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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】マルマエは16年8月期減益予想だが増額余地、2%台後半の配当利回りも評価
- 2015/10/29 07:07
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
マルマエ<6264>(東マ)は半導体・FPD製造装置に使用される真空部品などの精密切削加工事業を展開している。株価は16年8月期減益予想を嫌気する形で水準を切り下げたが売り一巡感を強めている。16年8月期業績の会社予想は保守的で増額余地があり、2%台後半の予想配当利回りも評価して反発展開だろう。
■真空部品や電極などの精密切削加工事業を展開
半導体・FPD(フラットパネルディスプレー)製造装置に使用される真空部品や電極などの精密切削加工事業を展開し、新規分野として光学装置・通信関連分野なども強化している。
15年1月に事業再生計画(11年7月に事業再生ADR成立)の終結を発表した。16年10月末日の最終弁済をもって終了する計画だったが、強固な収益体質の確立と財務体質の改善に目途がついたため、終了期間を前倒しして15年1月末日をもって事業再生計画を終結した。そして債務の株式化を行ったA種優先株式については15年5月に取得(246株、1株につき100万円)して消却した。
なお15年9月には、商工組合中央金庫とのコミットメントライン契約(借入限度額50百万円)および当座貸越契約(借入限度額1億50百万円)を締結した。事業展開での資金需要に伴う手元資金の一時的な減少を防ぎ、経営のさらなる安定化を図る。
また10月26日には、取締役会において「監査等委員会設置会社」に移行する方針を決定し、15年11月28日開催予定の第28期定時株主総会に付議することを決議した。
■15年8月期は大幅増収増益
10月14日に発表した前期(15年8月期)非連結業績(9月30日に3回目の増額修正)は、売上高が前々期比34.0%増の21億24百万円、営業利益が同68.3%増の4億50百万円、経常利益が同70.5%増の4億35百万円、純利益が同85.0%増の5億59百万円だった。
半導体分野およびFPD分野の好調な受注が牽引した。分野別の受注高は半導体分野が同60.8%増の12億36百万円、FPD分野が同86.2%増の7億57百万円、その他分野が同17.3%減の3億68百万円、合計が同45.7%増の23億62百万円だった。半導体分野は市場環境が良好だったことに加えて、顧客内におけるシェア拡大や生産体制の強化も寄与した。FPD分野は期前半が低迷したが、期後半に新型スマートフォン関連などで需要が拡大した。
コスト面では増収に伴って材料費、労務費、外注加工費が増加したが、増収効果と生産性向上効果で大幅営業増益だった。売上総利益率は同2.6ポイント上昇して30.9%、販管費比率は同1.7ポイント低下して9.7%となった。純利益については、特別利益に「中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業に係る補助金」15百万円を計上したことや、繰延税金資産1億13百万円を計上したことも寄与した。
なお配当予想は年間36円(期末一括)としている。96年のマザーズ上場以来初の配当実施(7月14日公表)で、予想配当性向は11.3%となる。ROEは前々期比22.9ポイント低下して100.7%、自己資本比率は同10.3ポイント上昇して32.7%となった。またBPSは135円80銭で前々期の28円68銭から大幅に改善した。
四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(9月~11月)3億84百万円、第2四半期(12月~2月)6億39百万円、第3四半期(3月~5月)5億59百万円、第4四半期(6月~8月)5億42百万円、営業利益は第1四半期41百万円、第2四半期1億30百万円、第3四半期1億40百万円、第4四半期1億39百万円だった。収益改善基調だ。
■16年8月期減収減益・実質増配予想、会社予想保守的で増額余地
今期(16年8月期)の非連結業績予想(10月14日公表)は、売上高が前期比5.9%減の20億円、営業利益が同33.4%減の3億円、経常利益が同38.1%減の2億70百万円、純利益が同55.3%減の2億50百万円としている。
配当予想は年間14円(第2四半期末7円、期末7円)としている。15年9月1日付の株式3分割を考慮して、前期の年間36円を株式3分割後に換算すると年間12円となり、今期は実質的に前期比2円増配となる。予想配当性向は29.5%となる。
分野別売上高の計画は、半導体分野が同0.9%増の11億83百万円、FPD分野が同17.1%増の6億73百万円、その他分野が同57.6%減の1億42百万円としている。その他分野は光学関連消耗品の受注を見込むが、スポット的な受注も多いため先読みが困難としている。
また中国関連に不透明感があることや、半導体分野とFPD分野の需要変動幅が大きいことなどを考慮して、売上高およびコストとも全般的に保守的な計画としているようだ。半導体やFPD分野の受注は高水準に推移することが予想され、会社予想には増額余地がありそうだ。
■月次受注動向は高水準維持
15年9月度の月次受注残高(速報値)を見ると、半導体分野が1億43百万円(前月比9.4%減、前年同月比36.0%増)、FPD分野が2億02百万円(前月比14.7%減、前年同月比401.7%増)、その他分野が37百万円(前月比20.7%減、前年同月比196.2%増)、合計が3億83百万円(前月比13.4%減、前年同月比141.8%増)だった。前月比では減少したが前年同月比では大幅に伸長している。
半導体分野は受注および出荷検収とも高水準に推移している。FPD分野も受注の好調を維持しながら出荷検収が本格化している。半導体分野は市場に一時的な停滞感があったが、回復の兆しが見え始めているようだ。またエンドユーザーの大規模な微細化投資が計画されているため、15年末から需要がさらに増加する見通しだ。FPD分野は中小型から大型パネルまで幅広く設備投資が拡大しているため、高水準の受注と出荷検収が継続する見通しだ。その他分野は各種携帯端末の需要動向が不透明としている。
全般的には概ね好調な受注状況であり、今後は半導体製造装置分野の大型真空パーツにおいて協力企業選定を進めることで生産性を改善し、小型真空パーツでは社内の試作能力を高めることで受注拡大を図るとしている。
■新中期事業計画「Evolution2018」
15年10月、新中期事業計画「Evolution2018」(16年8月期~18年8月期)を公表した。
半導体分野では微細化投資の本格化でエッチング、洗浄、ALDなどの工程で市場拡大が見込まれるため、洗浄分野への参入、エッチング分野での試作強化などを推進する。FPD分野では中長期的に8Kなどで需要拡大が見込まれるため、自社における設備投資ではなく、協力企業の拡大によって需要変動に対応する。その他分野ではスマートフォン関連の需要が継続し、自動車関連やロボット関連の市場へ参入するため、生産余力の効率的活用と協力企業の拡大を図る。
また半導体分野を成長ドライバーとする既存事業のブラッシュアップに加えて、現業とのシナジー効果や半導体・FPD分野の需要変動に対するリスクヘッジとして、売上高20億円規模までの中小企業を対象としてM&Aも積極活用する方針だ。M&Aの分野としては、半導体洗浄・樹脂パーツや自動車・ロボット部品などを想定しているようだ。
数値目標としては、18年8月期の連結売上高40億円、営業利益10億円(単体ベースで売上高30億円、営業利益7億円、M&Aで売上高10億円、営業利益3億円)を掲げている。また株主還元として配当性向35%以上(順次向上)を目指し、計画期間中に東証1部への市場変更を目指す方針だ。
■株価は16年8月期減益予想を嫌気した売り一巡
株価の動き(15年9月1日付で株式3分割)を見ると、16年8月期減益予想を嫌気する形で、600円近辺から500円近辺に水準を切り下げた。ただし足元では売り一巡感を強めている。
10月28日の終値491円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS47円46銭で算出)は10~11倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間14円で算出)は2.9%近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS135円80銭で算出)は3.6倍近辺である。なお時価総額は約27億円である。
週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んで調整局面の形だ。ただし52週移動平均線がサポートラインとなりそうだ。16年8月期減益予想だが会社予想は保守的で増額余地があり、2%台後半の予想配当利回りも評価して反発展開だろう。