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ロードスターキャピタルは24年12月期大幅増収増益・増配予想
- 2024/9/18 09:27
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ロードスターキャピタル<3482>(東証プライム)は、不動産投資領域のコーポレートファンディング事業(オフィスビル等を対象とする不動産投資・賃貸)とアセットマネジメント事業、およびFintech領域の不動産特化型クラウドファンディング事業を展開している。24年12月期は大幅増収増益、そして大幅増配予想としている。下期も大型オフィスビル売却を決済済、アセットマネジメント事業の複数案件の受託契約を締結済である。ひらまつ<2764>から取得したリゾートホテル6物件も寄与する見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調であり、25年12月期からスタートする次期中期経営計画の成長戦略にも期待が高まるだろう。株価は地合い悪化も影響して上値を切り下げる形となったが、高配当利回りも評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。
■不動産投資領域とFintech領域に事業展開
同社は、ミッションに「不動産とテクノロジーの融合が未来のマーケットを切り開く」を掲げ、不動産投資領域のコーポレートファンディング事業(オフィスビル等を対象とする不動産投資・賃貸)とアセットマネジメント事業、およびFintech領域の不動産特化型クラウドファンディング事業を展開している。
23年12月期末時点でグループは同社、連結子会社のロードスターインベストメンツ、ロードスターファンディングの3社で構成されている。なお24年6月にLD1合同会社を連結子会社とした。不動産・IT・バックオフィスの各領域で実務経験豊富な人材が多数在籍し、不動産投資の専門性とIT技術の融合を強みとするプロフェッショナル集団である。
24年12月期第2四半期累計の事業別売上高構成比は、コーポレートファンディング事業の不動産投資が84%、コーポレートファンディング事業の不動産賃貸が9%、アセットマネジメント事業が5%、クラウドファンディング事業が2%、その他事業が0%だった。なお収益特性として、四半期別の売上高と利益は不動産投資物件売却等によって変動する可能性があり、不動産賃貸利益率は大型リニューアル工事の有無で変動する可能性がある。
■コーポレートファンディング事業
コーポレートファンディング事業は、自己資金によるオフィスビル等への不動産投資および不動産賃貸を展開している。バリューアップ余地のある中規模オフィスビル等を取得し、改修工事や適切なリーシング(空室へのテナント誘致、周辺賃料に比した適正賃料への契約改定など)を行うことよって、稼働率の向上、収益性の向上、管理コストの低減を図り、物件価値を高める。取得したオフィスビル等は賃貸によって運用するほか、マーケットの状況を鑑みながら売却する。
主な投資対象は、東京23区内の数億円から数十億円程度の中規模オフィスビルのうち、稼働率が低い物件、管理が適切に行われていない物件、権利関係が複雑な物件などである。中規模ビルは資金力や費用対効果の面で富裕層やREIT等との競争が起きにくい一方で、特に事業会社保有の場合はバリューアップ余地が大きいという面もある。こうした物件のバリューアップに、同社の強みである20年超の不動産投資業界の経験とネットワークが活かされる。24年12月期第2四半期末時点の売却累計物件数は69物件で、トラックレコードとして物件売却に伴う利益率(諸経費・減価償却費を除くベースの「売却価格/仕入価格」)は、概ね150%前後という高い水準で推移している。
さらに、市場の流動性と効率的な物件の運営を意識し、投資対象とする物件規模の引き上げも推進している。平均物件取得単価は22年12月期が22.2億円、23年12月期が30.2億円、24年12月期中間期が41.6億円と増加している。
24年12月期第2四半期末時点の代表的な自社保有物件には、CORNES HOUSE Ⅱ(建築時期01年4月、取得時期16年4月、店舗・事務所・駐車場等の複合ビル)、グレイス麹町(建築時期21年12月、取得時期23年5月、店舗・事務所ビル)、目黒ヴィラガーデン(建築時期92年2月、取得時期21年12月、事務所ビル)などがある。
また、投資対象として従来はオフィスビルを中心としていたが、近年はインバウンド需要回復等に対応するためホテルの取得も強化している。24年7月には、ひらまつ<2764>およびNTT都市開発より、ひらまつが運営するリゾートホテル6件を取得(ひらまつに運営委託)し、当該物件を取得するために組成したLD1合同会社を連結子会社とした。
■アセットマネジメント事業
アセットマネジメント事業は子会社のロードスターインベストメンツが、主に機関投資家向けに、投資用不動産の取得から管理・売却に至るまでの戦略策定に関するアドバイスや、投資用不動産を運用するアセットマネジメントを行い、AUM(受託資産残高)に応じたアセットマネジメント報酬を得る。なお23年12月期末時点のAUMは前期末比25%増の1000億円だった。
また、コーポレートファンディング事業における自社保有物件を売却し、売却先からアセットマネジメント業務を受託して継続的なアセット収益も確保するという、コーポレートファンディング事業とのシナジーも創出している。
24年12月期第2四半期末時点の代表的な受託物件には、プライム銀座通りビル(受託時期22年2月、複合ビル)、蒲田プライム(受託時期21年12月、店舗・事務所・駐車場等の複合ビル)、プライム新横浜ビル(受託時期23年6月、店舗・事務所・駐車場等の複合ビル)などがある。
■クラウドファンディング事業
クラウドファンディング事業は、不動産特化型クラウドファンディングのプラットフォームとしてOwnersBook(オーナーズブック)を運営している。OwnersBookは、インターネット上で一口1万円からの資金で不動産投資を行うことを可能にした資産運用サービスである。14年9月に国内初の不動産特化型クラウドファンディングとしてサービス開始し、24年9月にはサービス開始10周年に合わせて複数のキャンペーンを開催している。
OwnersBookには貸付型とエクイティ型という2種類の商品がある。同社は貸付型を主力としているが、今後はエクイティ型の展開にも力を入れたいとしている。
貸付型商品は、子会社のロードスターインベストメンツが投資家会員から集めた資金を原資として、子会社のロードスターファンディングが法人(不動産保有会社)向けに不動産担保融資を行っている。貸付先から手数料を受領するほか、利息の支払や元本の返済を受け、投資家会員に利息の配当と元本の返還を行う。
エクイティ型商品は、投資家会員から特別目的会社(SPC)のエクイティ部分への出資を受け、当該SPCが不動産信託受益権等を取得・運用し、不動産の賃貸収益や売却収益等を配当として投資家会員に還元する。ロードスターインベストメンツは当該出資金の募集に際して手数料を受領するほか、ロードスターインベストメンツがアセットマネージャーとして関与する場合はアセットマネジメント報酬を得る。
24年12月期第2四半期末時点で、OwnersBook累計投資額は約510億円、投資家会員数は2万8078名、実行済案件数は323件、実績年利回りは約3.3%~5.6%となっている。24年4月にはOwnersBookの累計配当総額が20億円を突破した。また1案件当たりの投資実行額は増加基調である。投資家会員数については、22年12月期末以降は概ね横ばいでの推移となっているが、この背景には、近年は新規会員獲得よりも既存会員の満足度を高めることに注力していることなどがある。
■中期経営計画(22年12月期~24年12月期)
中期経営計画(22年12月期~24年12月期)では目標数値に、24年12月期の売上高300億円、税前利益100億円、ROE30%以上、配当性向15%以上、自己保有資産残高750億円、AUM2000億円、OwnersBook投資額200億円(21年12月期実績は売上高179億円、税前利益50億円、ROE32%、配当性向15%、自己保有資産残高420億円、AUM290億円、OwnersBook投資額76億円)を掲げている。なお配当については、21年12月期までは配当性向15%、22年12月期以降は配当性向17%を目安として配当を行っている。
基本方針には「コーポレートファンディング事業を経営基盤とし、アセットマネジメント事業とクラウドファンディング事業の規模拡大による企業価値向上を目指す」を掲げ、重点事業戦略は自己保有資産残高の積み上げ、アセットマネジメント事業におけるAUM拡大、OwnersBook案件の多様化および積み上げ、ESGへの取組強化としている。
自己保有資産残高の積み上げについては、将来の収益基盤となる不動産に年400億円前後(計画策定時の200億円から上方修正)の投資を継続し、不動産賃貸による利益でグループの固定費を賄うべく、自己保有資産残高を24年12月期末時点で750億円程度(帳簿価格ベース)まで積み上げる。都内の中規模オフィスビルを中心に、ホテル、物流施設、再開発案件などにもチャンスがあれば参入していく。
アセットマネジメント事業におけるAUM拡大については、国内投資家の東京の不動産需要が高い状況が続いているため、年間数百億円のAUM積み上げを図り、24年12月末時点でAUM2000億円を目指す。
クラウドファンディング事業のOwnersBook案件の多様化および積み上げについては、多様化する個人投資家ニーズに対応して案件の大型化、株主優待案件や抽選型案件の拡充、ノンリコース型や金利入札案件など、商品の多様化を推進するとともに、投資家に過度なリスクを負担させないことを優先し、マーケット状況を見定めながら事業拡大を図る。エクイティ型商品については個人投資家向けファンドの組成を推進し、自社投資物件のファンドへの売却、さらにオープンエンドファンド(発行者が証券の買い戻しを保証しているファンドで、いつでも換金可能な特徴を持つ)や、STO(Security Token Offering)を用いたファンドの組成なども推進する方針だ。
ESGへの取組強化では、24年までに自社保有物件を再生可能エネルギーに切り替えること(テナント都合などにより同社主導で切り替えできない物件を除く)を目指すほか、健康経営の推進、コンプライアンス体制の強化などに取り組む。なお24年2月には、経済産業省が定めるDX認定制度に基づく「DX認定事業者」に認定された。
■24年12月期大幅増収増益予想
24年12月期連結業績予想については、売上高が前期比31.1%増の376億58百万円、営業利益が40.2%増の115億67百万円、経常利益が40.7%増の104億90百万円、親会社株主帰属当期純利益が41.2%増の68億95百万円としている。配当予想は前期比17円50銭増配の70円(期末一括)としている。配当性向は16.7%となる。
第2四半期累計(中間期)は、売上高が前年同期比4.6%増の152億12百万円、営業利益が13.1%増の48億70百万円、経常利益が28.6%増の47億07百万円、税前利益が24.0%増の43億39百万円、親会社株主帰属中間純利益が24.0%増の29億55百万円だった。
全事業が好調に推移し、不動産賃貸の利益率改善なども寄与して大幅増益だった。事業別売上高はコーポレートファンディング事業の不動産投資が前年同期比0.1%増の128億20百万円、不動産賃貸が11.8%増の13億58百万円、アセットマネジメント事業が169.8%増の7億14百万円、クラウドファンディング事業が28.4%増の3億06百万円、その他事業が96.6%増の12百万円だった。営業外では、金利スワップ契約に関するデリバティブ評価損益が差引4億49百万円改善(前年同期は評価損2億46百万円計上、当期は評価益2億03百万円を計上)した。特別損失には、ひらまつが運営するホテル6件の売買に関連して取得したひらまつ株の株価下落等により、投資有価証券評価損1億25百万円を計上した。
コーポレートファンディング事業の不動産投資における販売用不動産は取得が4物件、売却が4物件で、期末時点の保有物件数は19物件(オフィスビル13物件、商業施設1物件、住宅1物件、ホテル4物件)となり、帳簿価格ベース期末残高は19件合計で23年12月期末比14.2%増の629億44百万円となった。不動産賃貸では、同社4件目となるビジネスホテル(ホテルリブマックス新宿歌舞伎町、建築時期19年8月)を取得し、ホテル賃貸収益が計画を上回った。また大規模リニューアル工事が減少したため、賃貸利益率が大幅に改善(前年同期は33.0%、当期は49.3%)した。
アセットマネジメント事業のAUMは1000億円だった。複数物件の新規受託と売却により23年12月期末比横ばいだったが、売上面は大幅増収となった。なお下期にも複数の案件受託が予定されている。
クラウドファンディング事業では案件組成が順調に推移し、匿名組合出資預り金は23年12月期末比22.9%増の100億95百万円、営業貸付金は34.9%増の93億54百万円となった。また投資金額は前年同期比19億円増の66億円だった。投資家会員数は2万8078人で23年12月期末比横ばいだったが、数億円の案件も数分で募集完了するなど需要は非常に高い状態が続いている。
なお全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が81億68百万円で営業利益が26億41百万円、第2四半期は売上高が70億44百万円で営業利益が22億29百万円だった。
通期予想は据え置いている。各事業とも伸長して大幅増収増益予想としている。中間期の進捗率は売上高40.4%、営業利益42.1%、税前利益43.0%、当期純利益42.9%とやや低水準の形だが、下期もコーポレートファンディング事業では24年8月に大型オフィスビル1物件(東京都千代田区、利益総額は23年12月期営業利益の30%相当額以上、24年12月期業績予想に織り込み済)を決済済、24年10月にもオフィスビル1物件(東京都新宿区、売却価格は23年12月期連結売上高の10%相当額以上、24年12月期業績予想に織り込み済)を決済予定、アセットマネジメント事業では複数案件の受託契約を締結済である。また24年7月にひらまつから取得したリゾートホテル6物件も寄与する見込みだ。
積極的な事業展開で収益拡大基調であり、25年12月期からスタートする次期中期経営計画の成長戦略にも期待が高まるだろう。
■株主優待制度は毎年6月末と12月末の年2回
株主優待制度(詳細は会社HP参照)は、毎年6月30日および12月31日時点で1000株以上かつ半年以上継続保有した株主を対象に、OwnersBookの株主優待用投資枠(有効期間半年)を提供する。
■株価は調整一巡
24年8月には、JPX総研と日本経済新聞社が共同で算出する「JPX日経中小型株指数」の24年度(24年8月30日~25年8月28日)の構成銘柄に選定された。20年度より5年連続の選定である。
株価は地合い悪化も影響して上値を切り下げる形となったが、高配当利回りも評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。9月17日の終値は2287円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS419円10銭で算出)は約5倍、今期予想配当利回り(会社予想の70円で算出)は約3.1%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1152円48銭で算出)は約2.0倍、時価総額は約490億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)