■2024年度上半期163件で過去最多更新
人手不足による倒産が急増している。帝国データバンクの調査によると、2024年度上半期(4-9月)の人手不足倒産は163件に達し、年度として過去最多を記録した2023年度をさらに上回るペースで増加している。従業員の退職や採用難、人件費高騰などが主な原因である。就業者数の増加や有効求人倍率の上昇に歯止めがかかるなど、統計上は人手不足が落ち着いたようにみえるが、実態は深刻さを増している。
■建設・物流業を中心に急増、小規模事業者への影響大
業種別では、建設業が55件、物流業が19件と高水準が続き、両業種で全体の45.4%を占めている。これらの業種は「2024年問題」の対象となっており、約7割の企業が人手不足を感じている。また、飲食店では前年同期の2件から9件へと大幅に増加した。全業種を通じて、従業員数10名未満の小規模事業者が多くを占めている点も特徴的である。
人手不足倒産の背景には、賃上げ機運の高まりによる労働市場の流動化がある。特に、労働条件が厳しい小規模事業者を中心に影響が大きい。企業の人手不足感は高止まりしており、今後も人手不足倒産は高水準で推移すると予測されている。
一方で、改善の兆しもみられる。人材の確保・定着に不可欠な賃上げ原資の確保に向けて、価格転嫁が徐々に進んでいる。特に物流業では、2022年12月時点で全体と20ポイント近く差があったが、その差は縮まりつつある。今後は、価格転嫁の改善による賃上げと労働環境の改善が、人手不足解消の鍵を握るだろう。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)