【アナリスト水田雅展の銘柄分析】インフォコムは800円近辺の下値支持線から切り返し

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ITソリューションや電子書籍配信サービスなどを展開するインフォコム<4348>(JQS)の株価は、10月中旬と11月中旬の直近安値圏800円近辺から切り返しの動きを強めている。第2四半期累計(4月~9月)の減益で売りが一巡し、800円近辺が下値支持線となって切り返しの展開だろう。

 企業向けにITソリューションを提供するITサービス(ヘルスケア、エンタープライズ、サービスビジネス)事業、一般消費者向けに各種デジタルコンテンツを提供するネットビジネス事業(子会社アムタス)を展開している。

 業容拡大に向けて戦略的M&A・アライアンスを積極活用し、13年9月に医薬品業界のCRM事業強化に向けてミュートスと合弁会社インフォミュートスを設立、BCP(事業継続計画)分野のビジネス拡大に向けて危機管理関連ソリューションを手掛ける江守商事<9963>と協業した。

 グループ会社の統合・再編では、14年3月にEC事業の運営効率化に向けてアムタスグループ内で食品EC事業を展開する持分法適用関連会社のドゥマンを連結子会社化し、連結子会社イー・ビー・エスのアパレルEC事業をドゥマンへ譲渡して事業統合した。14年7月には連結子会社である米国SYSCOMの株式譲渡(15年2月予定)を発表した。

 中期経営計画では、目標数値として17年3月期売上高550億円、営業利益50億円を掲げている。医療機関・製薬企業向けヘルスケア事業、Web-ERPソフト「GRANDIT」事業、ネットビジネス事業(電子書籍配信サービスやソーシャルゲーム)を重点3事業として、クラウドサービス関連、ソーシャルメディア関連、ビッグデータ領域のデータサイエンス関連、農業IT化関連、海外展開なども強化する方針だ。

 14年9月には米国シリコンバレーに連結子会社としてコーポレートファンド(20億円規模、通称インフォコムファンド)を設立した。ヘルスケア事業関連やネットビジネス事業関連を中心に、成長が期待される新技術や有力ベンチャーなど投資先候補探索・発掘を推進する。

 06年開始のスマートフォン・フィーチャーフォン向け電子コミック配信サービス「めちゃコミック」は13年8月から各携帯キャリア公式サービス1位を独占し、月間サイト来訪ユニークユーザー数は14年7月に500万人を超えた。13年11月にはマルチデバイス対応の電子書籍配信サービス「ekubostore(エクボストア)」も開始した。アムタスの電子書籍配信サービスは前期(14年3月期)売上高が100億円超に成長し、14年7月度には月間売上高が10億円に達している。

 14年10月にはアムタスがシフトワン(東京都千代田区)と共同で次世代電子コミック「モーションコミック」の提供を開始した。また電子書籍配信サービス「ekubostore」においてリーダーアプリ「ekuboReader」の提供開始を発表した。

 なお11月には岩手県下被災3市村(久慈市、野田村、普代村)が東日本大震災関連資料を収集・デジタル化する「北三陸震災アーカイブ構築事業」を受託した。また米Zementis社の、世界で100社以上の導入実績のある業界標準PMMLベース予測分析モデル実行ソリューション「ADAPA」「UPPI」の日本国内における販売代理店契約を締結した。

 今期(15年3月期)の連結業績見通しは、前回予想(4月24日公表)を据え置いて売上高が前期比9.9%増の430億円、営業利益が同8.8%増の40億円、経常利益が同8.5%増の40億円、純利益が同12.6%増の23億円、そして配当予想が同1円増配の年間18円50銭(期末一括)としている。

 第2四半期累計(4月~9月)は前年同期比5.1%増収、36.7%営業減益、34.6%経常減益、55.1%最終減益だった。第1四半期(4月~6月)のヘルスケア事業における消費増税後の反動減、前期の事業譲受効果の一巡、プロダクトミックスの悪化、ゲームなど新規事業の収益化遅れの影響をカバーできず、売上高、利益とも計画を下回った。

 ただし第2四半期(7月~9月)は、電子コミック配信サービス「めちゃコミック」が好調で、ITサービス事業も順調に推移し、四半期ベースで過去最高の売上高を達成している。通期ベースではGRANDIT事業や電子書籍配信サービスなど重点分野の一段の業容拡大が牽引する。ヘルスケア事業の売上挽回やゲーム事業の見直しによるコスト圧縮も寄与して好業績が期待される。

 株主優待制度については7月に導入を発表した。毎年9月30日現在で1単元(100株)以上保有株主を対象として、連結子会社ドゥマンが運営する食品通信販売サイト「オーガニックサイバーストア」で利用可能なポイント(1ポイントを1円として利用)を保有株数と保有年数に応じて贈呈する。たとえば保有株数1000株以上で保有年数3年以上の場合は6000ポイントを贈呈する。

 株価の動きを見ると、10月中旬と11月中旬の直近安値圏800円近辺から切り返しの動きを強めている。第2四半期累計の減益の売りが一巡したようだ。

 12月18日の終値871円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS84円13銭で算出)は10~11倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間18円50銭で算出)は2.1%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS698円41銭で算出)は1.2倍近辺である。週足チャートで見ると26週移動平均線が戻りを押さえて調整局面だが、800円近辺が下値支持線となって切り返しの展開だろう。

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