インテージホールディングス、25年6月期増収増益予想、中期経営計画で掲げた成長戦略の着実な実行が奏功

 インテージホールディングス<4326>(東証プライム)は、市場調査事業を主力としてシステムソリューション分野や医薬情報分野にも展開している。成長戦略として、Date+Technology企業として販促最適化への新たな価値を創出すること、社会的課題解決に向けた行政EBPM推進への価値を創出することなどを目指している。25年6月期は中期経営計画で掲げた成長戦略の着実な実行により増収増益予想としている。第1四半期は人件費・経費の増加等で営業減益だったが、積極的な事業展開で通期ベースでの収益拡大を期待したい。株価は上げ一服となってモミ合う形だが、調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。

■国内首位の市場調査が主力

 子会社インテージのSCI(全国個人消費者パネル調査)やi-SSP(インテージシングルソースパネル)など、国内首位・世界10位(GRBN 2018 Global Top25 Report)の市場調査事業を主力として、システムソリューション分野や医薬情報分野にも展開している。なおTOBによって23年10月にNTTドコモの連結子会社となった。

 セグメント区分は消費財・サービス分野のマーケティング支援、ヘルスケア分野のマーケティング支援、ITソリューション分野のビジネスインテリジェンスとしている。24年6月期のセグメント別構成比は、売上高が消費財・サービス分野のマーケティング支援65%、ヘルスケア分野のマーケティング支援23%、ビジネスインテリジェンス12%、営業利益が消費財・サービス分野のマーケティング支援35%、ヘルスケア分野のマーケティング支援52%、ビジネスインテリジェンス13%だった。

 海外事業に関しては23年1月に連結子会社CSG香港の株式譲渡および特別目的会社IAHの清算を発表した。市場環境の変化に対応してアジアにおける事業展開の役割を本社へ移管するとともに、中国市場への事業展開は英徳知市場諮詢(上海)有限公司を中心に推進する方針に変更した。

■消費財・サービス分野のマーケティング支援

 消費財・サービス分野のマーケティング支援では、データサービスやカスタムリサーチなどを展開している。独自収集した各種パネル調査やカスタムリサーチから得られたデータを基に、高度なリサーチ技術やデータ解析力を駆使して、消費財メーカーを中心に企業のマーケティング活動をトータルサポートしている。主な事業会社はインテージ、インテージリサーチ、海外子会社、21年5月に子会社化したリサーチ・アンド・イノベーション(RNI)などである。24年7月にはNTTドコモとの合弁会社であるドコモ・インサイトマーケティング(DIM)の株式を取得して完全子会社化した。

 24年9月にはインテージがエコノミクスデザインと業務提携した。精度の高い価格調査方法であるプライシングソリューション「BDMオークション」の提供を開始する。

■ヘルスケア分野のマーケティング支援

 ヘルスケア分野のマーケティング支援は一般用医薬品・医療用医薬品の市場調査、製薬企業からの委託によるデータマネジメント・解析業務などを展開している。事業会社はインテージヘルスケアの直下に協和企画、インテージリアルワールド(医療情報総合研究所が21年7月1日付で社名変更)、プラメド、Plamed Koreaの4社を置く体制としている。

 22年8月にはインテージヘルスケアと岡山大学が悪性腫瘍をはじめとする難治性疾患治療薬開発プロジェクトとして、AI創薬プラットフォーム「Deep Quartet(ディープカルテット)」を活用した新薬開発の共同研究を開始した。22年12月にはインテージヘルスケアがAI創薬アカデミックプログラム(IAAP)を開始した。AI創薬プラットフォーム「Deep Quartet」などの新規化合物を得るサービスを活用し、アカデミアとの共同研究プログラムを開始する。23年2月にはインテージヘルスケアと広島大学がAI創薬によるペプチド擬態化合物の共同研究を開始、インテージヘルスケアと名古屋大学がAI創薬による胃酸抑制剤の共同開発を開始した。

 24年9月には、インテージヘルスケアが展開するCRO(医薬品開発業務受託機関)事業をアルフレッサホールディングスに譲渡した。

■ビジネスインテリジェンス

 ビジネスインテリジェンスでは、ソフトウェア開発やシステム構築・運用などを展開している。事業会社はインテージテクノスフィア、ビルドシステム、エヌ・エス・ケイなどである。

■第14次中期経営計画

 第14次中期経営計画(24年6月期~26年6月期)では成長戦略として、Date+Technology企業として販促最適化への新たな価値を創出すること、社会的課題解決に向けた行政EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング、証拠に基づく政策立案)推進への価値を創出することなどを目指している。目標値には、最終年度26年6月期の売上高735億円、営業利益60億円、一人当たり利益(=(営業利益+投資)/人員数)GAGR12%、ROE(自己資本利益率)12%などを掲げている。24年2月にはシナジー戦略部を新設した。

 利益改善については、各セグメントの売上増加、販売価格の最適化、生産性向上などに加えて、SCI刷新によるコストイノベーションや新旧SCIのダブルランコストの解消を見込んでいる。配当方針については、第14次中期経営計画期間中の配当は累進的とし、26年6月期の配当性向を従来の40%から50%に引き上げるとしている。

 消費財・サービス分野のマーケティング支援では、リサーチにとどまらず販促・広告市場においても新しい価値創出を目指す新たなプラットフォームとして、子会社のリサーチ・アンド・イノベーション(RNI)が持つ特許を活用し、CXマーケティングプラットフォームの開発を推進する。第1ステップはRNIのプロダクトにインテージの事業資産を組み込んでマネタイズを加速、第2ステップはRNI特許を活用してSCIをリニューアル、第3ステップはSCI-CODE一体活用によるCXマーケティングプラットフォームの確立(提供ツールを開発してリサーチと広告・販促の一気通貫サービスを提供)を目指す方針としている。

 なおINTAGE Open Innovation Fund(SBIインベストメントと共同設立)は、パーソナルAI「al+」開発のオルツ、WEBリサーチのリサーチ・アンド・イノベーション、IoTデータ流通プラットフォームの米EverySense、訪日外国人向けショッピングサポートアプリ「Payke」のPaykeなどに投資している。23年6月には、一人ひとりに合わせて行動を促す個別化エンジン「Nudge AI」を開発するGodotに出資した。投資先のIPO実績としてはAI CROSS<4476>、QDレーザ<6613>、メンタルヘルステクノロジーズ<9218>がある。23年8月現在の投資実績は26社、合計約26.5億円となっている。

 サステナビリティ経営に関しては、23年度からサステナビリティ委員会を設置して取り組みを強化している。23年12月には、健康企業宣言東京推進協議会が運営する健康企業宣言制度において、21年より3年連続で「健康優良企業 銀の認定」を取得した。また、コーポレートガバナンスの更なる向上に向けてガバナンス委員会を設置した。24年3月には健康経営優良法人2024(中小規模法人部門)に認定された。

■25年6月期増収増益予想

 25年6月期の連結業績予想は売上高が24年6月期比7.5%増の680億円、営業利益が15.5%増の38億円、経常利益が7.2%増の38億円、親会社株主帰属当期純利益が50.6%増の37億円としている。配当予想は24年6月期比2円増配の45円(第2四半期末22円50銭、期末22円50銭)としている。なお25年6月期より中間配当を実施する。予想配当性向は46.4%となる。

 第1四半期は、売上高が前年同期比5.2%増の150億57百万円、営業利益が5.7%減の1億87百万円、経常利益が66.1%減の1億06百万円、親会社株主帰属四半期純利益が7.5倍の11億32百万円だった。

 売上面は主力のマーケティング支援(消費財・サービス)事業が堅調に推移し、新規連結(ドコモ・インサイトマーケティング)も寄与して増収だが、人件費・経費の増加、領域拡大を目指した投資の増加で営業減益だった。営業利益11百万円減少の要因分析は増収効果で7億51百万円増加、変動費増加で83百万円減少、人件費増加で3億13百万円減少、経費増加で2億23百万円減少、投資等の増加で1億44百万円減少としている。

 経常利益は為替差損益悪化(前期は為替差益30百万円、当期は為替差損1億17百万円)なども影響して大幅減益、純利益はCRO事業譲渡益15億88百万円を計上して大幅増益だった。

 マーケティング支援(消費財・サービス)事業は売上高が11.7%増の100億66百万円、営業利益が2億90百万円の損失(前年同期は2億95百万円の損失)だった。売上面はパネル調査・カスタムリサーチが堅調に推移し、ドコモ・インサイトマーケティングの新規連結も寄与して増収だが、人件費・経費の増加、領域拡大を目指した投資の増加が影響した。

 マーケティング支援(ヘルスケア)事業は、売上高が5.0%減の31億84百万円、営業利益が9.8%増の2億79百万円だった。売上面はCRO(医療品開発業務受託機関)事業売却の影響で減収だが、主力のリサーチ事業が堅調に推移し、収益性が改善した。

 ビジネスインテリジェンス事業は、売上高が6.8%減の18億07百万円、営業利益が17.6%減の1億97百万円だった。前期の大型案件の反動で減収減益だったが、概ね計画水準だった。

 通期連結業績予想は据え置いて、成長戦略の着実な実行により増収増益予想としている。セグメント別計画は、マーケティング支援(消費財・サービス)事業の売上高が16.1%増の478億円で営業利益が37.9%増の16億円、マーケティング支援(ヘルスケア)事業の売上高が10.7%減の128億円で営業利益が6.0%増の18億円、ビジネスインテリジェンス事業の売上高が4.7%減の74億円で営業利益が7.2%減の4億円としている。マーケティング支援(消費財・サービス)事業はNTTドコモとのシナジー等により増収増益、マーケティング支援(ヘルスケア)事業はCRO事業売却により減収だがリサーチ事業の復調で増益、ビジネスインテリジェンス事業は減収減益の見込みとしている。

 第1四半期の進捗率は売上高が22%、営業利益が5%、経常利益が3%、当期純利益が31%で、営業利益と経常利益の進捗率が低水準の形だが、期初時点で営業利益と経常利益については下期偏重の計画としている。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。

■株主優待は毎年12月末の株主対象

 株主優待制度(詳細は会社HP参照)については、毎年12月31日現在の1単元(100株)以上保有株主を対象として実施している。

■株価は調整一巡

 株価は上げ一服となってモミ合う形だが、調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。11月20日の終値は1592円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS97円04銭で算出)は約16倍、今期予想配当利回り(会社予想の45円で算出)は約2.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS844円73銭で算出)は約1.9倍、そして時価総額は約644億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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