ヒーハイストは急伸、25年3月期黒字予想、需要回復・生産増強・価格改定効果を見込む

 ヒーハイスト<6433>(東証スタンダード)は小径リニアボールブッシュの世界トップメーカーである。工作機械や半導体製造装置等に使用される直動機器を主力として、精密部品加工やユニット製品も展開している。成長戦略として自動化関連の需要増加に対応するため、直動機器の「スマート生産プロジェクト」の一環とする設備投資や開発投資を推進している。25年3月期は増収・黒字予想としている。需要回復、生産増強、価格改定などの効果を見込んでいる。中長期的に半導体製造装置関連などで直動機器の需要拡大が予想され、積極的な事業展開で収益回復基調だろう。株価は急伸して安値圏でのモミ合いから上放れの動きを強めている。1倍割れの低PBRも評価材料であり、出直りを期待したい。

■小径リニアボールブッシュの世界トップメーカー

 小径リニアボールブッシュの世界トップメーカーで、20年7月に商号をヒーハイスト精工から現在のヒーハイストに変更した。リニアボールブッシュは機械装置の稼働部に用いられる部品で、金属と金属の接触面を鋼球が転がりながら移動することで摩擦による影響を低減し、機械装置の寿命を延ばす役割を担っている。

 独自の球面加工技術や鏡面加工技術をコア技術として、工作機械や半導体製造装置等に使用されるリニアボールブッシュや球面軸受けなどの直動機器、レース用部品や試作部品の受託加工などの精密部品加工、液晶製造装置向けなどのユニット製品を展開している。直動機器の「スマート生産プロジェクト」の一環とする設備投資や開発投資を推進し、23年5月には埼玉工場の新工場A棟が稼働開始した。

 24年3月期の品目別売上高は、直動機器が生産力強化やタイムリーな納品対応により4.3%増の15億91百万円、精密部品加工がレース用部品の減少で21.4%減の5億29百万円、ユニット製品が設備投資関連の需要回復遅れで11.7%減の1億88百万円だった。主要販売先はTHK<6481>および本田技研工業<7267>である。収益面では産業機械・電子部品・自動車関連の設備投資動向の影響を受けやすく、設備投資関連のため四半期業績が変動しやすい特性もある。

■生産能力向上と採算性向上を推進

 経営ビジョンには「リニアブッシュ・アジアNO.1」を掲げ、成長に向けた基本戦略としては、フランジ増産および拡販によるシェア拡大を目指し、直動機器の「スマート生産プロジェクト」の一環とする設備投資や開発投資を推進している。

 事業別成長戦略としては、直動機器についてはスマート生産プロジェクトによる安定生産・原価低減、市場シェアの低い形番の生産増強によるシェア拡大、新製品(LMHB)の原価低減と販売数増加、システム化による納期対応強化、設備投資ピークアウト・減価償却費減少やコスト削減による利益率向上などを推進する。精密部品加工についてはホンダグループのモータースポーツ参戦のレース用部品供給継続によって収益を確保する。ユニット製品については仕様標準化による設計効率化、新製品NAF HWシリーズの拡販・ラインナップ拡充、海外市場への展開などを推進する。

 23年11月には、内閣府・中小企業庁並びに埼玉県などが推進する「未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」の趣旨に賛同し、パートナーシップ構築宣言を公表した。23年12月には本社・埼玉工場のA棟建屋等に太陽光発電設備を設置した。

 24年4月には、世界に通用するドライバーの育成を目指しているホンダ・フォーミュラ・ドリーム・プロジェクト(HFDP)を支援し、HFDP with B―Max Racing Teamを応援すると発表した。また24年4月には、人的資本経営の取り組みの一環および株式市場での流動性向上を図ることを目的として、社員持株会の奨励金付与率を現行の5%から50%に引き上げると発表した。さらに社会貢献への取り組みの一環として、特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパンのチャイルド・スポンサーシップを通じて国際協力活動を支援すると発表した。

 24年6月には企業の社会的責任(CSR)に対する取り組みを強化するため「ヒーハイストCSR活動方針」を策定した。24年8月には埼玉県の多様な働き方実践企業におけるプラチナランクの認証を受け、24年9月には埼玉県の多様な働き方実践企業におけるプラチナ認定企業紹介に同社の紹介が掲載された。

■資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応

 23年3月末時点において流通株式時価総額がスタンダード市場の上場維持基準に適合しない状況となったため、23年6月27日付で上場維持基準適合に向けた計画書を作成・開示した。

 25年3月末までを計画期間として、中期経営計画で掲げた基本戦略および事業別成長戦略の着実な実行によって業績の向上を図るとともに、ESG経営、株主還元、IR活動も強化して企業価値の向上(株価上昇による時価総額向上)を図り、上場維持基準の適合を目指す方針としている。そして24年6月には計画の進捗状況をリリースした。24年3月末時点で流通株式時価総額がスタンダード市場の上場維持基準に適合していないが、引き続き各種取組を進めていくとしている。

 なお23年12月には「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」について、改善に向けた方針を決議・公表している。引き続き中期経営計画で掲げた重点施策の着実な遂行による業績の拡大、ROEの向上、生産・人的資本など成長投資の継続、株主還元の強化、IR活動の充実などを推進して企業価値の向上を目指すとしている。株主還元については27年3月期までに配当性向20~30%に強化する方針としている。

■25年3月期増収・黒字予想

 25年3月期の連結業績予想は、売上高が24年3月期比6.2%増の24億52百万円、営業利益が23百万円(24年3月期は1億58百万円の損失)、経常利益が16百万円(同1億56百万円の損失)、そして親会社株主帰属当期純利益が12百万円(同2億21百万円の損失)としている。配当予想部については24年3月期と同額の1円(期末一括、普通配当)としている。予想配当性向は48.2%となる。

 第1四半期は、売上高が前年同期比2.6%増の5億20百万円、営業利益が54百万円の損失(前年同期は64百万円の損失)、経常利益が52百万円の損失(同62百万円の利益)、親会社株主帰属四半期純利益が38百万円の損失(同42百万円の損失)だった。

 固定費の増加に加え、売上製品の採算性低下も影響して赤字だった。部門別売上高は、直動機器が中国市場の受注停滞の影響などで13.0%減の3億58百万円、精密部品加工がレース用部品の増加で107.0%増の1億18百万円、ユニット製品が半導体製造装置向けの増加で12.7%増の43百万円だった。

 通期連結業績予想は据え置いている。第1四半期は赤字だったが、通期ベースでは需要回復、生産増強、価格改定などの効果を見込んでいる。自動化関連の需要拡大に向けて強化した生産設備の生産能力を生かした直動機器のスマート生産を実施し、生産の増強および販売の拡大を図る方針としている。

 品目別売上高の計画は直動機器が0.8%増の16億05百万円、精密部品加工が9.5%増の5億80百万円、ユニット製品が41.5%増の2億67百万円としている。また営業利益+1億81百万円の増減分析は販売数量増加で+68百万円、価格改定効果で+70百万円、販管費減少で+20百万円、為替影響で+18百万円、その他で+5百万円の見込みとしている。

 中長期的に半導体製造装置関連などで直動機器の需要拡大が予想され、積極的な事業展開で収益回復基調だろう。

■株価は急伸

 株価は急伸して安値圏でのモミ合いから上放れの動きを強めている。1倍割れの低PBRも評価材料であり、出直りを期待したい。10月9日の終値は262円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS2円07銭で算出)は約127倍、今期予想配当利回り(会社予想の1円で算出)は約0.4%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS483円88銭で算出)は約0.5倍、そして時価総額は約17億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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