【どう見るこの相場】日米中銀イベントがアクセルでもブレーキでも銀行株は師走相場のメーンプレーヤー候補

■サンタクロースはGPIF?日経平均急騰の背景と、日米中銀の思惑

 突如、「餅つき相場」、「クリスマス・ラリー」が始まったサプライズ感があった。師走相場のスタートと同時の12月2日、3日に日経平均株価が、2日間で1040円高と続急伸して3週間ぶりに3万9000円台を回復したからである。もちろん「クリスマス・ラリー」にはサンタクロースが付き物である。そのサンタクロースが、早々に現れた。GPIF(年金積立金管理運用独立法人)である。

 この2日、厚生労働省が開催した社会保障審議会の関連部会で、GPIFの資金運用目標について実質的な運用利回りを現在の1.7%から1.9%に引き上げる方針が明らかにされ、これによる基本ポートフォリオの変更で日本株の組み入れ比率が、現在の25%から引き上げられると観測されたことが買い材料となった。GPIFは、資産総額が240兆円超にも達する「クジラ」と呼ばれている世界最大の機関投資家である。日本株の一段高の大援軍となる積極運用への期待が高まった。

 この期待にさらにアクセルを踏む可能性があり、大納会まで株価が突っ走るカタリスト(株価材料)も控えている。12月18日に結果発表が予定されているFRB(米連邦準備制度理事会)のFOMC(公開市場委員会)である。政策金利引き下げのハト派政策を先取りするハイテク株高で、米国の主要株価指数は揃って過去最高値追いとなるとの観測が強い。

■日米金利差縮小と銀行株の逆行高! クリスマスラリーの勝者は誰だ?

 一方、「クリスマス・ラリー」にブレーキを掛ける可能性のあるカタリストも待ち受けている。12月19日に結果発表が予定されている日本銀行の金融政策決定会合である。日米中央銀行は、金融政策の正常化を進めている点では共通だが、方向性は真逆となっている。日銀が進めているのはタカ派の政策金利の引き上げで、すでに日米金利差縮小で為替相場が、円高・ドル安に転換し、今年11月に出揃った3月期決算会社の中間決算では、自動車など輸出関連株の業績下方修正が相次ぎ、株価の足を引っ張った。

 ただこの日銀のタカ派政策は、ブレーキではなくアクセルとなったセクターも出た。銀行株である。日本経済新聞の集計では、3月期中間決算の銀行株の純利益は、前年同期比33.2%増益と海運、非鉄に続く高い増益率となり、今期通期純利益も22.4%増益が予想されている。政策金利引き上げによる利ザヤ拡大で貸出金利息などの資金利益が増加し上方修正行が相次いだ結果である。株式持ち合い解消に向けた政策保有株縮減の株式売却益も上乗せとなった。

 この日米中央銀行のハト派・タカ派シナリオが、事前の予測通りに推移するか足元ではやや気迷いがあり、前週末6日の東京市場では、日経平均株価が5日ぶりに304円安と反落し上値が重くなった。しかし同日の米国市場では、トランプ次期大統領による規制緩和が、企業合併やM&A(企業買収)を活発化させM&A仲介手数料の増加により来年の米国の投資銀行の収入が大きく伸びるとするリポートも報道されている。銀行株の「アクセル・シナリオ」はなお健在と期待したくなる。

 当コラムでは、11月11日付けで業績を上方修正し配当を増配した地銀株を中心に取り上げた。ただ銀行株は、なお低PER・PBR、高配当利回りのバリュー株の宝庫である。低PBRに至っては、全市場ベースの低PBRランキングのトップ5には、5行がランクインし、このうち第1位に並ぶ高知銀行<8416>(東証スタンダード)と宮崎太陽銀行<8560>(福証)のPBRはわずか0.16倍にとどまる。銀行株に広く網を張って日米中央銀行の12月18日、19日の「運命の日」のイベントを待つのも一法となりそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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