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JPホールディングスは上値試す、25年3月期は上振れの可能性
- 2024/6/27 10:14
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
JPホールディングス<2749>(東証プライム)は子育て支援のリーディングカンパニーである。長期ビジョンに「選ばれ続ける園・施設づくり」を掲げ、認可保育園・学童クラブ運営を中心に子育て支援の質的向上と事業を通じた社会貢献を推進するとともに、新規領域への展開も推進している。なお、東京都で学童保育を運営する事業者が集まり、学童保育の質の向上を目指す東京都学童保育協会を設立し、6月28日に設立総会を開催する。25年3月期は受入児童数の順調な増加や施設の効率的運営などにより小幅増収増益予想としている。確実性のある計画としており、上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は水準を切り上げて3月の年初来高値に接近している。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。
■総合子育て支援のリーディングカンパニー
子育て支援のリーディングカンパニーである。長期ビジョンに「選ばれ続ける園・施設づくり」を掲げ、認可保育園・学童クラブ運営を中心に子育て支援の質的向上と事業を通じた社会貢献を推進するとともに、新規領域への展開も推進している。事業区分は認可保育園や学童クラブなどを運営する子育て支援事業、保育所向け給食請負事業、英語・体操・音楽教室請負事業、保育関連用品の物品販売事業、研究・研修・コンサルティング事業としている。
23年10月にダスキン<4665>と業務提携契約を締結した。そして、21年1月に資本業務提携して第1位株主となっていた学研ホールディングス<9470>が保有する全株式をダスキンへ譲渡(23年11月)し、ダスキンが第1位株主となった。学研ホールディングスとの業務提携は継続する。
■保育園は期末に向けて児童数増加・稼働率上昇
グループは持株会社の同社、全国で保育園・学童クラブ・児童館などの子育て支援施設を運営する日本保育サービス、保育園向け給食請負などを行うジェイキッチン、子育て支援施設向け英語・体操・音楽教室の請負、保育関連用品の企画・販売、保育や発達支援に関する研修・研究、保育所等訪問支援、子育て支援プラットフォーム「コドメル」運営などを行う日本保育総合研研究所、コンサルティングを行う子育てサポートリアルティ、外国人の就労支援を行うワンズウィル(24年1月子会社化)で構成されている。
24年4月1日時点の運営施設数は首都圏を中心に、保育園が205園、こども園が4園、学童クラブが96施設、児童館が13施設、交流館が2施設、子育て支援施設合計が320施設となっている。なお23年4月に同社グループ初となる英語に特化した新業態としてバイリンガル保育園を首都圏で3施設開設するなど、既存保育園のバイリンガル保育園への業態変更も推進している。
収益は既存施設の稼働率、新規施設の開園、保育士待遇改善に伴う人件費の増加、補助金の増減などが影響する。また新規施設の開園は概ね4月のため、期前半は各施設への保育士配置に係る費用が先行するが、児童数が増加して稼働率が上昇する期後半に向けて収益が拡大する特性がある。自治体から受け取っている保育士の借り上げ社宅に対する補助金等については、従来は補助金収入として営業外収益に計上していたが、22年3月期から売上高に計上する方法に変更した。
■長期経営ビジョンは「選ばれ続ける園・施設」
子育て支援事業を取り巻く事業環境としては23年4月1日付で「こども家庭庁」が創設された。保育所と認定こども園の所管が同庁に移管され、少子化、こどもの貧困、虐待防止対策など幅広い分野において同庁が一元的に企画・立案・総合調整を行う。さらに政府による「異次元少子化対策」が掲げられ、さまざまな子育て支援政策が打ち出されている。また保育園の待機児童問題は概ね解消したが、学童クラブの待機児童数増加対策が新たな政策テーマに浮上している。
そして、新たな少子化対策および幼児教育・保育の質的向上対策として、親の就労を問わず生後6ヶ月から2歳を対象に誰でも保育を利用できる「こども誰でも通園制度(仮称)」の開始、保育士配置基準における対人数の変更、出産を機に退職した親が再就職する際にこどもを保育所に預けやすくする保育所「入所予約枠」制度の開始、これまで特別区で運用していた地域限定保育士の全国運用の開始、保育士不足緩和に向けた保育補助者支援金の有資格者への拡大など、24年度より保育政策が大きく転換する。
こうした事業環境を背景として、長期経営ビジョンでは「選ばれ続ける園・施設」を目指し、連結売上高1000億円(既存事業500億円、新規事業・M&A500億円)に向けて既存事業改善・拡大、新規事業、資本・業務提携を推進している。
さらに中期経営計画(ローリング方式により年次で見直し実施)では、目標数値として27年3月期売上高401億65百万円、営業利益50億73百万円、営業利益率13%、ROE20%超などを掲げている。株主還元方針は配当性向30%を目指すとした。基本方針として引き続き成長・競争優位性の確立、収益構造改革、経営基盤改革を推進する。
成長・競争優位性の確立では、新規事業として国内外専門人材派遣・紹介事業の規模並びに収益拡大、グローバル対応に向けた東南アジアを中心とする現地企業と連携した早期施設展開、既存事業拡大を見据えた新たな学習プログラムおよび地域連携による「選ばれ続ける園・施設づくり」の推進、ドミナント戦略に基づく学童クラブ・児童館受託運営の現在の2倍への早期拡大、保護者の困りごと並びに社会問題解決に向けた新たな事業展開、積極的なM&A推進を推進する。また収益構造改革では経営の効率化・コスト削減、収益基盤の強化、経営基盤改革では人財育成・風土刷新、経営管理の高度化、SDGsおよび環境改善に向けた取り組み強化を推進する。
23年1月には埼玉県草加市の草加市立松原児童青少年交流センターmiraton(ミラトン)の受託運営を開始した。30歳までのこどもと若者を中心に誰でも使える施設で、児童館の機能に加えて青少年の活動の場、多世代交流の場、さらに文化交流の振興や音楽活動の場として複合機能を有する施設である。こうした複合施設の全施設の受託運営はグループ初となる。
なお、東京都で学童保育を運営する事業者が集まり、学童保育の質の向上を目指す東京都学童保育協会を設立し、6月28日に設立総会を開催する。
■子育て支援とSDGsの両立に向けた「コドメル」サービス
子育て支援と資源の有効活用・環境保全(SDGs)の両立を目的として、会員制の子育て支援プラットフォーム「コドメル(codomel)」サービスを強化している。全国で運営する300超の子育て支援施設(保育所、学童クラブ、児童館)の園児・児童と、その保護者を会員化して、乳児期・幼児期・学童期において子育てに関する様々な商品やサービスを幅広く提供する。
第1弾サービスとして22年4月より、子育て関連用品を中心とするリユース品に関する「子育て商品マッチングサービス」を開始した。24年6月には業務提携先であるダスキン本社、およびダスキン東京オフィスに子育て関連商品の「コドメル寄付受付BOX」を設置した。
今後は、第2フェーズとして子育て世代に商品や様々なサービスを提供するBtoC事業、第3フェーズとして東南アジアへのサービス展開を推進する。そして6年目に取扱高18億円を目指し、新たな事業柱を構築する方針だ。
さらに新規領域への展開も推進している。保護者の困りごとの解決に向けた事業展開では、自宅で簡単に調理できる「夕食準備」として、東京都・神奈川県・埼玉県で運営する保育園10園において23年8月より食品のテスト販売を開始した。テスト販売の状況を確認し、販売する保育園の拡大や商品ラインナップの拡充を図り、同業他社への外販や子育て支援プラットフォーム「コドメル」を活用したWebでの販売も検討する方針としている。
■25年3月期小幅増収増益予想、さらに上振れの可能性
25年3月期の連結業績予想は売上高が24年3月期比1.8%増の385億28百万円、営業利益が3.6%増の47億51百万円、経常利益が5.6%増の47億78百万円、そして親会社株主帰属当期純利益が6.0%増の31億06百万円としている。配当予想は24年3月期比1円50銭増配の9円50銭(期末一括)としている。連続増配で予想配当性向は26.1%となる。
受入児童数の順調な増加、24年1月に子会社化したワンズウィルの連結、施設の効率的な運営などにより小幅増収増益予想としている。なお24年4月1日付で合計20施設を新規開設した。また24年4月には渋谷区放課後クラブのクラブ事業コーディネート業務を受託した。会社側は確実性のある計画としており、上振れの可能性がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株価は上値試す
株価は水準を切り上げて3月の年初来高値に接近している。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。6月26日の終値は532円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS36円39銭で算出)は約15倍、今期予想配当利回り(会社予想の9円50銭で算出)は約1.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS188円71銭で算出)は約2.8倍、そして時価総額は約467億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)