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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】リンテックは調整一巡して戻り歩調、16年3月期3期連続増配も評価
- 2015/10/19 07:32
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
リンテック<7966>(東1)は粘着製品の大手で幅広い分野に事業展開している。株価は調整一巡して戻り歩調だ。16年3月期業績予想は増額含みで指標面に割高感はない。3期連続増配予想という積極的な株主還元姿勢も評価して、4月の年初来高値を目指す展開だろう。なお11月9日に第2四半期累計(4月~9月)の業績発表を予定している。
■高度な粘着技術と表面改質技術をベースとして幅広い分野に事業展開
高度な粘着応用技術と表面改質技術(粘着剤や表面コート剤の開発・配合・塗工技術)に強みを持ち、印刷材・産業工材関連(シール・ラベル用粘着紙・粘着フィルム、ウインドーフィルム、自動車用・工業用粘着製品など)、電子・光学関連(半導体関連粘着テープ・装置、積層セラミックコンデンサー製造用コートフィルム、液晶用偏光・位相差フィルム粘着加工など)、洋紙・加工材関連(カラー封筒用紙、粘着製品用剥離紙・剥離フィルム、炭素繊維複合材料用工程紙など)の分野に幅広く事業展開している。
■中期経営計画で17年3月期ROE8%以上目標
14年4月にスタートした3ヵ年中期経営計画「LIP-2016」では重点テーマを、グローバル展開のさらなる推進、次世代を担う革新的新製品の創出、強靭な企業体質への変革、戦略的M&Aの推進、人財の育成とした。
数値目標としては17年3月期売上高2400億円、営業利益200億円、経常利益200億円、純利益130億円、売上高営業利益率8%以上、そしてROE8%以上を掲げている。セグメント別には印刷材・産業工材関連が売上高1025億円、営業利益57億円、電子・光学関連が売上高943億円、営業利益88億円、洋紙・加工材関連が売上高432億円、営業利益55億円としている。
海外展開に関しては、アジアを中心に拠点網を拡大している。15年1月には東南アジアおよびインドなどにおける事業統括会社をシンガポールに設立した。包括的な事業戦略の立案・実行により同地域での事業展開の強化を図る方針だ。また現在、タイの工場で各種粘着製品の生産能力増強を進めている。
研究開発面では、研究所新棟を建設中で15年秋稼働予定である。最新鋭の大型研究設備の導入により、新製品開発のスピードアップを図る。また米国テキサス州の研究開発拠点(NSTC)では新規シート材料の実用化に向けた研究を進めている。
新製品に関しては15年6月に三笠製薬と共同で、皮膚に貼ることでバラの香り成分を体内に吸収し、汗腺から放出させるシート「ローズフィット・パッチ」の開発を発表した。ほのかなバラの香りが体の周囲を包み込む、貼るタイプのエチケットケア製品である。体臭や尿臭など臭い改善ニーズが高い介護現場などでの採用を目指して三笠製薬が販売を開始した。
15年8月には、当社が開発を進めてきたハイバリアフィルムの技術を台湾の工業技術研究院(ITRI)に供与し、フレキシブル有機ELディスプレイの製造プロセス技術を共同開発すると発表した。
9月29日には、油面用粘着ラベル素材、難燃ラベル素材、薄膜粘着ラベル素材などシール・ラベル用粘着素材の新製品8アイテムを開発し、15年11月から順次発売すると発表した。またエア抜け性に優れて誰でもきれいに貼りやすく、プラスチック成形品から発生するアウトガスによる浮き・膨れも抑制した新規ラベル素材の開発を発表した。16年1月から本格販売開始する。
■16年3月期増収増益予想で増額含み、3期連続増配予想
なお15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)493億22百万円、第2四半期(7月~9月)511億67百万円、第3四半期(10月~12月)529億36百万円、第4四半期(1月~3月)538億30百万円で、営業利益は第1四半期39億75百万円、第2四半期47億79百万円、第3四半期44億86百万円、第4四半期36億41百万円だった。
また15年3月期の配当性向は29.7%だった。ROEは14年3月期比1.4ポイント上昇して7.2%、自己資本比率は同4.5ポイント上昇して71.8%となった。
今期(16年3月期)の連結業績予想(5月8日公表)は、売上高が前期比6.1%増の2200億円、営業利益が同9.6%増の185億円、経常利益が同2.2%増の183億円、そして純利益が同8.9%増の127億円としている。配当予想は同6円増配の年間54円(第2四半期末27円、期末27円)で予想配当性向は30.7%となる。3期連続の増配予想だ。
主要通貨の想定為替レートは1米ドル=115円、1ユーロ=126円80銭などとしている。設備投資は同50億円増加の128億円、減価償却費は同10億円増加の97億円、研究開発費は同14億円増加の82億円の計画だ。
またセグメント別の計画は、印刷材・産業工材関連の売上高が同7.1%増の930億円、営業利益が同41.4%増の41億円、電子・光学関連の売上高が同5.6%増の879億円、営業利益が同3.0%増の104億円、洋紙・加工材関連の売上高が同4.8%増の391億円、営業利益が同横ばいの40億円としている。
スマートフォン関連や自動車関連を中心に需要は概ね好調に推移する見込みだ。特に半導体関連粘着テープ・装置、積層セラミックコンデンサー製造用コートフィルム、液晶ディスプレイ関連粘着製品など電子・光学関連の好調が牽引する。国内の消費回復などで印刷材・産業工材関連、洋紙・加工材関連の増勢も予想される。
タイでの増産投資などに伴って減価償却費が増加するが、販売数量増加、プロダクトミックス改善、原燃料価格上昇に対応した製品価格改定、継続的な原価低減、さらに円安進行メリットも寄与して増益見込みだ。
第1四半期(4月~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比6.5%増の525億50百万円で、営業利益が同24.7%増の49億56百万円、経常利益が同26.0%増の50億65百万円、純利益が同28.9%増の36億05百万円だった。電子・光学関連の好調が牽引した。プロダクトミックスの改善、原価低減、そして為替の円安も寄与して大幅増益だった。売上原価率は74.2%で同1.7ポイント改善した。
セグメント別には、印刷材・産業工材関連の売上高が同3.8%増の216億90百万円、営業利益(全社費用等調整前)が同19.5%減の6億77百万円、電子・光学関連の売上高が同12.3%増の213億61百万円、営業利益が同37.8%増の30億36百万円、そして洋紙・加工材関連の売上高が同0.9%増の94億98百万円、営業利益が同31.1%増の11億94百万円だった。
通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が23.9%、営業利益が26.8%、経常利益が27.7%、純利益が28.4%と順調な水準である。期初時点では保守的な予想を公表する傾向もあるだけに、通期業績の会社予想は増額含みだろう。
また需要の増加、高付加価値化の進展、さらにアジアを中心とする海外展開の加速も寄与して、中期的に収益拡大基調が期待される。
■株価は調整一巡して戻り歩調、4月の年初来高値目指す
株価の動きを見ると、悪地合いが影響した9月29日の年初来安値2411円から反発して戻り歩調の展開だ。10月9日には2763円、そして10月16日には2803円まで上伸した。
10月16日の終値2771円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS176円06銭で算出)は15~16倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間54円で算出)は2.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2363円81銭で算出)は1.2倍近辺である。なお時価総額は約2122億円である。
日足チャートで見ると25日移動平均線、週足チャートで見ると13週移動平均線を突破した。さらに26週移動平均線突破の動きを強めている。調整が一巡して強基調に転換したようだ。16年3月期業績予想は増額含みで指標面に割高感はない。3期連続増配予想という積極的な株主還元姿勢も評価して、4月の年初来高値3090円を目指す展開だろう。