【どう見るこの相場】「植田ショック」のリベンジ相場は基本は業績上方修正でフルとダブルのセット銘柄
- 2024/8/5 08:31
- どう見るこの相場
■急激な政策転換で株価下落・円高進行、経営者マインドにも変化の兆し
まさに「植田ショック」である。日本銀行は、前週30日、31日に開催した金融政策会合で0%~0.1%の政策金利を0.25%に引き上げ、国債買い入れ額を3兆円に半減する金融政策正常化策を決めた。会合後の記者会見で、同決定の経済への影響を問われた同総裁は、「実質金利で考えれば非常に深いマイナスで強いブレーキが景気等にかかるとは考えていない」と答えた。この発言は、相場セオリーの「水準より変化率」を何ら考慮していなかったように聞こえた。相場セオリーでは、株価がより感応度を高めるのは水準が高いか低いかより、それが変化する方向性にあるとする投資家マインドを教えている。実際に同総裁は、さらに次回の9月会合での0.5%への一段の政策金利引き上げを示唆しており、この高変化率は投資家マインドにはネガティブに働くはずなのにである。
案の定、株価も為替もショック安・ショック高に見舞われた。日経平均株価は、8月1日は一時1363円安と売られ、前週末2日も2216円安と史上2番目の下落幅を記録して3万6000円台を割り、今年7月11日につけた上場来高値4万2426円から6500円超幅の大幅調整となり、東証プライム市場の値上り銘柄はわずか14銘柄にとどまった。為替も、同時に開催されたFRB(米連邦準備制度理事会)のFOMC(公開市場委員会)後の記者会見でパウエル議長が、次回9月のFOMCで利下げを示唆したことから急速に円高・ドル安が進行し、前週末の取引終了後には7月の米雇用統計の非農業部門の雇用者数が市場予想を下回ってことが響き、1ドル=146円台まで円が買われ、1ドル=135円が次の円高・ドル安のフシ目とする観測さえ強めている。このまま推移すると、日銀の急ぎ過ぎた金融政策の正常化策は、逆資産効果も重なって生活防衛意識にスイッチを入れデフレ・マインドを再燃させ、FRBの遅すぎる利下げ策は、米国景気のソフトランディング(軟着陸)をハードランディング(強行着陸)させた政策判断ミスとともに先行き追及されるかもしれない。
■決算発表本格化で業績評価中心の相場展開に注目
しかも、経営者マインドも、折からの決算発表の本格化を前に「植田ショック」の前と後で変わってくる可能性がある。業績ガイダンスの想定為替レートをどう設定するか難しい判断を迫られるからである。今回の決算発表は、常に主力株の決算発表の先陣を切るニデック<6594>(東証プライム)と東京製鉄<5423>(東証プライム)が、これまでの決算発表時とは違って大幅高となる上々の滑り出しとなっていた。ともに今期業績を上方修正し、ニデックは株式分割、東京製鉄は自己株式取得のプラスワンを同時発表したことがポジティブ評価された。このうちニデックは、想定為替レートを従来通りに1ドル=145円に据え置いたが、「植田ショック」後は、想定為替レートを従来想定通りとするか、それとも1ドル=130円台にするかで、業績相場が逆業績相場に一変するかもしれない。現に足元では、業績上方修正組でも上方修正を中間期だけにとどめる会社も心なしか多いように見受けられた。
兎にも角にも「植田ショック」にはリベンジしなければならない。リベンジ相場はどこから、何をキッカケに始まるのか?まさか植田総裁が、激変緩和措置として今年3月に終了させたETF(上場投資信託)の買い入れを再開させて下値サポートをしてくれるとは考え難い。となると前週1日、2日は東証プライム市場の売買代金がともに6兆円を超えて「セリング・クライマックス」様相を強めただけに急落した分だけリバウンドするリターン・リバーサルが期待できるのか?あるいは値幅調整が一巡して日柄調整に入り延々と夏枯れ相場が続くのか?いろいろのケースが想定される。
もっとも可能性の高いのは、これから決算発表が本格化するなかで、業績評価を中心にした業績相場だろう。またここまでの決算発表でも業績上方修正とプラスワンの銘柄に比べれば例年より数少ないが、増配、株式分割、自己株式取得を同時発表するフルセット銘柄も続いた。すでに往って来いとなっているが、ニデックや東京製鉄も一時大幅高し、前週末2日の東証プライム市場で逆行高した14銘柄も、好決算発表銘柄が中心となっている。米国市場では、ハイテク株の業績伸び悩みで逆業績相場様相も強めているが、東京市場は基本通りに業績相場が進行することを期待したくなる。
そこで今週の当コラムでは、これまでの決算発表で業績を上方修正した銘柄のうちニデックや東京製鉄のようにプラスワンのある割安株を一番手として注目することにした。手集計しただけで7月初めから前週末までで50銘柄超の候補株がある。なかには、プラスワンどころかプラスツー、プラススリーのフルセント銘柄まで含まれる。今週週明け以降も続く決算発表も見守りつつ、まず足元を見直して対処するところだろう。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)