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ヤマシタヘルスケアホールディングスは調整一巡、25年5月期減益予想だが保守的
- 2024/7/30 10:39
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ヤマシタヘルスケアホールディングス<9265>(東証スタンダード)は、経営理念に「地域のヘルスケアに貢献する」を掲げ、九州を地盤とする医療機器専門商社(山下医科器械)を中心に、継続的な収益拡大に向けてヘルスケア領域でのグループ力向上を推進している。25年5月期を初年度とする中期経営計画では、基本方針に「積極的投資とグループ機能向上によるバランス経営の実行」を打ち出した。24年5月期は販管費の増加などで減益だったが、各利益は前回予想を上回る水準で着地した。25年5月期は需要が堅調に推移して増収だが、人的資本経営の強化に伴う人件費の増加などで減益予想としている。ただし保守的な印象が強く、上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は上値を切り下げる形となったが大きく下押す動きも見られない。1倍割れの低PBRなど指標面の割安感も評価材料であり、調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。
■九州を地盤とする医療機器専門商社
経営理念に「地域のヘルスケアに貢献する」を掲げ、九州を地盤とする医療機器専門商社(山下医科器械)を中心に、継続的な収益拡大に向けて、ヘルスケア領域でのグループとしての収益力向上を推進している。
事業子会社の山下医科器械は九州を地盤とする医療機器専門商社で、医療機器卸売・メンテナンス、設備設計・施工、消耗品管理・物流などを展開している。イーピーメディックは整形外科領域の体内埋没材料(インプラント)の製造・販売、トムスは人工腎臓関連分野に強みを持ち透析装置・関連消耗品を中心とする医療機器卸売・メンテナンス、アシスト・メディコは医療機関の経営・事業承継支援などのコンサルティングサービス、イーディライトは病院向け予約ソリューション、エムディーエックスはDX技術関連製品・サービスの提供、クロスウェブ(23年7月子会社化)は医療機関向けネットワーク構築・ソフトウェア受託開発、鹿児島オルソ・メディカル(23年12月子会社化)は鹿児島県で整形外科分野に特化した医療機器・関連消耗品販売を展開している。マイクロソニック(24年6月子会社化)は超音波を用いた医療用機器開発・販売を展開している。
24年3月には山下医科器械が26年度中に新たな物流センターとして「新鳥栖TMSセンター」を開設すると発表した。物流機能の品質改善や効率化を推進する。
24年5月期のセグメント別売上高は、医療機器販売業が615億07百万円(一般機器分野が88億03百万円、一般消耗品分野が249億05百万円、低侵襲治療分野が146億26百万円、専門分野が112億91百万円、情報・サービス分野が18億81百万円)、医療機器製造・販売業が2億67百万円、医療モール事業が68百万円、そして調整額が▲1百万円だった。セグメント別利益(全社費用等調整前営業利益)は医療機器販売業が21億71百万円、医療機器製造・販売業が1百万円の損失、医療モール事業が0百万円、調整額が▲12億02百万円だった。
なお医療機関の設備投資関連のため、第2四半期(9月~11月)および第4四半期(3月~5月)の構成比が高い傾向がある。
■積極的投資とグループ機能向上によるバランス経営の実行
24年7月に公表した新中期経営計画(25年5月期~27年5月期)では、基本方針に「積極的投資とグループ機能向上によるバランス経営の実行」を掲げ、目標値は最終年度27年5月期の売上高730億円以上、営業利益9億50百万円、営業利益率1.3%以上、経常利益10億円とした。資本コストや株価を意識した経営としてはPBR(株価純資産倍率)1倍以上、ROE(自己資本当期純利益率)10%以上を目指し、株主還元としては配当性向30%以上とした。
重点施策として人的資本経営、グループ間連携による新たな価値の創出と生産性向上、持続的成長に向けた投資、ESG経営による地域社会への貢献、ガバナンス最優先の風土醸成を推進する。
ESG経営・SDGsへの取り組みでは21年8月にESG基本方針を策定し、さらに22年7月には2030年度を目標年度とする長期ビジョン「マルティプライビジョン2030」を策定した。既存の中核事業との連携を図りながら新たな事業ポートフォリオを構築し、企業価値の持続的成長および価値創出を目指すとしている。そして24年3月には山下医科器械が、経済産業省と日本健康会議が選定する健康経営優良法人認定制度において健康経営優良法人2024(大規模法人部門)に3年連続で認定された。
■24年5月期は減益だが計画超、25年5月期は減益予想だが保守的
24年5月期の連結業績は、売上高が23年5月期比5.8%増の615億55百万円、営業利益が16.3%減の9億67百万円、経常利益が15.4%減の10億20百万円、親会社株主帰属当期純利益が164.9%増の5億80百万円だった。配当(7月12日付で期末15円上方修正)は、23年5月期比22円増配の70円(期末一括)とした。配当性向は30.7%となる。
販管費の増加などで減益だったが、各利益は前回予想(3月29日付の修正値、売上高627億64百万円、営業利益8億83百万円、経常利益9億35百万円、親会社株主帰属当期純利益3億31百万円)を上回る水準で着地した。なお当期純利益については、特別損失で新物流センター開設(現在の鳥栖TMSセンターの敷地内に新たな物流センターとなる新鳥栖TMSセンター、26年度中の稼働予定)に伴い減損損失約4億円の計上を見込んでいたが、建築内容の精査を行った結果、減損損失が2億円となったことも寄与した。
医療機器販売業は売上高が6.0%増の615億07百万円、セグメント営業利益(全社費用等調整前)が1.1%増の21億71百万円だった。売上高の内訳は一般機器分野(画像診断機器、放射線診断装置等)が2.0%増の88億03百万円、一般消耗品分野(手術関連消耗品等)が3.5%増の249億05百万円、低侵襲治療分野(内視鏡、サージカル備品等)が5.2%増の146億26百万円、専門分野(整形、理化学、透析等)が12.1%増の112億91百万円、情報・サービス分野(設備保守メンテナンス等)が37.5%増の18億81百万円だった。需要が概ね堅調に推移し、円安に伴うコスト上昇分の販売価格への転嫁も推進した。
医療機器製造・販売業は売上高が6.6%減の2億67百万円で営業利益が1百万円の損失(23年5月期は12百万円)だった。医療モール事業は売上高が1.3%減の68百万円で営業利益が18.0%減の0百万円だった。
なお全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が140億21百万円で営業利益が1億96百万円、第2四半期は売上高が148億78百万円で営業利益が4億22百万円、第3四半期は売上高が164億74百万円で営業利益が2億12百万円、第4四半期は売上高が161億82百万円で営業利益が1億37百万円だった。
25年5月期の連結業績予想は売上高が24年5月期比9.4%増の673億19百万円、営業利益が20.2%減の7億71百万円、経常利益が19.5%減の8億21百万円、そして親会社株主帰属当期純利益が12.2%減の5億09百万円としている。配当予想は24年5月期比9円減配の61円(期末一括)としている。予想配当性向は30.0%となる。
需要が堅調に推移して増収だが、人的資本経営の強化に伴う人件費の増加などで減益予想としている。ただし保守的な印象が強く、上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。
■株主優待制度は5月末の株主対象
株主優待制度は毎年5月31日現在の1単元(100株)以上保有株主を対象に、保有株式数および継続保有期間に応じてオリジナルクオカードを贈呈(詳細は会社HP参照)している。
■株価は上値試す
24年2月16日に発表した自己株式取得(上限13万3000株・3億50百万円、取得期間24年2月19日~24年8月23日)については、24年6月30日時点の累計取得株式数が6万8700株となっている。
株価は上値を切り下げる形となったが大きく下押す動きも見られない。1倍割れの低PBRなど指標面の割安感も評価材料であり、調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。7月29日の終値は2627円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS204円47銭で算出)は約13倍、今期予想配当利回り(会社予想の61円で算出)は約2.3%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS3429円08銭で算出)は約0.8倍、そして時価総額は約67億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)