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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】朝日ラバーは下値固め完了感、16年3月期収益改善基調
- 2015/10/27 07:56
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
朝日ラバー<5162>(JQS)は自動車内装照明用ゴム製品などを展開している。株価は急伸した9月の戻り高値から反落して調整局面だが、8月の年初来安値まで下押す動きは見られず下値固め完了感を強めている。マイクロ流体デバイス関連に加えて、見やすく疲れにくい自動車内装照明の開発開始に期待感が高まる。16年3月期収益改善基調も評価して出直り展開だろう。
■車載用小型電球・LED照明の光源カラーキャップが主力
自動車内装照明関連などの工業用ゴム製品、スポーツ用ゴム製品(卓球ラケット用ラバー)、医療・衛生用ゴム製品(点滴輸液バッグ用ゴム栓など)、機能製品のRFIDタグ用ゴム製品などを展開している。
自動車内装関連の車載用小型電球の光源カラーキャップ「ASA COLOR LAMPCAP」や車載用LED照明の光源カラーキャップ「ASA COLOR LED」が主力製品である。車載用の「ASA COLOR LED」は高級車向けに加えて、小型車や軽自動車向けにも採用が拡大している。
シリコーンゴムや分子接着技術をベースにした製品開発力が強みだ。新製品では分子接着技術を活用した機能製品RFIDタグ用ゴムの増産を進め、医療分野の新製品プレフィルドシリンジ(薬液充填済み注射器)用ガスケットの量産も開始した。
■マイクロ流体デバイスの生産能力増強で新工場(第2白河工場)建設
NEC<6701>のポータブルDNA解析装置向けマイクロ流体デバイスについては14年10月に量産を開始した。マイクロ流体デバイスは分子接着技術を活用した製品で、NEC向け以外の複数案件も商談が進行中のようだ。
そして15年8月に新工場の建設、補助金収入による特別利益および特別損失の計上を発表した。マイクロ流体デバイスの17年3月期以降の受注状況を踏まえて生産能力を増強するため、またライフサイエンス分野や体外診断用途などの医療分野における新製品開発を行うため、福島県白河市の工業団地「工業の森・新白河」内に所有している当社白河工場の隣接地に、新工場(第2白河工場)を建設する。総投資額は約11億60百万円、15年9月着工予定、16年春竣工予定である。
新工場建設および初期導入の生産設備投資は、マイクロ流体デバイスに関する事業として、福島県の平成27年度福島医療・福祉機器開発・事業化事業費補助金の補助対象事業として採択・交付決定された。交付金額は最大7億50百万円で設備稼働実績後に受領する。
これによって補助金収入を特別利益に計上し、補助金のうち固定資産取得に該当する分について圧縮記帳処理を行い、固定資産圧縮損として特別損失を計上する。現時点では確定した交付金額および交付時期が未定だが、確定次第速やかに公表するとしている。
■見やすく疲れにくい自動車内装照明の開発開始
15年9月には埼玉大学と連携して、色のバラつきが少なく視認性に優れ、疲労低減性のある自動車内装照明用LEDの蛍光体層の共同開発を開始すると発表した。LEDの光を波長変換する蛍光体を組み合わせ、人間工学に基づいて運転者にとって見やすく疲れにくい照明の開発を目指す。
なお、この共同開発は経済産業省の「平成27年度 革新的ものづくり産業創出連携促進事業(戦略的基盤技術高度化支援事業)」として申請し、補助金の採択を受けた。事業期間は15年度から3年間(予定)で、補助金額は3年間で9750万円(予定)としている。
■15年3月期の営業損益悪化は一過性要因も影響
15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)14億85百万円、第2四半期(7月~9月)15億40百万円、第3四半期(10月~12月)15億21百万円、第4四半期(1月~3月)15億13百万円、営業利益は第1四半期55百万円、第2四半期1億01百万円、第3四半期50百万円の赤字、第4四半期8百万円だった。
売上面は概ね順調に推移したが、プロダクトミックスの悪化や役員退職慰労引当金繰入額の計上で期後半の営業損益が悪化したようだ。また15年3月期の配当性向は18.0%だった。ROEは14年3月期比4.4ポイント上昇して9.6%、自己資本比率は同1.3ポイント上昇して39.3%だった。
■16年3月期は大幅営業増益予想で収益改善基調
今期(16年3月期)の連結業績予想については、8月7日に第2四半期累計(4月~9月)の修正(売上高を減額、利益を増額)を発表した。
修正後の第2四半期累計予想は売上高が前年同期比4.8%減の28億80百万円、営業利益が同61.8%減の60百万円、経常利益が同66.3%減の56百万円、純利益が同58.9%減の43百万円としている。
売上面では、車載用LED照明光源カラーキャップ「ASA COLOR LED」が自動車メーカーの生産調整の影響、RFID用ゴム製品が顧客の在庫調整の影響を受けて計画を下回るようだ。ただしマイクロ流体デバイスの増産に向けたコスト増加が想定を下回り、中国子会社の収益が想定を上回ることも寄与して各利益を増額修正した。第2四半期累計の利益予想は減益幅が縮小する見込みだ。
通期の連結業績予想は前回予想(5月12日公表)を据え置いて、売上高が前期比7.9%増の65億40百万円、営業利益が同2.9倍の3億30百万円、経常利益が同2.5倍の3億円、純利益が特別利益の一巡で同42.2%減の1億90百万円としている。配当予想は前期と同額の年間13円(第2四半期末3円、期末10円)で予想配当性向は31.1%となる。
売上面では、期前半は得意先における品質総点検による新車販売の後ろ倒し影響、在庫調整ならびに新規製品への切り替え時期が重なるため、自動車関連製品、機能製品、医療製品とも伸び悩むが、期後半には自動車関連製品の「ASA COLOR LED」やマイクロTAS事業の開発製品の販売が増加する見込みとしている。
第1四半期(4月~6月)は売上高が前年同期比6.0%減の13億96百万円で、営業利益が同52.2%減の26百万円、経常利益が同47.2%減の30百万円、純利益が同31.6%減の24百万円だった。自動車メーカーなど顧客の生産・在庫調整の影響で減収減益だった。
セグメント別動向を見ると、工業用ゴム事業は売上高が同5.2%減の11億22百万円、営業利益(全社費用等調整前)が同57.5%減の59百万円だった。マイクロ流体デバイス関連の増産に向けたコスト負担も影響した。医療・衛生用ゴム事業は売上高が同9.4%減の2億73百万円、営業利益が同5.1倍の20百万円だった。一部製品における品質管理に係るコストが一巡して大幅増益だった。
通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が21.4%、営業利益が7.9%、経常利益が10.0%、純利益が12.6%と低水準だったが、利益面では期後半の増収効果やプロダクトミックス改善効果に加えて、役員退職慰労引当金繰入額計上という特殊要因一巡も寄与する。通期ベースでは増収増益基調だろう。
■中期経営計画で17年3月期営業利益8億円目標
14年5月発表の第11次3ヵ年中期経営計画(V-1計画)では、20年3月期を見据えた長期ビジョンを「AR-2020VISION」として、前半3ヵ年(15年3月期~17年3月期)を第1ステージ「V-1計画」、後半3ヵ年(18年3月期~20年3月期)を第2ステージ「V-2計画」としている。
中期経営方針は、既存事業の質・量の継続的成長(国内事業は質的成長、海外事業は量的成長)、新市場・新分野への事業展開、20年に向けた事業基盤の強化・整備としている。
そして第1ステージ「V-1計画」の目標数値として、17年3月期の売上高80億円(自動車分野37億円、医療分野13億円、ライフサイエンス分野16億50百万円、その他13億50百万円)、営業利益8億円を掲げ、設備投資計画は3期間累計で24億50百万円としている。成長分野への積極投資で中期的に収益拡大基調が期待される。
■株価は下値固め完了感
株価の動きを見ると、急伸した9月1日の戻り高値1234円から反落して調整局面だが、8月25日の年初来安値562円まで下押す動きは見られず、10月以降は概ね800円近辺で推移して下値固め完了感を強めている。
10月26日の終値812円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS41円78銭で算出)は19~20倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間13円で算出)は1.6%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS794円03銭で算出)は1.0倍近辺である。なお時価総額は約38億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線が戻りを押さえる形だが、8月の年初来安値圏まで下押す動きは見られない。下値固めは完了しているようだ。マイクロ流体デバイス関連に加えて、見やすく疲れにくい自動車内装照明の開発開始に期待感が高まる。16年3月期収益改善基調も評価して出直り展開だろう。