【どう見るこの相場】「天気」と「景気」の敏感性を併有の厳冬関連株は「元気敏感性」呼び込みにスタンバイ

■背広の売れ行きが映す街角の景気シグナル

 街角の景気実感を分析し、景気実態を明らかにする経済指標に、内閣府が毎月発表している「景気ウオッチャー調査」がある。タクシーの運転手など地域経済の動きを観察できる約2000名の景気実感を集計して作成・分析する。この指標と同レベルかどうかは問題だが、かつてこの景気実感を測るモノサシとして神奈川県川崎市での背広の売れ行きが定番となっていたことがあった。昔々、昔々の話である。

 川崎市は、京浜工業地帯のど真ん中に位置し鉄鋼、化学、石油などの重工長大産業の工場が林立しており、工場従業員さんたちの背広の購入動向が、景気実態を反映する鏡とされていたのである。工場の稼働率が上がって残業時間が増え工場従業員さんたちの手取りの給料がアップすれば、背広がバカ売れし、株価は、好況到来として「カイ」となるわけである。この背広は、兜町では売りシグナルとなったこともあった。証券マンが、値の張る海外ブランドスーツを一度に10着も購入したなどのウワサが流れてくると、高騰相場にハシャギ過ぎで天井は近いとして株価は「ウリ」となった。

 「衣・食・住」の常套語や「衣食足りて礼節を知る」の諺からも明らかなように、「衣」は暮らしを成り立たせるベースを形成する。その「衣」の過不足は、直接的には天気により需要が左右されるとともに、暮らしのレベルのシグナル、先行・遅行指標とも位置付けられる。では、かつて景気シグナルとされた背広の足元の売れ行きはどうなのか?なぜなら街角の景気実感はともかく、街角の天気実感が、背広の売れ行きに影響しそうだから気になるのである。

■冬型気圧配置と鍋需要がもたらす関連株の可能性

 気象庁が11月19日に発表した「三か月予報」では、12月から来年2月までの気温は、全国的に平年並みとされたものの、降雪量は、北・東・西日本の日本海側では冬型の気圧配置が強まる時期があるため平年並みか多い可能性があるとされた。足元の天気実感は、この「冬型の気圧配置が強まる」に近いのではないかと推定されるのである。今年は、残暑が長引いた異常気象の影響で、いきなり夏から秋を飛び越して冬が到来した印象が強い。このギャップ、天気実感が、仮に個人消費動向にも影響を与える可能性があるとすれば、株価に「カイ」となるか「ウリ」となるか注視する必要性がある。

 「カイ」となれば、冬仕度銘柄の出番となる。コート、防寒用品はもちろん暖房機器、除雪商品などにまでシーズン需要が高まることになるからだ。また気象予報会社のウェザーニューズ<4825>(東証プライム)や老舗スープメーカーは、「鍋前線予報」や「鍋開き予報」を発表し、鍋料理が食べたくなる気温を18度以下、15度以下などとしているが、前週末に日本上空に再び寒気が流れ込んで冬型の気圧配置となって気温が下がり、日本海側で降雪もみられたことから鍋料理の具材、スープ、加熱料理器具なども上々の売れ行きを示したと推定され、この関連需要も株価材料に浮上する。

 全般相場は、AI(人工知能)半導体世界トップのエヌビディアが、11月20日の決算発表以来、前週末22日の米国市場で急反落するなど高値で一進一退となった。この影響で日米両市場をリードしてきた半導体関連株が、やや上値の重い展開に変わりそうである。米国市場では、代わって買われているのが景気変動の影響を受け難い出遅れディフェンシブ株で、相場を下支えしたようである。となれば東京市場でも、景気敏感性より天気敏感性を優先し、厳冬関連銘柄に買いの目が強まる可能性を想定することもあながち的外れにはならないはずだ。アパレル株、暖房器具株、ホームセンター株、除雪関連株、タイヤ株、鍋料理関連株など幅広い銘柄がディフェンシブ系の候補株として浮上するが、じっくり腰を据えて関連割安株にスタンバイするのが、「天気」が、もう一つの「気」の「元気」の敏感性を呼び込むベストの選択肢として浮上することになりそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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