巴工業は戻り試す、24年10月期は再上振れの可能性、積極的な事業展開で収益拡大基調

 巴工業<6309>(東証プライム)は遠心分離機械などの機械製造販売事業、合成樹脂などの化学工業製品販売事業を展開している。成長戦略として海外事業拡大、収益性向上、SDGsや脱炭素、迅速な意思決定と効率的な営業活動に繋がるDX、資本効率改善、持続的成長に資する投資などに取り組んでいる。24年10月期は上方修正(6月7日付)して2桁増益予想としている。機械製造販売事業、化学工業製品販売事業とも堅調に推移する見込みだ。3四半期累計が大幅増益となり、進捗率も高水準であることを勘案すれば、通期会社予想は再上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は地合い悪化の影響を受ける場面があったが、その後は反発の動きを強めている。戻りを試す展開を期待したい。

■機械製造販売事業と化学工業製品販売事業を展開

 遠心分離機械などを中心とする機械製造販売事業、および合成樹脂や化学工業薬品などを中心とする化学工業製品販売事業を展開している。22年4月には欧州市場における各種化学工業製品の卸売を展開する100%子会社としてTOMOE Advanced Materils s.r.o.を設立した。24年9月にはインド駐在員事務所を開設した。一方で、事業ポートフォリオ見直しとして24年2月に巴ワイン・アンド・スピリッツ(TWS社)の全株式を売却した。

 23年10月期のセグメント別業績は、機械製造販売事業の売上高が130億41百万円で営業利益が8億29百万円、化学工業製品販売事業の売上高が365億87百万円で営業利益が32億18百万円だった。

 機械製造販売事業の売上高の内訳は、分野別には官需が45億86百万円、民需が29億32百万円、海外が55億22百万円、製品別には機械が44億11百万円、装置・工事が11億52百万円、部品・修理が74億77百万円だった。化学工業製品販売事業の製品別売上高は合成樹脂関連が52億98百万円、工業材料関連が57億38百万円、鉱産関連が56億30百万円、化成品関連が85億73百万円、機能材料関連が61億90百万円、電子材料関連が49億10百万円、その他(洋酒)が2億46百万円だった。

 収益面の特性として、機械製造販売事業は設備投資関連のため、第2四半期(2月~4月)および第4四半期(8月~10月)の構成比が高い傾向がある。

 なお24年3月には、三菱化工機<6331>とのJVで沖縄県名護市より、し尿受入施設整備事業建設工事(契約金額12億89百万円、工期23年12月~25年12月)を受注した。

■中期経営計画最終年度目標を上方修正

 持続的な成長と中長期的な企業価値向上を図るため、23年12月に資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応方針を決議するとともに、中期経営計画の最終年度業績目標値の上方修正、配当方針の変更と配当予想の上方修正、および株主優待制度の変更を発表した。

 中期経営計画「For Sustainable Future ~持続可能な未来のために~」で掲げた最終年度25年10月期の目標値を、初年度23年10月期にほぼ達成したため、上方修正した新たな目標値に25年10月期売上高540億円(機械事業150億円、化学品事業390億円)、経常利益44億円、当期純利益31億円、ROE8.0%を掲げ、PBR1倍の達成を目指すとした。

 現行の中期経営計画で取り組んでいる重点施策(機械事業での生産改革推進による採算性向上、海外事業の拡大、再生エネルギー分野への展開など、化学品事業での海外事業の拡大、新たなサプライヤーの発掘、パワー半導体分野への商材提供など、全社ベースでのDX推進、資本効率の改善、持続的成長に資する分野への投資・経営資源投入など)に加えて、新たな重点施策(成長戦略)として、化学品事業ではEV用等で世界的需要が拡大しているパワーデバイス市場での商権確立、ライフサイエンス分野等の新規事業立ち上げ、機械事業では海外展開の拡大(東南アジア全体のネットワーク化)、第2の柱とすべくバイナリー発電装置の販売、第3の柱となる海外製品の探索・販売権確保などを推進する。

 株主還元については、新たな配当方針として「配当性向40%以上を目標として安定的な配当を実施」を打ち出し、23年10月期の配当を大幅に上方修正した。さらに24年10月期も大幅増配予想とした。株主優待制度については、対象株主を「継続して1年以上保有する株主」に変更するとともに、優待区分を保有株式「100株以上300株未満」および「300株以上」とした。

 またIR活動の強化については、23年11月にIR・SR活動を担うIR推進PT(プロジェクトチーム)を設置し、取り組みを強化するための体制を整備した。そして24年4月には経営企画部内にIR・企画課を新設した。

 サステナビリティ経営に関しては、22年4月に、脱炭素・循環型社会の実現に向けて、主力のサガミ工場(神奈川県大和市)で使用する電力を100%再生可能エネルギー由来の電力に切り替えている。

■24年10月期3Q累計大幅増益、通期は再上振れの可能性

 24年10月期の連結業績予想(6月7日付で上方修正)は、売上高が23年10月期比6.3%増の527億80百万円、営業利益が12.2%増の45億40百万円、経常利益が11.8%増の46億円、親会社株主帰属当期純利益が14.5%増の31億30百万円としている。配当予想(6月7日付で第2四半期末3円、期末3円、合計6円上方修正)は、23年10月期比16円増配の126円(第2四半期末63円、期末63円)としている。予想配当性向は40.2%となる。

 第3四半期累計の連結業績は、売上高が前年同期比11.1%増の398億円、営業利益が34.0%増の38億69百万円、経常利益が34.9%増の39億40百万円、親会社株主帰属四半期純利益が41.0%増の28億円だった。機械製造販売事業が大幅伸長し、化学工業製品販売事業も堅調に推移した。

 機械製造販売事業は売上高が18.2%増の94億16百万円、営業利益が4.7倍の11億09百万円だった。大幅増収増益だった。売上高の内訳は、需要先別には官需が20.2%増の35億05百万円、民需が46.0%増の25億43百万円、海外が1.9%増の33億67百万円で、製品別には機械が3.6%増の20億89百万円、装置・工事が64.1%増の11億73百万円、部品・修理が17.6%増の61億52百万円だった。増収効果に加え、収益性の高い部品・修理の伸長も寄与した。

 化学工業製品販売事業は、売上高が9.1%増の303億84百万円、営業利益が4.0%増の27億59百万円だった。製品別売上高は、合成樹脂関連が2.5%減の38億57百万円、工業材料関連が建材・耐火物用途材料の好調で16.5%増の50億16百万円、鉱産関連が自動車・電子デバイス用途材料の好調で12.8%増の48億39百万円、化成品関連がコーティング用途材料の好調で9.3%増の71億05百万円、機能材料関連がパワー半導体をはじめとした半導体製造用途材料の好調で24.3%増の59億23百万円、電子材料関連が半導体組立用途材料の伸び悩みで9.2%減の34億90百万円、その他(洋酒)が22.6%減の1億51百万円だった。

 全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が121億38百万円で営業利益が11億20百万円、第2四半期は売上高が144億42百万円で営業利益が18億38百万円、第3四半期は売上高が132億20百万円で営業利益が9億11百万円だった。

 通期連結業績予想は据え置いている。セグメント別計画は、機械製造販売事業の売上高が7.2%増の139億80百万円で営業利益が37.5%増の11億40百万円、化学工業製品販売事業の売上高が6.0%増の388億円で営業利益が5.6%増の34億円としている。

 機械製造販売事業の売上高の内訳は、需要先別には官需が4.8%増の48億07百万円、民需が29.9%増の38億09百万円、海外が2.8%減の53億65百万円、製品別には機械が23.7%減の33億64百万円、装置・工事が39.8%増の16億11百万円、部品・修理が20.4%増の90億05百万円、化学工業製品販売事業の製品別売上高は合成樹脂関連が20.3%減の42億23百万円、工業材料関連が13.5%増の65億13百万円、鉱産関連が8.0%増の60億81百万円、化成品関連が5.8%増の90億68百万円、機能材料関連が32.8%増の90億68百万円、電子材料関連が7.5%減の45億44百万円、その他(洋酒)が38.6%減の1億51百万円としている。

 3四半期累計が大幅増益となり、通期予想に対する進捗率も売上高75%、営業利益85%、経常利益86%、当期純利益89%と高水準であることを勘案すれば、通期会社予想は再上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株主優待制度(24年10月末より変更)はワインを贈呈

 株主優待制度(23年12月14日付で変更を発表、詳細は会社HP参照)は、毎年10月末日時点で100株以上を継続して1年以上保有する株主を対象として、ワインを贈呈(当社関連会社取扱商品、100株以上300株未満保有株主に対してワイン1本、300株以上保有株主に対してワイン2本)を贈呈する。なお24年10月末日の基準日より実施するが、株主の不利益を軽減するため、24年10月末日の基準日に限り、100株以上を継続して6ヶ月以上保有する株主を対象として実施する。

■株価は戻り試す

 株価は地合い悪化の影響を受ける場面があったが、その後は反発の動きを強めている。戻りを試す展開を期待したい。9月26日の終値は4385円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS313円68銭で算出)は約14倍、今期予想配当利回り(会社予想の126円で算出)は約2.9%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS3691円32銭で算出)は約1.2倍、そして時価総額は約462億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■「7月生まれベビーの名付けトレンド」調査結果発表  ベビーカレンダー<7363>(東証グロース)…
  2. ■2021年にデビューし、累計販売台数10万台を突破  IKホールディングス<2722>(東証プラ…
  3. 【先人の教えを格言で解説!】 (犬丸正寛=株式評論家・平成28年:2016年)没・享年72歳。生前に…
2024年9月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30  

ピックアップ記事

  1. ■自民党と立憲民主党の代表選挙が地方創生関連株を刺激  地方創生関連株は、自民党と立憲民主党の代表…
  2. ■政局風が吹く10月相場を前にアピール合戦の激化に備えて地方創生関連株も待機チャンス  2024年…
  3. ■アメリカ大統領選挙と利下げ効果、住宅関連銘柄に期待高まる  住宅関連株は厳しい経営環境にもかかわ…
  4. ■歴史は繰り返すのか?上方修正相次ぐ住宅関連株に再び脚光、今後の相場を占う  「歴史は繰返さないが…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る