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マーケットエンタープライズは反発の動き、25年6月期も大幅増益予想
- 2024/8/29 10:38
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
マーケットエンタープライズ<3135>(東証プライム)は持続可能な社会を実現する最適化商社を目指して、ネット型リユース事業、メディア事業、モバイル通信事業を展開している。中期経営計画では、個人向けリユース分野における投資を拡大し、リユース市場でのプレゼンス確立を推進する方針としている。24年6月期はデリバティブ評価損や減損損失の計上で経常減益・最終赤字だが、ネット型リユース事業およびモバイル通信事業が牽引して大幅増収・大幅営業増益だった。そして25年6月期も大幅増収・大幅増益予想としている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は地合い悪化の影響を受ける場面があったが、その後は切り返して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。
■持続可能な社会を実現する最適化商社
持続可能な社会を実現する最適化商社を目指し、ITとリアルを融合させたリユース事業を中心に事業領域拡大戦略を推進している。セグメント区分はインターネットに特化してリユース品を買取・販売するネット型リユース事業、消費者に対して有益な情報をインターネットメディアで提供するメディア事業、低価格通信サービスのモバイル通信事業としている。
24年6月期セグメント別(調整前)売上構成比はネット型リユース事業58%、メディア事業3%、モバイル通信事業39%、営業利益構成比はネット型リユース事業41%、メディア事業25%、モバイル通信事業34%だった。
なお、大株主だったYJ1号投資事業組合から信託期間満了により保有株式売却の意向が寄せられたことに伴い、市場売却による株価形成への影響を避けるため、22年9月14日付でSBI証券と差金決済型自社株価先渡取引に係る契約を締結した。そして22年9月15日付の立会外終値取引(ToSTNeT―2)によって、YJ1号投資事業組合が保有していた同社株式40万株をSBI証券が取得した。今後の会計上の取り扱いとしては、各四半期末時点で時価評価を実施し、前四半期末との差額を営業外収益または費用に計上する。
■「高く売れるドットコム」と「おいくら」
ネット型リユース事業は販売店舗を保有せずに、インターネットに特化して買取・販売サービスを展開している。買取総合窓口サイト「高く売れるドットコム」をフラッグシップサイトとして、商材別に分類された30カテゴリーに及ぶ幅広い対応で自社WEB買取サイトを運営し、コンタクトセンターにおける事前査定、リユースセンターにおける買取・在庫一括管理・商品化、複数の主要Eマーケットプレイス(ヤフオク、楽天市場、Amazon、Ebayなど)に出店した自社運営サイトでの販売という、一気通貫のオペレーションシステムを特徴としている。
また「高く売れるドットコム」と日本最大級のリユースプラットフォーム「おいくら」(19年2月に事業譲受)のシステム連携・送客も強化している。24年6月には出張買取専門サービス「買いクル」などを展開するRCが「おいくら」と業務提携した。
リユースセンターについては、23年9月に広島リユースセンター、大阪リユースセンター東住吉店(大阪府内としては吹田市に続く2拠点目)を開設し、全国16拠点となった。
24年3月には「Yahoo!オークション Best Store Awards 2023」において、家電部門、PC・スマホ部門、楽器・器材部門の3部門で部門賞1位を受賞し、約2万ストアの中から総合賞4位に選出された。
地域社会における課題解決を目的として地方自治体との取り組みを推進し、リユースプラットフォーム「おいくら」を導入した自治体の不用品リユース事業は24年1月に福島県伊達市、茨城県龍ケ崎市、三重県亀山市、宮崎県宮崎市、岐阜県可児市、福島県南相馬市、24年2月に愛知県豊明市、島根県江津市、静岡県焼津市、千葉県柏市、神奈川県小田原市、愛知県長久手市、千葉県千葉市、福島県会津若松市、24年3月に東京都大田区、栃木県栃木市、兵庫県伊丹市、兵庫県加古川市、神奈川県横須賀市、茨城県笠間市、茨城県下妻市、静岡県島田市、鹿児島県曽於市、東京都町田市、埼玉県入間市、24年4月に愛知県北名古屋市、愛知県江南市、佐賀県唐津市、高知県いの町、福岡県春日市、奈良県北葛城郡広陵町、広島県三原市、24年5月に静岡県三島市、新潟県長岡市、愛知県新城市、埼玉県和光市、岐阜県瑞浪市、24年6月に千葉県鎌ケ谷市、茨城県築西市、鹿児島県霧島市、山形県東田川郡三川町、愛知県岩倉市、岩手県下閉伊郡岩泉町、埼玉県本庄市、鳥取県米子市、茨城県桜川市、東京都国立市、北海道旭川市、24年7月に東京都練馬区、愛知県愛西市、静岡県裾野市、岡山県倉敷市、奈良県大和高田市、愛知県碧南市、群馬県藤岡市、長野県小諸市で導入され、導入自治体が全国で150となって連携自治体人口は4200万人を突破した。
■中古農機具
中古農機具、中古建機、中古医療機器など法人向け大型商材の取り扱いを拡大している。子会社MEトレーディングは20年5月に中古農機具事業を譲り受けて、中古農機具の買取代行、国内および海外販売・輸出代行を展開している。
21年10月にマシナリー(中古農機具)ビジネス加速に向けて北関東リユースセンター(茨城県結城市)を開設、21年11月に北関東リユースセンターから中古農機具のEU向け輸出を開始し、中古農機具の取扱量拡大・EUへの輸出強化、拠点での対面販売による新規就農者支援などを推進している。22年4月にはファーマリーが展開する中古農機具の買取・販売事業を譲り受けた。
なお販売商流の多様化を目指し、カーチスホールディングス<7602>のグループ会社で中古車輸出のアガスタと業務提携した。そして22年12月には、海外向け中古車販売サイト「PicknBuy24.com」を通じて、アフリカへの販路開拓を目的とした中古農機具のテスト販売を開始した。
23年3月には就農者支援と新規就農促進を目的として中古農機具を用いたリユース連携を開始した。第1弾として福島市と連携した。中古農機具市場の活性化を促進することで、農業の観点からも持続可能な社会形成を目指すとしている。24年6月にはバリュークリエーション<9238>と業務提携した。バリュークリエーションが運営する解体工事プラットフォーム「解体の窓口」を通じて中古農機の仕入を強化する。
■メディア事業とモバイル通信事業
メディア事業は賢い消費を求める消費者に対して、その消費行動に資する有益な情報をインターネットメディアで提供するサービスを展開している。広告収入が収益柱となる。
モバイル通信関連のメディア「iPhone格安SIM通信」「SIMチェンジ」、モノ売却・処分関連のメディア「高く売れるドットコムMAGAZINE」「おいくらマガジン」、モノ修理関連のメディア「最安修理ドットコム」、中古農機具買取・販売プラットフォーム「中古農機市場UMM」、農業に特化した「農業とつながる情報メディアUMM」などを運営している。
なお「中古農機市場UMM」は、20年4月設立した子会社UMMが、20年5月国内最大級のインターネット中古農機具売買事業「JUM全国中古農機市場」を譲り受け、20年6月に名称を「中古農機市場UMM」に変更した。
モバイル通信事業は、子会社のMEモバイルがMVNO事業者として、通信費の削減に資する低価格かつシンプルで分かりやすい通信サービスを展開している。主力は「カシモ」ブランドのモバイルデータ通信サービスである。23年2月には「カシモWiMAX」が、カカクコムの「価格.com」内の「モバイル回線プロバイダ 人気ランキング2022年」において、モバイルルーター部門・ホームルータ部門でともに年間1位となり、総合ランキング1位を獲得した。
■プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書
22年4月に実施された東京証券取引所の市場再編ではプライム市場を選択し、プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書を公表(21年12月24日付で提出、23年9月29日付で更新)した。中期経営計画に掲げた積極投資を経て、目標値を達成して安定的な収益基盤を構築した後、26年6月期までにプライム市場上場維持基準に適合できる体制の構築に取り組むとしている。
24年3月18日には23年12月末時点での計画進捗状況を公表した。1日平均売買代金については基準に適合したが、流通株式時価総額については基準を充たしていないため、引き続き、中期経営計画に掲げた積極投資を経て、目標値を達成して安定的な収益基盤を構築した後、26年6月期までにプライム市場上場維持基準に適合できる体制の構築に取り組むとしている。
なお中期経営計画については、23年6月期の業績を踏まえて、23年8月14日付で新3ヶ年中期経営計画(ローリング方式により見直し、24年6月期~26年6月期)を公表した。そして目標値に26年6月期売上高300億円、営業利益20億円を掲げた。主に個人向けリユース分野における投資を拡大し、リユース市場でのプレゼンス確立を推進する方針としている。
■24年6月期大幅営業増益、25年6月期も大幅増益予想
24年6月期の連結業績は売上高が23年6月期比24.6%増の190億08百万円、営業利益が215.7%増の2億98百万円、経常利益が85.5%減の40百万円、親会社株主帰属当期純利益が4億76百万円の損失(23年6月期2億90百万円の利益)だった。
営業外でのデリバティブ評価損益(SBI証券との差金決済型自社株価先渡取引契約に基づくデリバティブ評価損益)の悪化(前期は評価益2億19百万円、当期は1億97百万円の評価損)や、特別損失での減損損失1億90百万円の計上により経常減益・最終赤字だが、ネット型リユース事業およびモバイル通信事業が牽引して大幅増収・大幅営業増益だった。売上高、各利益とも前回予想(24年6月14日付上方修正値)を上回る水準で着地した。
営業利益+2億04百万円の増減分析は、増益要因として増収要因+14億31百万円、減益要因として人件費・採用費増加▲4億45百万円、拠点関連費用増加▲1億07百万円、粗利益率低下▲3億10百万円、その他販管費増加(業容拡大に伴う荷造運賃・販売手数料等の増加)▲3億63百万円だった。
ネット型リユース事業は売上高が31.4%増の110億27百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が68.5%増の5億54百万円だった。売上高の内訳は、個人向けリユースが29.0%増の79億27百万円、マシナリー(農機具)が39.2%増の29億29百万円、おいくらが20.0%増の1億71百万だった。各分野とも売上が拡大し、利益面では大幅増収効果に加え、生産性向上策も寄与した。
メディア事業は売上高が14.1%減の6億66百万円、利益が22.7%減の3億42百万円だった。Google社が実施した検索エンジンにおけるコアアルゴリズム変更の影響を受けて減収減益だったが、第3四半期以降は回復傾向となった。
モバイル通信事業は売上高が19.2%増の73億98百万円、利益が0.5%増の4億56百万円だった。TVCMの試験的開始など認知度向上施策により、新規回線獲得が順調だった。
なお全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が41億06百万円で営業利益が1億54百万円の損失、第2四半期は売上高が44億20百万円で営業利益が1億13百万円、第3四半期は売上高が47億32百万円で営業利益が1億47百万円、第4四半期は売上高が57億50百万円で営業利益が1億92百万円だった。新規拠点開設などの先行投資をこなしながら営業損益が改善基調となった。
25年6月期の連結業績予想は、売上高が24年6月期比21.0%増の230億円、営業利益が134.3%増の7億円、経常利益が6億50百万円(24年6月期は40百万円)、親会社株主帰属当期純利益が3億30百万円(同4億76百万円の損失)としている。デリバティブ評価損益については算定困難なため見込んでいない。
販管費での拠点開設・移転費用1億07百万円や、特別損失での減損損失1億90百万円の発生を見込むが、生産性向上施策の進捗と24年4月以降の増員効果などにより大幅増収・大幅増益予想としている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株主優待制度を新設、24年6月末から実施
24年5月に株主優待制度の新設(詳細は会社HP参照)を発表した。毎年6月末時点で1単元(100株)以上保有株主を対象として、500円分のクオ・カードを進呈する。24年6月末対象から実施した。
■株価は反発の動き
株価は地合い悪化の影響を受ける場面があったが、その後は切り返して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。8月28日の終値は908円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS61円84銭で算出)は約15倍、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS164円84銭で算出)は約5.5倍、そして時価総額は約48億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)