【どう見るこの相場】歴史的な円安・ドル高はセオリー通りに金利敏感株などになお緊急避難の対応余地

■メガバンク株:政策金利引き上げで利ザヤ拡大

 決め打ちしていいのか大いに悩ましい。メガバンク株への追随買いである。メガバンク3行の株価は、前週末28日にほぼ高値引けで揃って年初来高値を更新した。三菱UFJフィナンシャルグループ<8306>(東証プライム)に至っては、金融庁から業績処分を受けた日を踏み台にかえって弾みをつけて12%超も急伸し、2006年5月以来、約18年ぶりの高値に躍り出た。ただ3行とも、1週間にもわたっての棒上げである。週明けは、月が替わり7月相場である。上昇一服となって利益確定売りを誘発してもおかしくないのも気迷うことになる。

 しかし、この株価急伸は、緊急事態の裏返しである。日本は、歴史的な円安に直撃されている。28日の東京市場で為替相場が、1ドル=161.20円と1886年12月以来、37年半ぶりの円安・ドル高となった。いわば日本売りの大事件である。当然、円安防衛の政府・日銀による為替介入が予想される。しかし、今年4月29日にに為替レートが1ドル=160.24円円台と円安・ドル高となった時の過去最大の9兆7885億円にまで達した為替介入の効果は、わずか2カ月で消失してしまっている。為替介入の「伝家の宝刀」を抜いてみたら、刀身は竹光であることもなきにしも非ずである。となれば、残るは円安が輸入物価上昇を通じて物価上昇に拍車を掛けることを阻止するためにも「物価の番人」といわれる日本銀行の出番となる。日銀が7月30日、31日に開催する金融政策決定会合で、長期国債の買い入れ額の減額と同時に政策金利の引き上げを決定し、長期金利を上昇させ日米金利差を縮小させる以外にない。現に国内の新発10年物国債利回りも、前週末にこれを先取るように1.085%と1カ月ぶりの水準に上昇した。

 要するにメガバンク買いは、緊急避難対応である。歴史的な円安・ドル高に打つ手が限られるとすれば、長期金利上昇で利ザヤが拡大する金利敏感株でリスク回避する以外にない。しかも、この先、米国でも日本と同時に月末の30日、31日にFRB(米連邦準備制度理事会)のFOMC(公開市場委員会)が開催される。FOMCの決定が、「ハト派」か「タカ派」かのいずれで評価されることにより、日米金利差は拡大も縮小もする。また27日に開催された米国大統領選挙のテレビ討論会で、バイデン候補に撤退論も出るなどトランプ候補が優勢となったことから財政拡大が懸念され、米国の長期金利がやや上昇したとのマーケットコメントも伝えられた。

 日米のマーケットは、ここまで双方の中央銀行の金融政策が「ハト派」か「タカ派」かと評価されることによって異なる株価反応をしてきた。「ハト派」なら半導体関連株などのグロース株(成長株)、「タカ派」なら金利敏感株や景気敏感株などのバリュー(割安株)とするセクター・ローテーションをセオリーとして、それが時には日替わりメニューとなるほど激変することもあった。7月相場は、これから方向性が定まってくるが、今週の当コラムでは、歴史的な円安・ドル高を前にまず緊急避難対応としてバリュー株を取り上げることとした。メガバンクを中心に景気敏感株まで網を広げマークしたい。(情報提供:日本インタビュ新聞社・Media-IR 株式投資情報編集部)

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