建設技術研究所、24年12月期小幅減益予想だが再上振れ余地、国土強靭化関連の需要は堅調

 建設技術研究所<9621>(東証プライム)は総合建設コンサルタントの大手である。成長戦略として、グローバルインフラソリューショングループとしての飛躍を目指すとともに、インフラ整備を通じた「サステナビリティ」の実現にも取り組んでいる。24年12月期(8月13日付で上方修正)は小幅減益予想だが、国土強靭化関連など事業環境は良好であり、会社予想に再上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。なお効力発生日25年1月1日付で株式2分割を行う。株価は反発力の鈍い形だが、一方では徐々に下値を切り上げている。調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。

■総合建設コンサルタント大手

 総合建設コンサルタントの大手である。河川・ダム・海岸・海洋、道路、橋梁、トンネル、都市・地方計画などの分野に強みを持ち、24年5月には湯浅コンサルティング(京都市)を子会社化、24年11月には広建コンサルタンツ(広島県福山市)を子会社化した。地方自治体市場への展開を強化する。海外は、建設技研インターナショナルが東南アジア、英国Waterman Group Plc(ロンドン証券取引所上場)が英国を中心に展開している。

 23年12月期のセグメント別の業績は、国内建設コンサルティング事業の受注高が22年12月期比6.8%増の621億61百万円、売上高が10.9%増の644億73百万円、セグメント利益(調整前営業利益)が29.9%増の89億43百万円、海外建設コンサルタント事業の受注高が9.4%増の303億12百万円、売上高が12.9%増の285億83百万円、利益が5.2%減の10億73百万円だった。

■グローバルインフラソリューショングループ目指す

 グローバルインフラソリューショングループとして飛躍することを目指し、CTIグループ中長期ビジョン「SPRONG2030」では、目標数値として30年度の売上高1000億円(単体600億円、主要グループ会社400億円)(国内720億円、海外280億円)、営業利益率9%(単体10%、主要グループ会社7%)、社員数5000人を掲げている。

 中長期ビジョン目標達成に向けた第1ステップとなる中期経営計画2024(発注単価上昇と生産性向上によって利益率が改善しているため23年2月14日付で営業利益および営業利益率の目標値を上方修正)では、経営目標値として24年12月期の連結ベース受注高850億円、売上高850億円、営業利益77億円(従来は68億円)、営業利益率9.1%(同8.0%)、ROE10%以上、建設技術研究所単体ベースの受注高550億円、売上高550億円、営業利益64億円(同55億円)、営業利益率11.6%(同10%)、社員数2300人を掲げている。

 CTIグループ全体の重点施策として、グループ協業の推進による事業拡大、主要グループ会社の安定経営と収益性の改善、グループガバナンスの強化、グループ全体でのサステナビリティ経営の推進に取り組む。社会の課題に応じた重点事業分野(防災・減災、都市・建築、土壌・地盤・地質、環境マネジメント、エネルギー、PPP事業など)を設定し、その売上高伸長を目指す方針としている。

 23年1月に設立したサステナブル事業会社CTIアセンドは、福島県相馬市で子実トウモロコシ栽培・ウイスキー製造販売に取り組んでおり、24年6月にウイスキーの製造免許を取得、24年7月から製造を開始した。

 また23年7月にはリスクマネジメント基本方針を策定、23年12月にはパートナーシップ構築宣言およびマルチステークホルダー方針を公表した。24年1月には企業活動を通じて次世代育成に貢献するため、次世代法に基づいた一般事業主行動計画(行動計画期間24年1月1日~25年12月31日)を策定・公表した。男性の育児目的休暇取得率100%、育児・介護と仕事の両立支援に向けた管理職啓発や職場環境改善、子供や家族に社員の職場理解を促進する活動などを推進する。

 24年10月には25年12月期の研究開発投資の基本方針を公表した。事業展開の加速や持続可能な社会の構築を目的に総額を15億円(24年12月期予算から2億円増額)とした。このうち社会のサステナビリティを実現するための投資(グリーン関連研究揮発)の予算を4億円とした。

■資本コストや株価を意識した経営について

 24年3月に資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた方針・取り組みをリリースした。株主資本コストを7%前後と認識(市場リスクプレミアムを6~7%程度としてCAPM法により推定)し、中期経営計画2024ではROE目標を10%以上としている。そして2023年12月期のROEは14.7%となり、株主資本コストとROE目標を超過する水準を維持している。

 株価指標については、PBRは概ね1倍台前半で推移しているものの、PERについては東証プライム上場企業の平均より低く評価されている。このためPBRとPERの向上に向けた取り組みとして、中長期成長戦略の推進による利益成長の実現、成長投資との適切なバランスを取った株主還元の充実、IR・SRの強化により企業価値の向上を目指す方針としている。なお株主還元について、中長期的には連結配当性向30%程度以上を目安とした利益還元を目指すとしている。

■新分野・新事業への展開を加速

 22年1月には新分野や新事業への展開を加速するため、SBIホールディングス<8473>の子会社SBIインベストメントが運営する「SBI4+5ファンド」に出資した。本ファンドが出資するスタートアップ企業を支援するとともに、スタートアップ企業との連携による技術開発や事業開発に取り組む。

 23年6月には、沖縄県伊平屋島において次世代交通システム「空飛ぶクルマ」試験飛行を実施・成功した。23年8月には、AirXおよび一般社団法人MASCと連携し、兵庫県の「空飛ぶクルマ実装促進事業」および神戸市の「神戸市空飛ぶクルマ社会実装促進事業」に採択された。電動、自律飛行、垂直離着陸の特徴を備えた新たなモビリティである「空飛ぶクルマ」の社会実装に向けた環境整備に資する実証を行う。

 24年4月にはAIを用いて発電量および電力消費量予測を行う予測制御型エネルギーマネジメントシステムの開発を発表した。24年7月には道路構造物ナレッジシステム(画像・文字情報に基づく類似事例検索Aツール)の開発を発表した。24年10月には粘り強い河川堤防強化技術「改良型被覆ブロック等を用いた表面被覆型の堤防強化技術」の開発を発表した。

■24年12月期小幅減益予想だが再上振れ余地

 24年12月期の連結業績予想(8月13日付で上方修正)については、売上高が23年12月期比4.2%増の970億円、営業利益が4.1%減の96億円、経常利益が4.5%減の97億円、親会社株主帰属当期純利益が8.4%減の69億円としている。配当予想は23年12月期と同額の150円(期末一括)としている。予想配当性向は30.2%となる。

 前回予想(3月26日付公表値、売上高890億円、営業利益84億円、経常利益85億円、親会社株主帰属当期純利益61億円)に対して、売上高を80億円、営業利益を12億円、経常利益を12億円、親会社株主帰属当期純利益を8億円それぞれ上方修正し、売上高は減収予想から一転して増収予想、各利益は減益幅が縮小する見込みとした。修正後のセグメント別計画は、国内建設コンサルティング事業の受注高が625億円、売上高が660億円、営業利益が87億円、海外建設コンサルティング事業の受注高が315億円、売上高が310億円、営業利益が9億円としている。

 第3四半期累計は売上高が前年同期比4.6%増の721億97百万円、営業利益が11.0%減の74億19百万円、経常利益が12.1%減の74億21百万円、親会社株主帰属四半期純利益が14.0%減の52億66百万円だった。販管費増加等で減益だが売上面は順調だった。グループ受注高は0.5%増の772億28百万円だった。

 なおセグメント別(セグメント間取引消去前)に見ると、国内建設コンサルティング事業は売上高が2.6%増の494億04百万円で営業利益が10.0%減の69億34百万円、海外建設コンサルティング事業は売上高が8.8%増の228億43百万円で営業利益が24.2%減の4億78百万円だった。

 全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高291億89百万円で営業利益61億07百万円、第2四半期は売上高215億57百万円で営業利益6億82百万円、第3四半期は売上高214億51百万円で営業利益5億66百万円だった。

 通期連結業績予想は据え置いている。第3四半期累計の進捗率は売上高74%、営業利益77%、経常利益77%、親会社株主帰属当期純利益76%である。国土強靭化関連など事業環境は良好であり、会社予想に再上振れ余地がありそうだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。

■株価は下値切り上げ

 株価は反発力の鈍い形だが、一方では徐々に下値を切り上げている。調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。11月22日の終値は4740円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS497円30銭で算出)は約10倍、今期予想配当利回り(会社予想の150円で算出)は約3.2%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS3958円89銭で算出)は約1.2倍、そして時価総額は約671億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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