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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】パイプドHDはマイナンバー関連やストレスチェック義務化関連を材料視
- 2015/10/20 07:03
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
パイプドHD<3919>(東1)(旧パイプドビッツが株式移転で設立した持株会社が15年9月1日付で新規上場)は情報資産プラットフォーム事業を主力として事業展開している。19日の株価は207円(17.13%)高の1416円まで急伸する場面があり持株会社移行後の上場来高値を更新した。マイナンバー関連やストレスチェック義務化関連を材料視したようだ。16年2月期増収増益・増配予想であり、中期成長力も評価して上値追いの展開だろう。
■旧パイプドビッツが株式移転で持株会社を設立
旧パイプドビッツが株式移転によって15年9月1日付で純粋持株会社パイプドHDを設立した。旧パイプドビッツは15年8月27日付で上場廃止となり、新パイプドHDが15年9月1日付で東証1部に新規上場した。
15年9月には子会社等株式の配当による組織再編を実施した。子会社パイプドビッツが保有する子会社株式等を当社(持株会社)に現物配当して、当社が子会社株式等を直接保有する。グループ内取引で当社の連結純資産額に変更を生じさせるものではないため連結業績に与える影響はない。
■国内最大規模の情報資産プラットフォーム「スパイラル」が基盤
国内最大規模の情報資産プラットフォーム「スパイラル」を基盤として、情報資産プラットフォーム事業(データ管理などクラウドサービス提供)、広告事業(アフィリエイトASP一括管理サービス「スパイラルアフィリエイト」など)、およびソリューション事業(ネット広告制作、アパレル・ファッションに特化したECサイト構築・運営受託、子会社ペーパレススタジオジャパン(PLSJ)のBIMコンサルティング事業など)を展開している。
情報資産プラットフォーム事業では「スパイラル」、アパレル特化型ECプラットフォーム「スパイラルEC」、会計クラウド「ネットde会計」「ネットde青色申告」、クラウド型グループウェア×CMS×SNS連携プラットフォーム「スパイラルプレース」などを主力としている。
また薬剤・医療材料共同購入プラットフォーム「JoyPla」、美容関連のヘアカルテ共有サービス「美歴」、地域密着型SNS「I LOVE 下北沢」、政治・選挙プラットフォーム「政治山」、BIM建築情報プラットフォーム「ArchiSymphony」などを展開し、14年3月にはアズベイスを子会社化してコールセンタープラットフォームサービス「BizBase」にも事業領域を広げている。
15年3月にはパイプドビッツ総合研究所を設立した。政府の政策に対して情報通信技術の活用や課題、先行事例などさまざまな調査研究や実証実験を行い、公表や提言などを通じて地域や社会の課題解決に貢献するとしている。9月3日に1万人ニーズ調査第11弾「ヘルスケア3政策の分析レポート」、9月17日に第12弾「ICT活用政策の11分野間ニーズ比較レポート」を公開した。
15年5月には自治体広報紙へのオープンデータ利活用モデル事業化を目的として新会社パブリカを設立した。
15年7月には「スパイラル・マイナンバートータルソリューション」の提供開始を発表した。マイナンバー運用体制整備をトータルサポートする。また「スパイラル・オムニチャネルソリューション」の提供開始を発表した。マルチクラウドの活用により、オムニチャネル化に向けたスモールスタートを切ることができるオムニチャネル実践基盤で、情報資産プラットフォーム「スパイラル」が顧客情報統一管理を担う。
9月24日には、ビューティサロンチェーン運営のDu-Pay(東京都)からマイナンバー制度対応に関して、個人番号の収集、保管、利用、廃棄の基盤として「スパイラル・マイナンバー管理サービス」が採用されたと発表している。22店舗の従業員個人番号を高セキュアなクラウド環境において、暗号化された状態で安全に管理する。
また9月25日には、プレナス<9945>のグループ会社におけるマイナンバー制度対応に関して、個人番号の収集、保管、利用、廃棄の基盤として「スパイラル・マイナンバートータルソリューション」が採用されたと発表している。全国1200超の直営店の従業員・アルバイトなど、将来的には新規採用者の番号追加も含めて約12万件の個人番号を管理する見込みだ。
9月28日には、クラウド型ストレスチェックサービス「こころの診断センター」の提供を開始し、TAC<4319>がメンタルヘルス対策サービスとして創設する「ストレスチェック義務化トータルソリューション」に採用されたと発表している。TACは改正労働安全衛生法(ストレスチェック義務化)対応サービスとして、Webストレスチェックおよびメンタルヘルス対策研修ならびに組織診断をワンストップで提供する。
改正労働安全衛生法(ストレスチェック義務化)は、メンタルヘルス対策の充実・強化等を目的として、従業員50人以上の全事業所にストレスチェック実施を義務付ける内容で、15年12月1日に施行される。
また9月29日には、地域密着型SNS「I LOVE 下北沢」が、下北沢東会(あずま通り商店街)と共同の連携体で実施する「外国人来街者に向けた街の魅力発信事業および、おもてなし提供等事業」が、経済産業省の「平成27年度地域商業自立促進事業」に採択されたと発表している。
■M&A・アライアンス戦略も積極展開
M&A・アライアンス戦略では、15年2月に世界有数のソフトウェアベンダーである米スプリンクラー社の日本法人スプリンクラー・ジャパン社に出資(A種優先株式)し、15年3月には米スプリンクラー社に純投資目的で総額約4百万米ドル出資した。また15年3月にはカレン(東京都)に出資して事業連携を強化した。
15年4月には子会社PLSJとエヌ・シーエヌ(岐阜県)が住宅業界向けBIM事業を展開する合弁会社MAKE HOUSEを設立、ソフトブレーン<4779>と業務提携した。
また15年7月には講談社が刊行する女性誌「ViVi」のEC事業展開に関して、当社が新設する子会社ウェアハートと講談社との間で業務提携すると発表した。システム開発、ECサイト構築、商品仕入および物流についてウェアハートが担当する。
■契約数増加に伴うストック型収益構造
15年2月期(旧パイプドビッツ)の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)7億14百万円、第2四半期(6月~8月)7億98百万円、第3四半期(9月~11月)8億00百万円、第4四半期(12月~2月)8億61百万円、営業利益は第1四半期1億40百万円、第2四半期1億65百万円、第3四半期1億71百万円、第4四半期1億49百万円だった。
契約数増加に伴って収益が拡大するストック型の収益構造である。15年2月期末の有効アカウント数(全事業合計)は14年2月期末比661件増加の1万757件だった。また15年2月期の配当性向は34.1%で、ROEは14年2月期比2.2ポイント低下して15.9%、自己資本比率は同0.2ポイント低下して77.6%だった。
■16年2月期第2四半期累計は増収増益、通期も増収増益で増配予想
9月30日に発表した今期(16年2月期)第2四半期累計(3月~8月)の連結業績は、売上高が前年同期(旧パイプドビッツ)比24.4%増の18億81百万円で、営業利益が同12.1%増の3億42百万円、経常利益が同9.3%増の3億33百万円、そして純利益が同1.9%増の1億80百万円だった。
主力の情報資産プラットフォーム事業が好調に推移し、グループ全体の積極採用に伴う人件費増加、外注加工費の増加、さらに組織再編費用の特別損失計上などを吸収して増収増益だった。売上高と営業利益は第2四半期累計として過去最高を更新した。
セグメント別の動向を見ると、情報資産プラットフォーム事業は売上高が同17.9%増の14億99百万円、営業利益(全社費用等調整前)が同1.8%増の3億03百万円、広告事業は売上高(広告枠の仕入高を売上高から控除する純額を表示)が同54.8%増の1億09百万円、営業利益が同3.7倍の27百万円、そしてソリューション事業は売上高が同60.6%増の1億69百万円、営業利益が11百万円(前年同期は0百万円)だった。
第2四半期末の有効アカウント数(全事業合計)は15年2月期末比188件減少して1万569件となった。第1四半期にスパイラルプレースの大型解約があったため合計では減少の形だが、その影響を除くと堅調に推移しているようだ。
なお四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(旧パイプドビッツ3月~5月)9億35百万円、第2四半期(6月~8月)9億46百万円、営業利益は第1四半期1億64百万円、第2四半期1億78百万円だった。
通期の連結業績予想は前回予想(9月1日公表、旧パイプドビッツ3月31日公表数値と同じ)は、売上高が前期比26.0%増の40億円、営業利益が同31.2%増の8億20百万円、経常利益が同29.2%増の8億20百万円、純利益が同31.6%増の4億90百万円としている。16期連続で営業最高益更新の見込みだ。配当予想は同2円増配の年間18円(第2四半期末8円、期末10円)で予想配当性向は30.0%となる。
通期ベースではアカウント数も増加基調で、主力の情報資産プラットフォーム事業の好調が牽引して大幅増収増益予想だ。契約売上高(月額課金)が順調に増加し、名古屋営業所開設による中部圏の販売網拡大も寄与する。
また積極的な事業・育成・開発投資や人材採用を継続する方針だ。スプリンクラー・ジャパン社への出資を通じて、新規事業領域であるソーシャル分野(Sprinklr事業)にも進出する。
なお出資先で持分法適用会社の可能性があるスプリンクラー・ジャパン社とカレンの業績、および純投資目的の出資先である米スプリンクラー社の投資評価損益などについては、現段階では業績への影響は軽微のため業績予想に織り込んでいないとしている。
通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が47.0%、営業利益が41.7%、経常利益が40.6%、純利益が36.7%である。やや低水準の形だが、契約数増加に伴って契約売上高(月額課金)が増加するストック型収益構造であり、ネガティブ要因とはならない。通期ベースでも増収増益基調に変化はないだろう。
■次世代ITベンダーを目指す
14年3月発表の「中期経営計画2017」では、15年2月期から17年2月期を「次世代ITベンダーへと革新する3ヵ年」と位置付けて、目標数値に17年2月期売上高92億円、営業利益28億円を掲げている。
そして15年9月1日付で純粋持株会社パイプドビッツHDを設立した。経営効率の向上、組織再編の柔軟性・機動性確保、グループ全体の最適化とガバナンス機能の強化を目的として、中長期の持続的成長および企業価値向上を推進するとしている。ストック型の収益構造であり、情報資産プラットフォーム事業が牽引して中期的にも収益拡大基調だろう。
なお、5月27日開催の第15回定時株主総会において株式移転を決議したが、6月10日に反対株主から当社株式の買取請求を受けた。買取請求株主は1名、買取請求株式数は普通株式50万株(発行済株式数の6.2%)、買取価額は8億94百万円で、取得資金については全額を金融機関からの借り入れによって調達予定としている。
また8月14日に純粋持株会社パイプドビッツHD設立に伴う自己株式消却を発表した。消却日15年9月1日、消却株式数116株である。
■株価は急伸して持株会社移行後の高値更新
株価の動きを見ると、直近安値圏1000円近辺で調整が一巡して水準を切り上げ、10月19日は前日比207円(17.13%)高の1416円まで急伸する場面があり、持株会社移行後の上場来高値を更新した。マイナンバー関連やストレスチェック義務化関連を材料視したようだ。
10月19日の終値1397円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS60円76銭で算出)は23倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間18円で算出)は1.3%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS326円10銭で算出)は4.3倍近辺である。なお時価総額は約113億円である。
16年2月期増収増益・増配予想であり、中期成長力も評価して上値追いの展開だろう。