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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ジャパンディスプレイは下値固め完了して強基調に転換の可能性
- 2014/12/19 08:34
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
中小型液晶ディスプレイ製造のジャパンディスプレイ<6740>(東1)の株価は、今期(15年3月期)業績見通しの減額修正を嫌気して軟調展開が続いたが、10月中旬~11月中旬の上場来安値圏310円台から切り返して12月18日には前日比42円(10.88%)高の428円まで急伸する場面があった。下値固めが完了して強基調に転換した可能性があり、来期(16年3月期)の収益改善を期待して出直り展開だろう。
ソニーモバイルディスプレイ、東芝モバイルディスプレイ、日立ディスプレイズの3社が統合して12年4月に事業を開始した。モバイル分野(スマートフォン・タブレット)向けを主力として、車載・C&I・その他分野(車載分野、デジタルカメラ分野、医療分野)向けに、高精細・高画質・低消費電力・薄型・軽量の中小型液晶ディスプレイを製造・販売している。
前期(14年3月期)の得意先別売上構成比はアップル向けが約3割を占めた。製造は国内の5拠点と、海外は中国、フィリピン、台湾に展開し、車載向け事業の強化に向けて米デトロイトに新規オフィスを開設している。
競争力の高い技術力と高い生産能力を強みとして、12年6月石川サイト能美工場、13年6月茂原工場の最先端LTPS(低温ポリシリコン)液晶ラインが稼働した。また14年6月には台湾の子会社TDIを通じて、台湾の液晶ディスプレイモジュール製造の中日新科技股份有限公司(STC)を子会社化した。STCが有する中国・珠海市のモジュール製造工場を活用して中国でのビジネス基盤を強化し、中国市場でのシェア拡大を目指す戦略だ。
中期的には中国のスマートフォンメーカーもグローバルブランドを指向しているため、国内外でスマートフォンの高精細ディスプレイ比率の上昇が予想され、高精細WQHD(1440×2560画素)の市場シェア拡大戦略を推進している。モバイル分野に比べて需要変動の小さい車載用でも、カーナビやインパネ関連で高精細ディスプレイの需要増加が予想され、デザインイン拡大の成果で来期(16年3月期)から売上が大幅に増加する見通しだ。
14年6月には高解像度タブレット向け「Pixel Eyes」の量産準備開始(14年秋の量産開始)を発表した。タッチセンサー機能をディスプレイに内蔵する当社独自技術を搭載した製品で、ディスプレイモジュールの薄型・軽量化および透過率向上が実現できるとしている。
7月にはモバイル製品向け「IPS-NEO」の量産を開始した。当社独自の光照射配向プロセスを採用した。10月には新しい駆動方式の高速応答液晶ディスプレイを開発した。車載向けやカメラ向けなど幅広い製品用途への適用が期待され、15年度中の量産確立を目指すとしている。
なお7月には産業革新機構(INCJ)、当社、ソニー<6758>およびパナソニック<6752>が、ソニーおよびパナソニックが有する有機ELディスプレイパネルの研究開発機能を統合して、JOLED(ジェイオーレッド)を設立(15年1月予定)することで最終合意した。当社は新会社JOLEDに15%出資し、JOLEDとのシナジーで今後の研究開発を加速させる方針としている。
今期(15年3月期)の連結業績見通し(10月15日に売上高・利益とも2回目の減額修正、11月13日に貸倒引当金計上に伴って純利益を3回目の減額修正)については、売上高が前期比20.4%増の7400億円、営業利益が同76.5%減の65億円、経常利益が同92.1%減の15億円、純利益が121億32百万円の赤字(前期は339億18百万円の黒字)としている。期末配当予想は未定としている。
第2四半期累計(4月~9月)は前年同期比11.0%減収で、営業利益、経常利益、純利益とも赤字に転落した。大口顧客向けの出荷遅れ、単価下落、中国のLTE対応機種向け「Full-HD」市場立ち上がり遅れなどの影響で売上高が想定を下回り、単価下落に対するコストダウン対応の遅れ、在庫評価損の計上、さらに海外子会社が保有する債権に対する貸倒引当金計上も影響して計画を下回った。
下期(10月~3月)は欧米の大口顧客向けの売上回復、中国・アジアのスマートフォンメーカーからの大口案件受注、ディスプレイ高精細化に伴う中国・アジア向け「Full-HD」「WQHD」「Pixel Eyes」の売上増加と売上構成比上昇、さらに茂原工場の稼働率向上やコストダウンなどの効果で収益改善を図るとしている。通期の想定為替レートは1ドル=105円としている。
なお10月15日に、事業の効率化を促進して中期的な競争力の強化を図るべく、生産効率の劣る第3世代LTPS(低温ポリシリコン)液晶ラインを有する深谷工場を16年4月に閉鎖すると発表した。減損損失約70億円を下期に特別損失として計上するが、閉鎖後は年間約70億円の固定費削減効果が得られる見込みとしている。下期以降の営業損益改善、さらに車載分野の拡大などで来期(16年3月期)の一段の営業損益改善を期待したい。
株価の動きを見ると、今期業績見通しの減額修正を嫌気して軟調展開が続いたが、10月中旬~11月中旬の上場来安値圏310円台から切り返しの動きを強めている。12月18日には前日比42円(10.88%)高の428円まで急伸する場面があった。今期の業績悪化を織り込んで下値固めが完了したようだ。
12月18日の終値410円を指標面で見ると、前期実績PBR(前期実績の連結BPS673円28銭で算出)は0.6倍近辺である。週足チャートで見ると13週移動平均線突破の動きを強めている。下値固めが完了して強基調に転換した可能性があり、来期の収益改善を期待して出直り展開だろう。