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【アナリスト水田雅展の銘柄診断】寿スピリッツは8月高値に接近、第2四半期累計の概算売上高は11.3%増収
- 2015/10/14 07:11
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
寿スピリッツ<2222>(東1)は「お菓子の総合プロデューサー」を掲げて地域限定ブランド菓子の製造・販売を展開し、首都圏でのブランド展開も強化している。13日発表した第2四半期累計(4月~9月)概算売上高は前年同期比11.3%増収だった。株価は強基調に回帰して8月の上場来高値に接近している。16年3月期増収増益基調であり、インバウンド消費関連、地方創生関連、16年伊勢志摩サミット関連も注目点だ。8月高値を試す展開だろう。なお11月4日に第2四半期累計の業績発表を予定している。
■地域限定ブランド菓子を製造・販売
地域事業会社を傘下に置き、地域限定ブランド菓子の製造・販売を主力としている。駅・空港・高速道路SAなど交通機関チャネルでの土産品としての販売比率が高いことも特徴であり、国内旅行客の増加や訪日外国人旅行客のインバウンド消費も追い風となる。
主要子会社は、山陰地区中心に「お菓子の壽城」「ラングドシャ」ブランドなどを展開する寿製菓、北海道中心に「ルタオ」ブランドを展開するケイシイシイ、首都圏中心に「東京ミルクチーズ工場」「ザ・メープルマニア」など洋菓子を展開するシュクレイ、九州中心に「赤い風船」ブランドを展開する九十九島グループ、関西中心に「遊月亭」ブランドを展開する但馬寿、そして販売子会社(東海地区3社、中国・九州地区4社、関西地区2社)である。
■企業ビジョンは「お菓子の総合プロデューサー」
全国各地のお菓子のオリジナルブランドとショップブランドを創造する「お菓子の総合プロデューサー」を企業ビジョンに掲げ、製造卸から製造小売に事業モデルを転換して高収益化を推進している。
さらに「ワールド サプライジング リゾート(WSR)宣言」を経営スローガンとして掲げて、中期経営目標の指標を売上高経常利益率20%としている。
重点施策として、プレミアム・スイーツブランドの創出と育成(地域・チャンネル特性にマッチした商品開発推進、主力商品のリニューアルによるバージョンアップと価格改定、販路開拓やリアル店舗と通販の融合、新業態店事業の拡大)、インバウンド対策の強化(国内主要国際空港における免税売店等への販売強化、直営店舗での免税対応強化)、首都圏でのWSR化展開の推進(シュクレイのブランド力向上、フレンチトースト専門店「Ivorish(アイボリッシュ)」など新ブランドの確立)、海外展開、生産性向上による製造採算改善などを推進している。
健康食品事業については再構築に向けて、藍染めで知られる「タデ藍」を使用した機能性食品の企画販売を行う新会社の純藍を14年9月設立した。第一弾製品として「藍の青汁」を開発し、50代~70代女性をメインターゲットに、野菜不足を補うアンチエイジング飲料として15年1月販売開始した。一方で通販基幹業務システムサービス事業のジュテックスについては、事業中止に伴って14年12月解散した。
なお15年6月には寿製菓がJR鳥取駅構内の鳥取シャミネに「KAnoZA」「うさぎ座」「お菓子の壽城」を併設した店舗をリニューアルオープンし、15年7月にはケイシイシイが東京・表参道で人気のアントルメグラッセ・生グラス専門店GLACIEL(グラッシェル)をリニューアルオープンした。
■クリスマス・年末年始需要などで第3四半期の構成が高い収益構造
15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)50億01百万円、第2四半期(7月~9月)58億89百万円、第3四半期(10月~12月)62億75百万円、第4四半期(1月~3月)58億02百万円、営業利益は第1四半期2億02百万円、第2四半期5億10百万円、第3四半期8億66百万円、第4四半期4億55百万円だった。クリスマス・年末年始需要などで第3四半期の構成比が高い収益構造だ。
また15年3月期の配当性向は31.8%だった。ROEは14年3月期比1.6ポイント低下して15.3%、自己資本比率は同5.8ポイント上昇して61.1%となった。
■16年3月期増収増益基調
今期(16年3月期)の連結業績予想(5月13日公表)は売上高が前期比3.2%増の237億円、営業利益が同5.7%増の21億50百万円、経常利益が同3.9%増の21億50百万円、純利益が同6.5%増の13億90百万円としている。売上高は5期連続、純利益は4期連続で過去最高を更新する見込みだ。配当予想は前期と同額の年間40円(期末一括)で予想配当性向は29.9%となる。
出雲大社・伊勢神宮の遷宮特需反動影響の一巡、天候不順の影響一巡に加えて、首都圏でのブランド展開強化策の成果、インバウンド需要への対応強化など、重点施策の積極展開の効果で増収増益見込みだ。首都圏中心に洋菓子を展開するシュクレイが好調に推移する。売上面では台湾の子会社を新規連結することも寄与する。
セグメント別売上高(内部取引調整前)の計画はケイシイシイが2.0%増の85億円、寿製菓が1.0%増の75億60百万円、販売子会社が1.5%増の45億円、九十九島グループが2.7%増の35億円、但馬寿が0.2%増の10億円、シュクレイが10.9%増の31億円、その他(台湾北壽心股分有限公司を連結化)が9.6倍の2億50百万円としている。
第1四半期(4月~6月)は前年同期比10.8%増収、同73.4%営業増益、同78.6%経常増益、同99.9%最終増益だった。首都圏での販売強化などの重点施策が奏功して、売上高と経常利益は第1四半期として過去最高となった。売上総利益率は53.2%で同1.5ポイント上昇、販管費比率は46.9%で同0.7ポイント低下した。
セグメント別(内部取引調整前)に見ると、シュクレイがイベントなど店頭販促強化の効果で同41.8%増の大幅増収となり、販売子会社が同9.2%増収、寿製菓が同8.0%増収、九十九島グループが同7.8%増収、ケイシイシイが同6.5%増収と好調に推移した。但馬寿は同4.0%減収だった。
通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は、売上高が23.4%、営業利益が16.2%、経常利益が17.1%、純利益が16.0%である。やや低水準の形だが、クリスマス・年末年始需要などで第3四半期の構成比が高い収益構造であり、概ね順調な水準と言えるだろう。
■第2四半期累計概算売上高は11.3%増収
なお10月13日に第2四半期累計(4月~9月)の売上状況(概算)を発表した。売上高は前年同期比11.3%増の121億17百万円だった。各セグメントとも概ね好調に推移したようだ。特に首都圏での販売強化の効果でシュクレイが大幅増収だった。
セグメント別(内部取引調整前)に見ると、ケイシイシイが5.7%増収、寿製菓が11.3%増収、販売子会社が11.3%増収、九十九島グループが7.6%増収、但馬寿が1.0%増収、シュクレイが38.3%増収、その他が6.8倍増収だった。
中期的には首都圏を中心とする新業態店の知名度・ブランド力向上、新商品の開発・投入の推進、販促・接客強化による消費者への訴求力向上、製造採算改善などの効果が期待される。訪日外国人旅行客のインバウンド消費増加や、アベノミクス重点戦略の「地方創生」も追い風となって収益拡大基調だろう。
■株価は強基調に回帰して8月高値に接近
株主優待制度については、毎年3月末現在で100株以上所有の全ての株主に対して2000円相当の自社グループ製品、200株以上所有の全ての株主に対して4000円相当の自社グループ製品を贈呈し、さらに1000株以上所有株主に対して3000円分のグループ直営店舗優待券(優待券の代わりに指定商品への交換も可)を贈呈している。
株価の動きを見ると、悪地合いが影響した8月25日の直近安値3120円から切り返して強基調に回帰した。そして10月7日には4110円まで上伸して8月5日の上場来高値4335円に接近している。
10月13日の終値3900円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS134円00銭で算出)は29~30倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間40円で算出)は1.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS865円60銭で算出)は4.5倍近辺である。なお時価総額は約405億円である。
日足チャートで見ると一旦割り込んだ25日移動平均線を回復した。そして25日移動平均線が上向きに転じた。また週足チャートで見ると13週移動平均線を回復して水準を切り上げている。13週移動平均線がサポートラインの強基調に回帰したようだ。
首都圏でのブランド展開強化策なども奏功して16年3月期増収増益基調であり、インバウンド消費関連、地方創生関連、16年伊勢志摩サミット関連も注目点だ。8月5日の上場来高値を試す展開だろう。