ミロク情報サービス、25年3月期増収増益予想で2Q累計順調、新規顧客獲得で顧客基盤拡大

 ミロク情報サービス<9928>(東証プライム)は財務・会計ソフトをベースとして、クラウド・サブスク型収益モデルへの転換加速、統合型DXプラットフォーム戦略、サステナビリティ経営などを推進している。25年3月期は増収増益予想としている。新規顧客獲得による顧客基盤の拡大、サブスクリプション型への移行加速などにより、人件費増加などの先行投資を吸収する見込みだ。第2四半期累計が増収増益と順調であり、通期ベースでも積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は水準を切り上げて戻り高値圏だ。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。

■財務・会計ソフトの大手

 会計事務所(税理士・公認会計士事務所)と、その顧問先企業である中堅・中小企業向けに、財務・会計ソフトなどの業務用アプリケーションソフト開発・販売、汎用サーバ・パソコン・サプライ用品販売、運用支援・保守サービス、経営情報・コンサルティングサービスなどを展開している。

 会計事務所が抱えている課題を解決することで中堅・中小企業の支援に繋がるトータルソリューションを強みとして、全国約8400の会計事務所ユーザー、および約10万社の中堅・中小企業ユーザーを有している。

 主力の中堅・中小企業向けERPシステム「MJSLINKシリーズ」は、デロイト トーマツ ミック経済研究所の「基幹業務パッケージソフト(ERP)の市場展望2023年度版」における中規模企業向けERP部門で2年連続売上高1位、富士キメラ総研の「ソフトウェアビジネス新市場2023年版」における中小規模企業向けERP・パッケージ・数量に基づく調査で1位、矢野経済研究所の「2024 ERP市場の実態と展望」における年商50億円未満の企業向け財務・会計管理ソリューションのライセンス売上高シェアで09年から15年連続1位となり、トリプルで1位を獲得している。

 22年4月には中堅企業向け新ERPシステム「Galileopt DX」の提供を開始、22年7月には子会社トライベックが中小企業向けDXプラットフォームサービス「Hirameki7」の提供を開始、23年7月には「Hirameki7」の累計導入社数が1万社を突破した。

■ストック型のサービス収入が増加基調

 24年3月期の品目別の売上高は、フロー型のシステム導入契約売上高が240億35百万円(内訳はハードウェア売上高が44億14百万円、ソフトウェア売上高が128億17百万円、ユースウェア売上高が68億02百万円)で、ストック型のサービス収入が162億59百万円(内訳は会計事務所向け総合保守サービスTVSが25億64百万円、ソフトウェア使用料収入が56億65百万円、企業向けソフトウェア運用支援サービス収入が59億45百万円、ハードウェア・ネットワーク保守サービス収入が15億83百万円、サプライ・オフィス用品が4億99百万円)だった。その他は36億77百万円だった。なおサービス収入のうち企業向けソフトウェア運用支援サービス収入は、売り切り型の契約企業へのソフト保守サービスであり、サブスクリプション型契約においてはソフト保守料に含み、ソフトウェア使用料収入に集計される。このため売り切り型からサブスクリプション型への移行に伴い売上高が減少傾向の形となる。

 システム導入契約売上高の販売先別売上高構成比は企業向けが55.6%、会計事務所向けが30.5%、その他が13.9%、新規企業向け比率は34.4%、企業向け売上に占める新規企業比率は35.8%だった。サービス収入売上高のうちソフトウェア使用料(クラウド・サブスク等)の比率は34.8%、ソフトウェア・ハードウェアの保守・運用等の比率は65.2%だった。

 ERP事業におけるサブスクリプション指標は、主力ERP製品のサブスクリプション契約社数が54.9%増の3190社、主力ERP製品のサブスクリプション比率が15.5%、主力ERP製品の契約継続率が99.3%、主力ERP製品のARPU(24年3月期末時点のソフト使用料課金収入の平均値)が7.8%増の861千円、第4四半期の主力ERP製品のARR(サブスク・IaaS)が67.0%増の27億47百万円、第4四半期のソフトウェア使用料全体のARR(サブスク・IaaS)が42.3%増の45億40百万円となった。

■M&A・アライアンスも積極活用

 21年1月にブロックチェーン・プラットフォーム開発のToposWareと資本提携、21年6月に税務・会計を中心としたコンテンツ提供や士業事務所の経営支援サービスを提供するKACHIEL(カチエル)と資本業務提携、21年9月にアナリティクス・コンサルティングサービスやAI開発・運用を行うセカンドサイト社と資本業務提携、22年2月に子会社DX Tokyoを設立、22年9月に顧客管理・営業支援システム開発・販売のBizMagicを子会社化した。

■クラウド・サブスク型収益モデルへの移行を加速

 24年5月に「サステナビリティ2030」および24年度~28年度を対象期間とする「中期経営計画Vision2028」を策定した。中期経営計画の経営目標値については、最終年度29年3月期売上高600億円、経常利益120億円、経常利益率20%、ROE18%を掲げている。内訳はMJS単体(ERP事業)が売上高500億円で経常利益100億円、グループ会社(DX・PF事業を以外)が売上高90億円で経常利益10億円、MJSグループDX・PF事業が売上高25億円で経常利益10億円としている。

 成長に向けた6つの基本戦略として会計事務所ネットワークNo.1への戦略、中堅・中小企業向け総合ソリューション・ビジネス戦略、統合型DXプラットフォーム戦略、クラウド・サブスク型ビジネスモデルへの転換、グループ連携強化によるグループ会社の独自成長促進、戦略実現を加速する人材力・経営基盤強化を推進する。

 MJS単体(ERP事業)では、高度なワンストップソリューションやDXコンサルティングによる新規顧客獲得・顧客基盤拡大、SaaS型ERP製品の開発・拡販とサブスプリクション型モデルへの移行、カスタマーサクセスによる顧客生涯価値の最大化実現を推進する。グループ会社(DX・PF事業を以外)では、グループ内での位置づけ・役割(業績貢献、先行投資、グループ開発体制強化など)を再定義したうえで、グループシナジー最大化を目指す。MJSグループDX・PF事業では、中小企業向けDXプラットフォームサービス「Hirameki7」のコンテンツ拡充とサービス有償化の向上などを推進する。

 収益力向上施策としては、増収増益基調を維持しながら、MJS単体におけるサービス収入(サブスク型)比率を24年3月期実績の40%から29年3月期の60%へ引き上げる計画としている。29年3月期におけるサブスクリプション目標は、主要ERP製品サブスクリプション契約社数が24年3月期比370%増の15000社、ARRが同530%増の110億円、ソフト使用料全体のARRが210%増の200億円、主力ERP製品サブスクリプション比率が60%としている。

■サステナビリティ経営を推進

 サステナビリティ経営に関しては、22年5月にサステナビリティ基本方針を策定し、取り組むべき重要課題(マテリアリティ)の特定、サステナビリティ委員会の設置を発表した。基本方針はDX推進による地球環境への貢献、会計事務所と中小企業の経営革新や成長・発展を支援、多様なプロフェッショナル人材が活躍する働きがいのある職場づくり、健全成長のためのガバナンスの強化としている。24年5月には「サステナビリティ2030」を策定し、主な指標目標として31年3月期の女性管理職比率21%、女性採用比率50%、男性育児休業取得率85%などを掲げた。

■25年3月期増収増益予想で2Q累計順調

 25年3月期の連結業績予想は売上高が24年3月期比3.5%増の455億円、営業利益が10.3%増の67億40百万円、経常利益が7.0%増の67億50百万円、親会社株主帰属当期純利益が4.7%増の44億40百万円としている。配当予想は24年3月期比5円増配の55円(期末一括)としている。連続増配で予想配当性向は37.1%となる。

 第2四半期累計(中間期)は、売上高が前年同期比7.4%増の227億49百万円、営業利益が6.0%増の29億67百万円、経常利益が5.8%増の30億28百万円、親会社株主帰属四半期(中間)純利益が12.5%増の20億59百万円だった。

 増収増益と順調だった。売上面はソフトウェア使用料収入が大幅増収と牽引し、人的資本投資による人件費増加、売上拡大に伴う仕入原価の増加などを吸収した。なお特別利益に投資有価証券売却益3億58百万円を計上、特別損失に暗号資産売却損1億82百万円を計上した。

 品目別売上高は、システム導入契約売上高が2.8%増の120億55百万円(内訳はハードウェアが20.6%増の26億14百万円、ソフトウェアが8.3%減の59億34百万円、システム導入支援サービスのユースウェアが13.6%増の35億06百万円)、サービス収入が15.8%増の89億81百万円(内訳は会計事務所向け総合保守サービスTVSが1.6%増の12億96百万円、ソフトウェア使用料収入が39.0%増の35億34百万円、企業向けソフトウェア運用支援サービス収入が4.4%増の30億43百万円、ハードウェア・ネットワーク保守サービス収入が7.2%増の8億33百万円、サプライ・オフィス用品が11.8%増の2億74百万円)だった。

 システム導入契約売上高うち、企業向け売上に占める新規企業向けの売上高比率は39.8%(前年同期比7.8ポイント上昇)だった。新規顧客開拓とサブスクリプション型への移行促進により、ソフトウェア使用料収入などストック型のサービス収入が大幅伸長した。

 全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が111億57百万円で営業利益が13億73百万円、第2四半期は売上高が115億92百万円で営業利益が15億94百万円だった。

 通期予想は据え置いて増収増益・連続増配予想としている。新規顧客獲得による顧客基盤の拡大、サブスクリプション型への移行加速などにより、人件費増加などを吸収する見込みだ。売上総利益は8.6%増の291億円、販管費は8.1%増の223億60百万円の見込みとしている。

 品目別売上高の計画については、システム導入契約売上高が4.1%減の230億59百万円(内訳はハードウェアが0.7%増の68億49百万円、ソフトウェアが7.4%減の118億71百万円、ユースウェアが1.8%減の43億37百万円)で、サービス収入が13.5%増の184億56百万円(内訳は、ソフトウェア使用料収入が34.4%増の76億12百万円、会計事務所向けの総合保守サービスTVSが0.3%増の25億70百万円、企業向けのソフトウェア運用支援サービス収入が1.5%増の60億33百万円、ハードウェア・ネットワーク保守サービス収入が0.7%減の15億72百万円、サプライ・オフィス用品が33.4%増の6億66百万円)としている。その他は8.4%増の39億84百万円としている。

 また主力ERP製品のサブスクリプション契約社数は28.5%増の4100社、主力ERP製品のARPUは2.0%増の878千円、主力ERP製品のARR(サブスク・IaaS)は31.0%増の36億円の計画としている。

 第2四半期累計の進捗率は売上高が50%、営業利益が44%、経常利益が45%、親会社株主帰属当期純利益が46%である。利益進捗率がやや低水準の形だが、サブスクリプション型への移行加速により、期末に向けてストック収益が積み上がることが予想される。通期ベースでも積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は上値試す

 株価は水準を切り上げて戻り高値圏だ。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。11月22日の終値は1950円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS148円36銭で算出)は約13倍、今期予想配当利回り(会社予想の55円で算出)は約2.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS892円77銭で算出)は約2.2倍、そして時価総額は約679億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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