イトーキ中央研究所、10年後のオフィスとモノづくりに関するビジョンを発表、3Dプリンターで実現する循環型オフィス空間
- 2024/9/26 17:01
- プレスリリース
■慶應義塾大学KGRI環デザイン&デジタルマニュファクチャリング創造センターと共同で、3Dプリンターを活用したサステナブルな次世代オフィス家具のプロトタイプモデル披露
イトーキ<7972>(東証プライム)の中央研究所は9月26日、10年後を見据えたオフィスとモノづくりのビジョンを発表した。また、慶應義塾大学KGRI環デザイン&デジタルマニュファクチャリング創造センターと共同で、3Dプリンターを活用したビジョン実現のためのサステナブルな次世代オフィス家具のプロトタイプモデルを発表した。
■イトーキ中央研究所とは
オフィスとオフィス家具づくりに今後訪れる課題に長期的視点で取り組むため、2023年1月にイトーキに新設された組織である。空間デザイン、プロダクトデザイン、開発設計、樹脂材料、3DCADなどの専門人材が所属し、10年後の働き方を見据えたオフィスとオフィス家具のあり方、素材、設計手法、生産技術に関するリサーチを行っている。
■中央研究所が考える“オフィスとモノづくりの現状と課題”
働き方の多様化やビジネス環境の急速な変化に伴い、多くの企業がオフィスのあり方や最適化について模索するなか、より良いオフィス環境が従業員エンゲージメント向上や人材確保に寄与することが明らかになっている。企業の成長に合わせて常にオフィス環境を改善していくことは、今後のオフィスづくりの要点になるだろう。同時に、頻繁な移転や改装はコスト面の負荷や廃棄物問題など環境面への負荷も考慮しなければならず、今後一層経営の課題として複雑性・重要性を増やしていくものと考えられる。
一方、オフィスはデザイン面でも様変わりしており、多種多様なアイテムが使われるようになった。オフィス家具も多品種を少量で供給するケースが増えつつあり、数に頼る生産以外の選択肢も見つけていく必要がある。
オフィスとモノづくり、中央研究所ではこの二つの視点から課題を設定し解決策を探求している。
■中央研究所5つの研究テーマと長期ビジョン「CENTRAL Lab.の世界線」
変化し続けるオフィスとそこで使われるオフィス家具のあり方について、長期的な視点で中央研究所が探求するテーマは以下の5つである。
1)流動的オフィス
オフィスは常に変化するようになると仮定し、合理的なオフィスづくりの手法を探求する
2)プラスチックリサイクル
オフィス家具に活用できる独自のマテリアルリサイクル手法を探求する
3)パラメトリックデザイン
コンピューターを駆使して斬新なデザインを描き出す手法を探求する
4)アディティブマニュファクチャリング※
3Dプリンターによる造形をオフィス家具に応用する技術を探求する
※材料を「積層」または「付加」することでさまざまな形状の製品を製造する手法
5)使用状態可視化
IoT技術によりオフィス家具の使用状態を把握し循環型のユーザー体験を作り出す
上記5つの研究テーマを単体ではなくひとつのビジョンに紡ぎ出し、全く新しい循環モデルとしての確立を目指している。
■イトーキ中央研究所ビジョン「CENTRAL Lab.の世界線」
具体的には、より柔軟に変化するオフィスに対応するため、コンピューターによるデザインと3Dプリンターを駆使して数に頼らない生産を実現する。また、プラスチックパーツは使用状態を可視化することで短いサイクルで回収し、独自のリサイクル手法を確立してプラスチックごみ問題に貢献する。
■慶應義塾大学KGRI環デザイン&デジタルマニュファクチャリング創造センターと共同で、次世代オフィス家具のプロトタイプモデルを製作
今回、上記ビジョン実現に向け、日本のデジタルファブリケーション界を牽引する慶應義塾大学KGRI環デザイン&デジタルマニュファクチャリング創造センターセンター長 環境情報学部教授の田中浩也氏、慶応義塾大学政策・メディア研究科(SFC)特任講師の湯浅亮平氏に参画いただき、次世代オフィス家具のプロトタイプモデルを製作した。本プロトタイプモデルは、鎌倉にある同センターの拠点「リサイクリエーション慶應鎌倉ラボ」の大型3Dプリンターを活用し工夫を重ね、以下を特徴とした流動的オフィス向けワークテーブルとして完成した。
特徴(1):従来比約50%の重量で動かしやすい
従来のオフィス家具の天板の定番仕様は、木製芯材にメラミン化粧板を貼り、樹脂をエッジ部分に巻くというものである。極めて汎用性に優れた仕様であるが、頻繁にレイアウトを変更して部屋を変化させるためには重すぎると考えた。このワークテーブルでは重量を約50%に抑え、非力な人がひとりでも動かしやすくした。
特徴(2):モノマテリアルを実現した天板
木製芯材とメラミン化粧板、樹脂エッジの仕様は分解が容易ではあらない。今回のワークテーブルでは、天板を全て単一のプラスチック素材(ポリプロピレン)にし、使用後の分解を飛躍的に容易にした。
特徴(3):3Dプリンターによる造形
市販のポリプロピレン板を活用した天板本体にエッジと枠部分を直接3Dプリンターで出力している。造形しやすくカラー展開も可能な樹脂材のレシピを独自開発した。
特徴(4):コンピューターにより生成された形状
天板裏面の強度補強パーツを3Dプリンターで出力している。形状の検討に当たっては、最新の3DCADでジェネレイティブ・デザイン(最適な形状をコンピューターに生成させる)を活用した。
特徴(5):負荷を測定し使用状態を可視化
天板裏面にセンサーチップを設置し、天板にかかる圧力を常時計測している。クラウドにデータを送信することで使用状態が把握でき、交換・再生時期を明示する。
イトーキ中央研究所は、2030年の実用化に向けた技術確立を目指し研究開発を進めるとともに、オフィスとモノづくりを通して持続可能な社会実現に貢献していくとしている。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)