【小倉正男の経済羅針盤】中国版『喪失の時代』は長期化が不可避、潰れるしかない中国のバブル

日本 中国 アメリカ

小倉正男の経済羅針盤バブルとおできは大きくなると潰れる。中国のバブルも膨らんだおできと同じで、どうやっても潰れるしかない。

中国の7~9月期のGDPが6.9%と発表された。ついに7%を割り込んだわけだが、6.9%ならそう悪くはないのではないかという声もある。株価も「ひと安心」と上昇してみせた。

ただし、よいも悪いもない、数字そのものが信用できる代物ではない、という見方が前提としてある。適当な数字を出していると思っていなければならない。

中国は、さらに金利を下げて、同時に金利自由化に踏み切った。
金利を下げても、雇用や所得が増える、あるいは重要が起こる状況ではない。金利自由化も「改革」とはいえるが、需要が極端に低迷しているいまでは意味は低下している。

中国の場合は、妙な表現だがシャドウバンキングが金利自由化を担ってきた。
銀行は、国有企業などにしか融資しない。シャドウバンキングは、高い金利で一般企業や個人に融資してきた。そのカネが土地や株などの投資に向けられていったわけである。金利自由化は、そうした実体に追随したものということになる。

■全治30年~50年=中国経済は長期低迷・苦難に突入

バブルというものは、土地でも株でも、「これは絶対に儲かる」とみんなが思い込んで買うときに勃発する。中国はお国がかりでバブルを奨励したようなものだから、バブルは全員参加型である。

みんなが買えば、次に買う人がいなくなる。買う人がいなくなれば、買った人が売る人に変わる――。

バブル崩壊とは、売る人ばかりになった状態のことである。

いまの中国がまさのそれである。おカネはどんどん中国から逃げている。こうなると人民元の切り下げは不可避というか、価値を維持するのが困難になるのが市場原理だ。

日本のバブル崩壊では、20年以上も「失われた時代」が続いた。中国経済は、今後の30年~50年は「喪失の時代」になるだろう。

中国のバブルは、共産党独裁の中央政府、地方政府がつくった「官製バブル」で無責任というか、責任の所在がない。バブルもごついが、バブル崩壊もごつい、とみておいて間違いない。

■バブルをつくるのが「責任」、バブルは責任なし

日本のバブル崩壊では、名だたる企業が軒並みに「損失隠し」「損失飛ばし」を行った。
責任を取りたくない――。膨大な損失・赤字を出せば、経営責任が生じることになる。会長、相談役などで会社に残れない――。役員退職金にも響く――。ひたすら損失隠しにひた走った。

中国は、中央政府、地方政府といった国が主導したバブルだった。バブルをつくるのが「責任」というか「使命」で、バブルをつくったことへの責任などさらさらない。コミットのベクトル(方向)が違った。

したがって、バブルは巨大化し、崩壊も巨大化し、しかも途方もなく長期間に及ぶことになる。責任がないという体制というか、体質というものが、そうさせる・・・。

中身はともかくGDP世界2位の経済大国・中国は長い苦難に沈むことになる。

中国は「需要創出」で世界経済に貢献したが、今後は世界経済の巨大な不確実性ファクターになる。

(経済ジャーナリスト。『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営』『第四次産業の衝撃』(PHP研究所)など著書多数。東洋経済新報社で編集局記者・編集者、金融証券部長、企業情報部長などを経て現職。)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. 【先人の教えを格言で解説!】 (犬丸正寛=株式評論家・平成28年:2016年)没・享年72歳。生前に…
  2. ■2024年度上半期163件で過去最多更新  人手不足による倒産が急増している。帝国データバンクの…
  3. ■新たなモビリティ社会実現に向けた取り組み加速  トヨタ自動車<7203>(東証プライム)は10月…
2024年11月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

ピックアップ記事

  1. ■化粧品大手は業績下方修正も、電鉄各社は上方修正で活況  トランプ次期大統領の影響を受けない純内需…
  2. どう見るこの相場
    ■金利敏感株の次は円安メリット株?!インバウンド関連株に「トランプ・トレード」ローテーション  米…
  3. ■金利上昇追い風に地銀株が躍進、政策期待も後押し  金利上昇の影響を受けて銀行株、特に地方銀行株の…
  4. ■トリプルセット行、ダブルセット行も相次ぐ地銀銀株は決算プレイで「トランプトレード」へキャッチアップ…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る