【どう見るこの相場】株主優待制度新設:東証グロース新興企業が牽引、節税・販促効果も

■サプライズ優待がもたらす、株主還元策の新たな潮流

 「恐れ入りました」と脱帽する以外にない。株価インパクトの強烈さにである。ストップ高銘柄が3連発したからだ。先鋒は、今年6月8日のクラダシ<5884>(東証グロース)で、次鋒が19日のストレ-ジ王<2997>(東証グロース)、続いて殿とするか三将とするかまだストップ高銘柄が続く可能性もあり迷うが、3番目は6月20日のメディア工房<3815>(東証グロース)である。ストップ高のカタリスト(株価材料)は、共通して株主優待制度の新設であった。あの株主優待制度がである。サプライズもサブライズ、ストレージ王とメディア工房は3日連続のストプ高であった。

 何がサプライズかといえば、株主優待制度は、もともと株主還元策のオマケのような位置付けであった。株主還元策のメーンは、増配であり自己株式取得や株式分割などの資本政策であり、自己株式取得や株式分割が、カタリストとしてブームとなったのもつい最近のことである。対して株主優待制度は、取締役会だけで実施や中止が決議されるだけに、実施、中止が不安定で、なかには系列のゴルフ場のプレー料金の割引券などの使い勝手の悪い優待制度も多い。だから海外投資家などからは株主還元策として不公正としてブーイングが寄せられ、上場会社のなかには、優待制度を廃止して配当による還元策に一本化するケースも目立っている。

■無配転落企業も高利回り優待で投資家を魅了

 しかも上場会社の約4割に達するとされる優待制度の実施会社は、成長性に問題のある成熟企業が中心で、業績も安定成長、配当も安定継続、株価も、一部を除いて低位安定にとどまるとするのが定説となっていた。今回のストップ高3銘柄のように、東証グロ-ス市場の新興企業で無配会社が優待制度の新設に踏み切るとは、想定外に違いなかったのである。しかし無配継続のクラダシの優待制度(ギフトカード2000円分)利回りが6%弱、ストレージ王の上場3年目の記念優待策と期末の優待策の合計(QUOカード5000円分)利回りが7.6%に高まり、メディア工房が、今8月期業績の下方修正・赤字転換・無配転落と同時発表の優待制度(QUOカードPay4000円分)の優待利回りが10%を超えるなら話は別となったわけだ。

 これは、相場全般が関東甲信地方の梅雨入りを先取りするように、主力銘柄の方向感が不透明化し商いも細り梅雨空模様となったことも関係している可能性もある。だとすれば、今回の先行3銘柄の株価突出は、上場会社の株主還元策の方向性に影響を与えるかもしれないではないかとも想定される。自己株式取得・株式分割ラッシュに続く、株主優待制度ブームである。そこには、贈呈商品・サービスの調達が費用計上され節税対策にもなり、さらに自社商品やサービスの販促にもつながり、手っ取り早い株価対策にもなるという上場会社のしたたかな計算も働きそうだ。

 そこで今週の当コラムでは、この株主優待制度関連株に注目することとした。クラダシ以降に優待制度を発表した関連株、もともと優待制度の利回りが高い銘柄、優待制度の常連株などをスクリ-ニングをすると、業種、値ごろ、上場市場を問わずバラエティの富む有望銘柄として浮上することになった。このまま全般相場が、梅雨空模様を強めるようならかえって「晴れ間銘柄」として存在感を主張し、ところどころ空梅雨示唆の「青雲」となる展開も期待したい。(情報提供:日本インタビュ新聞社・Media-IR 株式投資情報編集部)

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