親会社株主帰属当期純利益については、前期計上の投資有価証券売却益(5億69百万円)を見込まず、17.4%減の22億60百万円としている。配当予想は24年3月期比4円増配の34円(第2四半期末17円、期末17円)としている。連続増配で予想配当性向は24.2%となる。
セグメント別売上高の計画は、調味料・加工食品事業が24年3月期比1.8%増の703億42百万円(マヨネーズ・ドレッシング類が2.2%減の263億96百万円、タマゴ加工品が6.6%増の199億94百万円、サラダ・総菜類が2.8%増の225億17百万円、その他が1.3%減の14億35百万円)で、総菜関連事業等が0.3%増の187億74百万円、その他事業が2.9%減の8億81百万円としている。調味料・加工食品事業では外食需要拡大やタマゴ加工品回復を見込み、総菜関連事業等では販売カテゴリー・チャネルの拡大、その他ではサラダカフェブランドの強化を推進する。
営業利益の前期比+2億50百万円の増減分析(見込み)は、原材料影響(前期の高病原性鳥インフルエンザ影響による鶏卵調達難一巡等)で+9億65百万円、価格改定効果で+6億04百万円、生産効率向上効果で+4億78百万円、販売数量および販売諸経費影響で▲66百万円、固定経費等で▲17億32百万円としている。
25年3月期は新たな経営計画に基づく各種施策を推進し、収益性や生産性の向上により営業・経常増益予想としている。前期の原材料調達難影響が一巡し、価格改定効果なども寄与する見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株主優待制度は毎年3月末の株主対象
株主優待制度(詳細は会社HP参照)は毎年3月末日現在の株主を対象として、保有株式数に応じて当社商品を贈呈している。
■株価は反発の動き
株価は5月の年初来高値圏から急反落の形となったが、調整一巡して反発の動きを強めている。1倍割れの低PBRも評価材料であり、戻りを試す展開を期待したい。6月14日の終値は1952円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS140円37銭で算出)は約14倍、今期予想配当利回り(会社予想の34円で算出)は約1.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2439円95銭で算出)は約0.8倍、そして時価総額は約322億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)