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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】パシフィックネットは第1四半期大幅減益を嫌気した売り一巡、評価材料多彩
- 2015/10/30 06:34
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
パシフィックネット<3021>(東マ)は、中古パソコン・モバイル機器のリユース・データ消去を展開するセキュリティサービス提供企業で、周辺領域への事業展開も推進している。株価は第1四半期(6月~8月)の大幅減益を嫌気して急落したが売られ過ぎ感も強めている。2%台後半の配当利回り、マイナンバー関連、サイバーセキュリティ関連、インバウンド需要関連、MVNO関連など評価材料は多彩だ。反発のタイミングだろう。
■中古情報機器の引取回収・販売などリユース・データ消去事業を展開
中古パソコン・モバイル機器のリユース・データ消去を展開するセキュリティサービス提供企業である。パソコン、タブレット端末、スマートフォンなど中古情報機器の引取回収・販売事業を主力として、レンタル事業も展開している。
13年10月に旗艦店としてオープンした「PC-NETアキバ本店」や、15年7月オープンした「PCNET秋葉原ジャンク通り店」など全国主要都市に10店舗を展開している。なおインバウンド需要に対応して15年5月期に7店舗を免税店化した。
主要仕入先のリース・レンタル会社や一般企業からの引取回収強化、生産性向上、業務プロセス効率化などで収益力を高めている。
■データ消去・処分サービスなどセキュリティ体制に強み
全国主要都市の引取回収拠点や、ISO27001(ISMS)およびプライバシーマークに準拠した情報漏洩防止のためのセキュリティ体制に強みを持っている。IT機器のデータ消去・処分サービスはマイナンバー制度のガイドラインに完全対応し、データ消去証明書発行サービスも行っている。
企業や官公庁のセキュリティ意識やコンプライアンス意識の向上を背景として、中古情報機器の入荷台数が大幅に増加している。そしてデータ消去サービスなども奏功して顧客カバー率が一段と広がり、大手金融機関からの中古情報機器引取回収も本格化している。
14年10月には企業・官公庁・自治体での使用済みIT機器の回収からデータ消去までの一連の作業を大幅に効率化する日本初のWebサービス「P-Bridge」の無償提供を開始した。IT資産管理ソフト大手エムオーテックス社とデータ連携し、当社の引取回収サービスの提供価値を高める戦略だ。
なお「P-Bridge」に関して15年2月に特許出願し、10月21日には特許を取得したと発表した。今後は「P-Bridge」をソリューション・プラットフォームと位置付けて新たなサービスも投入する方針だ。
15年5月には、電子記録メディア破壊機メーカーの日東造機から、オンサイト・オフサイトデータ物理破壊消去サービスの最優秀会社として「Crush Box プラチナサービスリセラー」の第1号に認定された。
■リユースの社会的取り組みを強化
14年11月には、Windowsクラスルーム協議会の「Windowsクラスルーム包括プログラム」のサービスメニューとして「教育機関のお客様向けECOサービス」を展開すると発表した。教育現場におけるICT機器導入時・処分時のコスト削減サービスや、ICT機器処分時の情報漏洩などセキュリティリスクを軽減するサービスを教育機関向けに提供する。
15年4月にはイオンリテールとApple製品等の下取りサービスにおいて協業した。イオンリテールが運営するApple製品専門店「NEWCOM(ニューコム)イオンレイクタウン店」(埼玉県越谷市)における下取りサービスを協業で展開して仕入強化に繋げる。
15年7月には特定非営利活動法人.sopa.jpと共に、子どもの学習支援と企業の使用済みパソコンの最活用を行うCSRプログラム「リユースforキッズ」の開始を発表した。なお「リユースforキッズ」の取り組みは環境省の「平成27年度使用済製品等のリユースに関するモデル事業」として採択された。
■周辺領域への事業展開も推進
持続的な成長に向けて、モバイル・IoT・マイナンバーなど技術革新・社会的要請に対応した新たなレンタル市場・リユース市場・周辺事業への展開も推進している。
15年5月に開催された「第6回教育ITソリューションEXPO」では、サービス面で補完関係にある指紋認証ソリューションのディー・ディー・エス<3782>と、マイナンバー制度に対応した情報漏洩対策を共同で特別展示する新たな取り組みも行った。
10月6日には、光通信<9435>と合弁会社2B(トゥー ビー)を設立して、BtoB専門のMVNO(仮想移動体通信事業者)事業に進出(設立15年10月23日、営業開始11月1日予定)すると発表した。出資比率は当社51%、光通信49%である。
10月13日には、ドローン(無人航空機)の法人向けレンタルを11月2日から開始すると発表した。世界のドローンのトップシェアメーカーであるDJI社製の最新モデル「ファントム3」を貸し出す。
また10月14日には、企業のマイナンバー制度対策をワンストップでサポートする「マイナンバー安心パック」を11月から提供開始すると発表した。
なお10月27日には、光通信との合弁会社2Bが11月1日の事業開始にあたって、WindowsOS搭載のタブレットおよびモバイル機器の取り扱い開始を正式決定したと発表している。法人向け通信サービスBizmo(ビズモ)の第一弾として、WindowsOSを最新スマートデバイスと2BオリジナルSIMとセットで提供する。
■中古情報機器の流通量の影響を受けやすい収益構造
なお15年5月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(6月~8月)11億50百万円、第2四半期(9月~11月)10億86百万円、第3四半期(12月~2月)10億52百万円、第4四半期(3月~5月)12億03百万円、営業利益は第1四半期1億19百万円、第2四半期32百万円、第3四半期36百万円、第4四半期40百万円だった。
中古情報機器の流通量の影響を受けやすい収益構造である。また15年5月期の配当性向は45.4%だった。ROEは14年5月期比0.8ポイント低下して9.7%、自己資本比率は同6.1ポイント低下して62.8%となった。
■16年5月期第1四半期は大幅減益、通期増益予想は据え置き
10月15日に発表した今期(16年5月期)第1四半期(6月~8月)の連結業績は、売上高が前年同期比6.9%減の10億70百万円、営業利益が同95.2%減の5百万円、経常利益が同89.3%減の13百万円、純利益が同93.0%減の5百万円だった。
中古モバイル機器は調達、卸販売、個人向け販売が好調に推移したが、14年4月の「WindowsXP」サポート終了に伴う入れ替え需要の反動減、円安によるパソコン価格の高止まり、新OS「Windows10」リリースを見据えた買い控えの発生などの影響で、企業等からの中古パソコンの排出台数が急激に落ち込んだ。また持続的成長が可能な事業構造への転換を図るための諸施策と先行投資を積極的に推進したため、各利益とも大幅減益となった。
セグメント別に見ると、主力の引取回収・販売事業は中古パソコン入荷減の影響で売上高が同12.3%減の8億95百万円、営業利益が16百万円の赤字(前年同期は1億19百万円の黒字)、レンタル事業は営業強化が奏功して売上高が同35.5%増の1億74百万円、営業利益が22百万円(同0百万円の赤字)だった。なおレンタル事業の第1四半期末時点の受注残高は同2.0倍の10億66百万円となった。
通期の連結業績予想は前回予想(7月15日公表)を据え置いて売上高が前期比11.3%増の50億円、営業利益が同36.3%増の3億10百万円、経常利益が同29.9%増の3億18百万円、純利益が同16.7%増の2億12百万円としている。
中古パソコンは「WindowsXP」サポート終了に伴う入れ替え需要反動減の状況が続くが、官公庁・企業におけるセキュリティ意識の高まりを背景に、データ消去サービスなど顧客対応強化策を推進する。また中古モバイル機器市場が拡大基調であることや、レンタル事業の受注残高が増加基調であることも寄与して増収増益予想としている。マイナンバー関連やインバウンド関連の需要も期待される。
なお配当予想(7月15日公表)は同3円増配の年間19円(期末一括)としている。予想配当性向は46.2%となる。配当については、継続的な利益還元を基本としたうえで業績連動型の配当方式を採用し、当期純利益の30%以上を配当性向の目安として決定することを基本方針としている。
通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が21.4%、営業利益が1.6%、経常利益が4.1%、純利益が2.4%と低水準だ。しかし期初時点で下期偏重の計画であり、第2四半期累計(6月~11月)の計画は前年同期比26.7%営業減益、同28.9%経常減益、同27.2%最終減益としている。第1四半期の進捗率は低水準だったが、下期の挽回が期待される。
■中期経営計画で18年5月期ROE10%以上目標
15年7月に中期経営計画「VISION2018」を発表した。次の3ヶ年を「持続的成長・高い収益性を可能とする新たな事業モデルへのステップ」と位置付けた。また東証1部への市場変更も目指すとしている。
成長への基本戦略は、競争優位の確立と営業マーケティング強化による顧客拡大、モバイル・IoT・マイナンバーなど技術革新・社会的要請に対応した新たなレンタル市場・リユース市場・周辺事業の創出と展開、レンタル事業の拡大とリユース事業との相乗効果の発揮、戦略実行力の強化と自律型組織・人財への変革としている。
そして経営目標値には18年5月期売上高65億円、営業利益6億円、営業利益率9.2%、ROE10.0%以上を掲げている。リユース市場の拡大も背景として収益拡大基調が期待される。
■株価は急落したが売られ過ぎ感
株価の動きを見ると、MVNO事業への進出発表を好感した10月9日の年初来高値1249円から利益確定売りで反落し、さらに第1四半期の大幅減益を嫌気して10月29日には668円まで調整した。
10月29日の終値679円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS41円15銭で算出)は16~17倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間19円で算出)は2.8%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS371円92銭で算出)は1.8倍近辺である。時価総額は約35億円である。
日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が15%程度に拡大して売られ過ぎ感も強めている。また週足チャートで見ると13週移動平均線を割り込んだが、26週移動平均線がサポートラインとなりそうだ。2%台後半の配当利回り、マイナンバー関連、サイバーセキュリティ関連、インバウンド需要関連、MVNO関連など評価材料は多彩だ。反発のタイミングだろう。