【編集長の視点】大日本住薬は今度は3月通期業績を上方修正して市場予想を上回るも急反落

編集長の視点

大日本住友製薬<4506>(東1)は、寄り付きの売り気配から73円安の1272円と売られ5営業日ぶりに急反落している。前日28日大引け後に今年10月23日に上方修正した今3月期第2四半期(2Q)累計決算の開示とともに、今度は3月通期業績の上方修正を発表し増益転換率を拡大したが、通期利益の上方修正幅が2Q累計業績の増額幅を下回ったとして目先の利益を確定する売り物が先行している。ただ通期利益は、市場コンセンサスを大幅に上回っているほか、2Q累計利益も、上方修正した通期利益に対して高進捗率を示しており、なお保守的な上方修正として期末にかけて再上ぶれ思惑は底流しており、下値からディフェンシブ株買いが再燃する展開も想定される。

■米国で「ラツーダ」が大幅に伸長し開発中の新薬に費用の戻入も発生

同社の今3月期業績は、今年7月29日に2Q累計業績と3月通期業績の売り上げ高を上方修正したあと、10月23日に2Q累計業績全体を上方修正した。2Q累計業績は、この上方修正値をやや上ぶれ前年同期比11.6%増収、41.0%営業増益、37.7%経常増益、12.4%純益増益と期初の減益予想が増益転換して着地し、期初予想の3月通期業績に対して高利益進捗率を示した。このため3月通期業績も上方修正したもので、売り上げを期初予想を据え置き4010億円(前期比8.0%増)としたが、営業利益、経常利益、純利益をそれぞれ20億円引き上げ、営業利益は290億円(同24.6%増)、経常利益は、285億円(同22.2%増)、純利益は、200億円(同29.5%増)と大幅増益転換して、市場コンセンサスを4億円~10億円上回る。

国内の売り上げは低調に推移するが、米国では、非定型抗精神病薬「ラツーダ」が前期比45.5%増、長時間作用型β作動薬「ブロバナ」が同31.7%増と伸び、販管費が、米国で開発中のSUNー101に関する条件付対価の公正価値が見直され費用の戻入が発生して減少することなどが要因となっている。為替レートも、従来予想の1ドル=120.4円、1元=19.5円からそれぞれ120.0円、19.0円とやや円高方向に変更したが、前期実績(109.8円、17.7円)より円安となることも寄与する。なお2Q累計利益は、通期業績対比で58~66%と目安の50%を上回る進捗率となっている。

■上方修正の通期業績になお再上ぶれ思惑も底流し突っ込み買いに一考余地

株価は、iPS細胞関連の再生医療ベンチャーであるヘリオス<4593>(東マ)の新規株式公開接近とともに関連人気を高めて年初来高値1625円をつけ、その後は1300円台を下値とする150円幅のボックス相場が続き、今期売り上げの上方修正で1549円までリバウンドしたものの、世界同時株安の影響で年初来安値に迫る1153円と調整、200円幅の底上げをしたところである。PER的には25倍台と割安感は小さく、2Q累計業績増額時も50円幅の値上がりと小幅反応にとどまった。今回は株価急反落となったが、業績再上ぶれ思惑台頭なども想定されるところで、突っ込み買いも一考余地がありそうだ。(本紙編集長・浅妻昭治)

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