エスプールは底固め完了、24年11月期2Q累計減益だが計画超で通期横ばい予想据え置き

 エスプール<2471>(東証プライム)は、障がい者雇用支援やロジスティクスアウトソーシングなどのビジネスソリューション事業、コールセンター向け派遣などの人材ソリューション事業を主力として、環境経営支援サービス、広域行政BPOサービス、地方創生支援サービスなどの拡大も推進している。24年11月期は販管費増加などを考慮して営業利益横ばい予想としている。第2四半期累計は減収減益だったが、障がい者雇用支援サービスの好調が牽引して各利益は計画を上回る水準で着地した。期初時点で下期偏重の計画としており、積極的な事業展開で通期予想の達成は可能だろう。株価は反発力が鈍い形だが、底固め完了して出直りを期待したい。

■人材サービス事業を展開

 ビジネスソリューション事業(障がい者雇用支援サービス、ロジスティクスアウトソーシング、セールスサポート、採用支援など)および人材ソリューション事業(コールセンター向け派遣、販売・営業スタッフ派遣)を主力として、新規事業の環境経営支援サービスや広域行政BPOサービスの拡大も推進している。

 23年11月期のセグメント別業績(セグメント間取引および全社費用等調整前)は、ビジネスソリューション事業の売上高が125億55百万円(障がい者雇用支援サービス69億04百万円、ロジスティクスアウトソーシングサービス14億70百万円、広域行政BPOサービス13億89百万円、環境経営支援サービス9億49百万円、採用支援サービスOMUSUBI7億16百万円)で営業利益が29億81百万円、人材ソリューション事業の売上高が133億10百万円(コールセンター業務110億93百万円、販売支援が14億40百万円)で営業利益が12億57百万円だった。

 23年5月には、国際連合が提唱する国連グローバル・コンパクト(UNGC)に署名し、参加企業として登録された。併せて、UNGCに署名している日本の会員企業や団体で構成されるグローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンに加入した。24年3月には経済産業省および日本健康会議が認定する健康経営優良法人2024に選定(5年連続)された。24年4月には「ハタラクエール2024」において福利厚生推進法人に認証された。24年6月には経団連自然保護協議会の常任委員となり、同協議会が主催する経団連生物多様性宣言イニシアチブに参画した。

■ビジネスソリューションは障がい者雇用支援が主力

 ビジネスソリューション事業は、障がい者雇用支援サービスを主力として、ロジスティクスアウトソーシングサービス(EC通販発送代行サービス)、対面型会員獲得・販売促進のセールスサポートサービス、アルバイト・パート求人応募受付代行の採用支援サービスOMUSUBIなども展開している。

 障がい者雇用支援サービス「わーくはぴねす農園」は、障がい者雇用を希望する企業に対して農園を貸し出し、企業が主に知的障がい者を直接雇用する。障がい者の職業的自立および社会参加の支援を通じてノーマライゼーション社会の実現に貢献する事業である。23年11月期末時点の累計農園数は46施設、顧客数は606社、管理区画数は7549区画、就労者数は3774名(定着率92%)となった。売上高の内訳は運営管理費、設備販売、人材紹介料などである。なお24年6月には東京都立川市に全国50施設目を開設した。

 ロジスティクスアウトソーシングは品川センターと流山センターの2拠点において展開している。収益力向上に向けた事業基盤再構築を進めており、物流センター運営代行サービスを終了してEC通販発送代行サービスに集中する。

 採用支援サービスOMUSUBIは飲食・小売業を中心に求人応募受付業務を行っている。23年4月には面接代行サービスの実施件数が10万件を突破した。

 顧問派遣サービスは23年1月に、企業のプロ人材の活用を支援するサービスの名称について、従来の「プロフェッショナル人材バンク」から新ブランド「TAKUWIL(タクウィル)」に変更した。23年4月には「TAKUWIL」が、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会が運営する副業・兼業・フリーランス人材活用の無料コンシェルジュサービス「求人ステーション」の23年度認定マッチング事業者になった。

■人材ソリューション事業はコールセンター派遣が主力

 人材ソリューション事業はコールセンター業務の派遣を主力として、販売支援業務や介護系業務の派遣・紹介なども展開している。24年3月には販売促進支援サービスの事業拡大に向けて九州支店(福岡市博多区)を開設した。

 また24年3月には、販売支援促進サービスを展開するエスプールセールスサポートがベルシステム24と共同で「リアルプロモーションCRM」サービスの提供を開始すると発表した。

■環境経営支援サービス

 環境経営支援サービスについては、市場拡大が期待できる環境ビジネス分野での新たな収益柱の構築を目指し、20年6月にエコノス<3136>からカーボンオフセット事業を展開するブルードットグリーンの株式を取得して子会社化(22年4月に株式追加取得して完全子会社化、現エスプールブルードットグリーン)した。CO2排出量算定支援から、CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)関連の排出量削減コンサルティング、クレジット仲介支援まで、ワンストップサービスの展開を推進する。

 ゼロカーボンシティ実現に向けた包括的連携協定は、22年7月に宮崎県日南市、23年3月に宮崎県高鍋町、広島県北広島町、23年4月に宮崎県日之影町、23年7月に宮崎県高千穂町、宮崎県西都市、23年8月に宮崎県門川町、23年9月に宮崎県日向市、23年10月に福島県浅川町、北海道木古内町、23年11月に栃木県塩谷町、三重県桑名市、24年2月に群馬県富岡市、24年3月に鹿児島県和泊町、24年6月に栃木県さくら市、24年7月に北海道陸別町と締結して全国16件となった。

 またエスプールブルードットグリーンは、24年3月にbooost technologiesと業務提携契約、一般社団法人サステナブル経営推進機構と連携協定契約、24年4月に公益社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)とJリーグ気候アクションパートナー契約を締結した。

■広域行政BPOサービス

 広域行政BPOサービスは、人口10万人以下の地方都市を中心に隣接する複数の自治体業務を受託する地方自治体向けシェアード型BPOサービスを全国展開している。23年11月期末時点のBPOセンターは20センター(うちスマートカウンター併設15センター)となった。

 22年10月には、全国の自治体向けにスマート見守りプラットフォーム「otto見守りサービス」を開発・運営するotta(福岡県)に出資した。23年10月には、福島県いわき市、およびMONET Technologiesとの3者で、同市の出張行政サービスにおける実証実験を開始した。

 24年5月には徳島県鳴門市と包括連携協定を締結した。地域の交通課題の解決に向けた取り組みや自治体BPOを推進する。24年7月には沖縄県宜野湾市と立地協定を締結、また山口県宇部市と立地協定を締結した。いずれも県内の複数自治体をカバーするシェアード型BPOセンターを新設する。

■その他分野

 その他分野では、21年10月に宮崎県日南市およびココホレジャパン(岡山県岡山市)と3者包括連携協定を締結し、日南市内の後継者不在事業者の調査、移住者とのマッチング、事業再生支援等による後継者課題解決に取り組むと発表した。第一弾として、ココホレジャパンが運営するプラットフォームを活用した「宮崎県日南市継業バンク」を開設して地域の維持活性化を図る。

 23年1月にはオルタナとの業務提携を発表した。オルタナは07年からサステナビリティをテーマとした日本初のビジネス情報誌「オルタナ」を発行し、現在はサステナブルな経営に関する知識とスキルを評価する「サステナ経営検定」も運営している。同社が展開しているオンライン研修動画サービス「PivottAサステナ」をオルタナが運営する「サステナ経営検定」に提供する。

 24年6月には地域中小企業の課題解決に向けて、事業承継支援サービスを展開する子会社エスプールブリッジを設立した。

■新中期経営計画を策定予定

 中期経営計画については、人材派遣サービスの成長鈍化を踏まえて、従来の中期経営計画(目標値、25年11月期の売上高410億円、営業利益50億円、連結配当性向30%以上、高水準のROE維持)を一旦取り下げ、25年11月期を初年度とする新中期経営計画を策定する予定としている。新中期経営計画では事業ポートフォリオを再編し、障がい者雇用支援、サステナビリティ支援、地方創生支援を重点事業領域とする成長戦略を打ち出す見込みとしている。

■24年11月期2Q累計減益だが計画超、通期予想(下期偏重)据え置き

 24年11月期の連結業績予想(IFRS、前期比増減率は24年2月29日付で公表したIFRSベース23年11月期実績との比較)は、売上収益が23年11月期比4.9%増の270億60百万円、営業利益が1.0%減の27億50百万円、親会社株主帰属当期純利益が5.7%増の18億29百万円としている。配当予想は23年11月期と同額の10円(期末一括)としている。予想配当性向は43.2%となる。

 第2四半期累計は売上収益が前年同期比7.9%減の120億93百万円、営業利益が50.8%減の7億41百万円、親会社所有者帰属四半期純利益が29.3%減の6億84百万円だった。人材ソリューションにおける新型コロナ関連の売上減少に加え、ビジネスソリューション事業が下期偏重の計画のため減収減益だった。ただし障がい者雇用支援サービスの好調が牽引して各利益は計画(2月29日公表値、売上高124億87百万円、営業利益5億42百万円、親会社所有者帰属四半期純利益3億76百万円)を上回る水準で着地した。

 セグメント別(内部取引、全社費用等調整前)に見ると、ビジネスソリューション事業は売上収益が10.2%増の65億77百万円、営業利益が27.3%減の11億82百万円だった。

 障がい者雇用支援サービスの売上収益は18.7%増の38億87百万円だった。24年4月の法定雇用率の引き上げなどにより受注が高水準に推移した。設備販売は計画(430~480区画)を上回る528区画となった。顧客数は640社(新規27社、解約6社)で、管理区画数は8209区画、就労者数は4015名(定着率92%)となった。繁忙期(新年度)を迎え、設備販売が大幅に増加した。新規農園開設は4施設(第1四半期屋外2施設、第2四半期2施設)で、期末時点の施設数は累計50施設となった。

 広域行政BPOサービスの売上収益は27.6%減の4億72百万円だった。国策案件の終了により大幅減収だが、新年度の案件獲得に向けて営業を強化している。環境経営支援サービスの売上収益は18.2%増の4億68百万円だった。企業向けコンサルティングサービスは納品が下期集中だが、新たに開始した自治体向けコンサルティングサービスが寄与して概ね順調だった。

 ロジスティクスアウトソーシングサービスの売上収益は14.0%減の6億39百万円だった。物流センター運営代行業務からの撤退の影響で減収だが、EC通販発送代行業務については第2四半期より新規案件が稼働開始した。採用支援サービス(OMUSUBI)の売上収益は2.2%増の3億75百万円だった。新規顧客は順調に増加したが、自動化浸透に伴う単価下落の影響で小幅増収にとどまった。利益面は業務効率化効果などで上振れた。セールスサポートサービスの売上収益は10.4%増の4億59百万円だった。事業拡大に向けて全国5拠点体制を構築した。

 人材ソリューション事業は、売上収益が22.9%減の55億56百万円、営業利益が33.6%減の4億24百万円だった。主力のコールセンター業務の売上収益は26.8%減の44億62百万円だった。新型コロナ関連業務が終了して大幅減収だった。販売支援の売上収益は1.6%減の7億17百万円だった。

 なお全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が56億58百万円で営業利益が25百万円、第2四半期は売上高が64億35百万円で営業利益が7億16百万円だった。

 通期連の結業績予想は据え置いている。セグメント別(内部取引、全社費用等調整前)に見るとビジネスソリューション事業は売上高が19.7%増の150億23百万円、営業利益が15.0%増の34億97百万円としている。売上高の内訳は障がい者雇用支援サービスが15.9%増の80億円(運営管理費が27.8%増の49億92百万円、設備販売が5.2%増の24億60百万円、人材紹介料が16.5%減の5億47百万円)で、ロジスティクスアウトソーシングサービスが10.6%増の16億26百万円、広域行政BPOサービスが7.6%増の14億95百万円、環境経営支援サービスが50.6%増の14億30百万円、採用支援サービス(OMUSUBI)が11.7%増の8億円としている。

 障がい者雇用支援サービスは新規開設が8農園(上期実績4施設、下期4施設)、設備販売が1450区画(上期実績528区画、第3四半期275~325区画、第4四半期433~483区画)の計画としている。営業面では農園サービスに対する高い需要は変わらず好調だが、より丁寧な採用・教育に取り組んでいるため販売目標は一旦抑制する方針だ。また今期中に新サービス立ち上げを計画している。ロジスティクスアウトソーシングサービスは物流センターの稼働率向上や料金適正化などにより収益改善を推進する。なお物流センター運営代行サービスを終了し、今後はEC通販発送代行サービスに集中する。広域行政BPOサービスはスポット業務の縮小により上期の売上高が落ち込んだが、既存センターの稼働率向上に向けて営業を強化し、下期からの反転を見込んでいる。環境経営支援サービスは、企業向けコンサルティングサービスの納品が下期に集中する見込みだ。また、企業向けの支援ノウハウを活用して自治体向けの脱炭素支援サービスの拡大を推進する。採用支援サービス(OMUSUBI)はアルバイト・パート領域に加え、正社員採用支援サービスも開始する。また、自動化が難しくアウトソーシングニーズの高い面接代行サービスの拡大に注力する。

 人材ソリューション事業は売上高が7.4%減の123億25百万円、営業利益が10.9%減の11億20百万円の計画としている。売上高の内訳はコールセンター業務が7.7%減の102億43百万円、販売支援が23.8%増の17億82百万円、その他が61.4%減の3億円の計画としている。上期の進捗遅れの影響で通期も下振れの可能性があるが、コールセンター業務の立て直し、アウトソーシング案件の営業強化、新領域へのチャレンジ(施工管理技士の人材派遣を開始)などにより底打ちを目指す方針だ。

 24年11月期は、売上面で人材ソリューション事業の下振れの可能性の影響で全体としても下振れの可能性があるが、利益面はビジネスソリューション事業(特に障がい者雇用支援サービス)の上振れにより全体として計画達成を目指すとしている。上期は減収減益だったが、期初時点で下期偏重の計画としており、積極的な事業展開で通期予想の達成は可能だろう。

■株価は底固め完了

 株価は反発力が鈍い形だが、底固め完了して出直りを期待したい。7月30日の終値は320円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS23円16銭で算出)は約14倍、今期予想配当利回り(会社予想の10円で算出)は約3.1%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS111円78銭で算出)は約2.9倍、そして時価総額は約253億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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