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クレスコは上値試す、25年3月期増収増益予想で収益拡大基調
- 2024/9/2 10:31
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
クレスコ<4674>(東証プライム)は独立系システムインテグレータである。ビジネス系ソフトウェア開発や組込型ソフトウェア開発のITサービスを主力に、顧客のDXを実現するデジタルソリューションも強化している。8月30日には新サービス「業務整理ワークショップ」をリリースした。25年3月期も受注が堅調に推移し、生産性向上効果なども寄与して増収増益予想、そして連続増配予想としている。第1四半期は大幅増益と順調だった。受注環境は良好であり、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は地合い悪化の影響を受ける場面があったが、その後は切り返して戻り高値圏だ。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。
■ITサービスを主力としてデジタルソリューションも強化
独立系のシステムインテグレータで、ビジネス系ソフトウェア開発や組込型ソフトウェア開発のITサービスを主力としている。さらに成長戦略として顧客のDXを実現するデジタルソリューションも強化している。
セグメント区分は、ITサービス(エンタープライズ、金融、製造の各分野のコンサルティング・開発・保守の総合サービス)と、デジタルソリューション(自社製品Creage、インテリジェントフォルダなど、顧客のDXを実現する製品・サービスからなるソリューション群)としている。
24年3月期のセグメント別業績はITサービス事業の売上高が489億08百万円で営業利益(全社費用等調整前)が66億01百万円(内訳はエンタープライズの売上高が203億11百万円で営業利益が20億73百万円、金融の売上高が147億40百万円で営業利益が20億73百万円、製造の売上高が138億55百万円で営業利益が24億54百万円)、デジタルソリューション事業の売上高が38億47百万円で営業利益が2億25百万円、営業利益の調整額が▲17億05百万円だった。収益面では案件別の採算性が影響し、企業のIT投資関連のため年度末にあたる第4四半期の構成比が高くなる特性がある。
■M&A・子会社再編
M&A・アライアンスおよびグループ子会社再編では、20年4月にシステムインテグレータのエニシアスを子会社化、21年7月に組込型ソフトウェア開発のOECを子会社化、22年5月に子会社クリエイティブジャパンの商号をクレスコ・デジタルテクノロジーズに変更、22年7月に子会社のアルスが同じく子会社のエヌシステムおよびネクサスを吸収合併して商号をクレスコ・ジェイキューブに変更、23年2月に日本ソフトウェアデザイン(JSD)の全株式を取得して子会社化した。
23年3月には、フォーラムエンジニアリング<7088>およびインドのSRM Globalとの3社共同で、フォーラムエンジニアリングのインド現地法人コフナビインディア社(22年10月設立)に出資した。23年9月には、飲食業界のDX推進支援の拡大に向けて、ベトナムのレストラン&リテールテックスタートアップ企業CAPICHI社と資本業務提携した。23年12月には、セキュリティ脆弱性診断サービスやSOC(セキュリティオペレーションセンター)構築・運用など情報セキュリティサービスを展開するセキュアイノベーションと資本業務提携した。24年4月にはシステムコンサルティングやインフラ設計構築・運用などを展開するジェット・テクノロジーズを子会社化した。24年6月には連結子会社クレスコ ワイヤレスの全株式を譲渡した。
また24年7月には同社、連結子会社のJSDおよびメクゼスの3社の組織再編を実施した。メクゼスがJSDを吸収合併(合併後の商号はメクゼス)するとともに、同社がJSDの一部事業(JSDが名古屋営業所において営む事業の全て)を譲りうけた。3社のノウハウやリソースを地域別に整理・統合して人財・経営資源を有効活用する。
■働き方改革や健康経営を推進
24年4月に発表した新中期経営計画2026(24年度~26年度)では、成長に向けた方向性として「IT・技術を通じて顧客の競争優位性を創出し、ともに社会を前進させるデジタル価値創造企業を目指す」を掲げた。目標値としては30年までに売上高1000億円企業を目指し、27年3月期売上高700億円、営業利益80億円、営業利益率11.5%、ROE15%を掲げた。配当性向は25年3月期より40%に引き上げる。またサステナビリティ経営関連の目標としては女性管理職比率13%、エンゲージメントスコア70などを掲げた。
重点戦略としては、共創型モデル確立、品質リーダーシップ発揮、人的資本経営推進、技術・デジタルソリューション拡張、事業連携促進、デジタル変革実現、グループ一体経営を掲げた。
事業別戦略としては、ITサービス事業のエンタープライズ分野ではワンストップサービスの提供拡大・効率化、主力業界の深耕、エンタープライズ領域のさらなる拡大、新しい価値のサービスの顧客との共創、金融分野ではバックエンド領域の拡大、データ連携・処理技術(ミドルウェア)の強化、共創をテーマとした業務推進、さらなるデータ利活用、業務知識の強化・法規制対応、製造分野ではインフォテインメント系の統合・充実、サイバーセキュリティ対応・セーフティな製品設計、モビリティ領域への集中、モビリティサービスの実装、顧客企業のITケイパビリティ強化、デジタルソリューション事業ではクラウド・オートメーション領域の継続的なアップデートへの取り組み、プリセールス・カスタマーサクセスの強化、経営課題の解決に寄与するソリューションの拡充、クレスコブランドのデジタルソリューション開発・実装、ブランド力向上による業界内の地位確立を推進する。
なお健康経営・社会貢献関連では、23年3月にスポーツ庁が認定する「スポーツエールカンパニー2023」に認定された。24年2月には2年連続でスポーツ庁「スポーツエールカンパニー」に認定された。24年3月には経済産業省と日本健康会議が選定する健康経営優良法人認定制度に基づく健康経営優良法人2024(ホワイト500)に認定された。
24年6月には、同社からの寄付を契機に設立された「名古屋大学大学院情報学研究科 附属組込みシステム研究センター クレスコSDV研究室」とともに、経済産業省と国土交通省が公表している「モビリティDX戦略」の実現に貢献するため、自動車の未来を支えるAPI策定プロジェクト「Open SDV Initiative」を設立し、SDVに重要となるビークルAPIの策定活動を開始した。また全国新聞社事業協議会が主催する「2024年度全国選抜小学生プログラミング大会」に協賛(3回目)している。
■デジタルソリューションや自社オリジナル製品を拡大
オリジナル製品・サービスではIoTのKEYAKI、AIのMinervae、クラウドのCreageを3大ブランドと定義し、ソフトウェア開発・システム開発の需要喚起を推進している。23年3月にはビジネスパートナー契約を締結しているUiPath社のダイヤモンドパートナーに認定された。23年10月には新たに開発したホテルの部屋割り業務最適化ツール「RooMagic」をリリースした。九州・東京・京都に展開するJR九州ホテルズでの導入が決定している。23年11月には歯のパノラマレントゲン画像から個々の歯を識別する情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラムの特許を取得した。
24年2月には情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際標準規格ISO/IEC27001:2022の認証を全社で取得した。24年3月には子会社のエニシアスが、Google Cloud Partner Advantageプログラムでデータ分析スペシャライゼーションを取得、Google CloudのAIパートナーエコシステムのパートナー企業の1社に登録された。
24年8月にはホテルの部屋割り業務最適化ツール「RooMagic」の新バージョンをリリースした。横浜ベイシェラトンホテル&タワーズでの導入が決定している。また8月30日には新サービス「業務整理ワークショップ」をリリースした。
■25年3月期増収増益予想、1Q順調で収益拡大基調
25年3月期の連結業績予想は、売上高が24年3月期比10.9%増の585億円、営業利益が15.2%増の59億円、経常利益が6.0%増の60億円、親会社株主帰属当期純利益が7.3%増の40億円としている。配当予想は38円(第2四半期末19円、期末19円)としている。24年7月1日付株式2分割を遡及修正すると24年3月期(年間26円)比12円増配の形となる。連続増配で予想配当性向は39.1%となる。
第1四半期は、売上高が前年同期比15.8%増の137億58百万円、営業利益が85.0%増の8億70百万円、経常利益が23.8%増の10億27百万円、親会社株主帰属四半期純利益が24.8%増の7億56百万円だった。
受注が好調に推移したことに加え、ジェット・テクノロジーズを新規連結したことも寄与して大幅増収となり、前年の不採算プロジェクトの影響が概ね一巡したため各利益とも大幅増益だった。営業外収益ではデリバティブ評価益が2億52百万円減少(前期は2億82百万円計上、当期は30百万円計上)した。また特別利益では投資有価証券償還益が減少71百万円減少(前期は1億08百万円計上、当期は37百万円計上)した。
ITサービス事業は売上高が13.5%増の127億90百万円、営業利益(全社費用等調整前)が53.0%増の13億72百万円だった。
このうちエンタープライズは、売上高が12.2%増の50億70百万円、営業利益が79.3%増の3億12百万円だった。売上面は運輸、情報・通信・広告分野の受注が伸長したことに加え、ジェット・テクノロジーズを新規連結したことも寄与した。利益面は不採算プロジェクトが1件残ったものの、前期の3件に比べて影響が減少した。
金融は売上高が19.7%増の41億82百万円、営業利益が92.2%増の5億49百万円だった。売上面は銀行分野受注が好調に推移したことに加え、ジェット・テクノロジーズを新規連結したことも寄与した。利益面は前期の不採算プロジェクトの影響が一巡したことも寄与した。
製造は売上高が8.9%増の35億37百万円で、営業利益が16.8%増の5億10百万円だった。機械・エレクトロニクス分野の受注が伸長し、ジェット・テクノロジーズを新規連結したことも寄与して増収増益だった。
デジタルソリューション事業は売上高が56.9%増の9億67百万円、営業利益が68.2%減の8百万円だった。主力のRPAライセンスの販売が増加して大幅増収だが、利益面は組織体制見直しによる売上原価の増加、一部の連結子会社における販管費の増加により減益だった。
通期の連結業績予想は据え置いている。受注が堅調に推移し、前期の不採算案件発生の影響一巡、生産性向上効果なども寄与して増収増益予想、そして連続増配予想としている。第1四半期は大幅増益と順調だった。受注環境は良好であり、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。受注環境は良好であり、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株価は上値試す
株価(24年7月1日付で株式2分割)は地合い悪化の影響を受ける場面があったが、その後は切り返して戻り高値圏だ。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。8月30日の終値は1296円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS97円09銭で算出)は約13倍、今期予想配当利回り(会社予想の38円で算出)は約2.9%、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS1343円78銭を株式2分割後に換算した671円89銭で算出)は約1.9倍、そして時価総額は約570億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)