ファンデリー、25年3月期は増収・営業増益予想、MFD・CID事業の好調で業績を牽引

 ファンデリー<3137>(東証グロース)は、健康冷凍食「ミールタイム」宅配のMFD事業、ハイブランド冷凍食「旬をすぐに」のCID事業、および周辺領域のマーケティング事業を展開し、ヘルスケア総合企業を目指している。CID事業では卸売やスーパーマーケットでの小売を強化している。25年3月期は増収・営業増益予想としている。MFD事業のアクティブ会員数が回復傾向であり、CID事業の営業損益も第3四半期以降のリテール販売の拡大により改善見込みとしている。またマーケティング事業は期初時点で下期偏重の計画である。積極的な事業展開で収益改善基調を期待したい。株価は反発力が鈍く安値圏だが、調整一巡して出直りを期待したい。

■ヘルスケア総合企業を目指す

 企業理念のビジョンに「豊かな未来社会」の実現を掲げ、健康冷凍食「ミールタイム」宅配のMFD(Medical Food Delivery)事業、20年7月開始したハイブランド冷凍食「旬をすぐに」宅配のCID(Cooking Immediately Delivery)事業、および周辺領域のマーケティング事業(食品メーカー等の企業向けマーケティング支援サービス)を展開している。23年3月には低栄養・フレイル・サルコペニアの予防・対策に関して、医師による食と健康法をアドバイスするWebメディアを開設した。

 24年3月期のセグメント別業績(調整前)は、MFD事業の売上高が20億64百万円で営業利益が3億24百万円、CID事業の売上高が2億45百万円で営業利益が3億23百万円の損失、マーケティング事業の売上高が4億75百万円で営業利益が3億42百万円だった。

 成長戦略としてヘルスケア総合企業を目指し、CID事業の埼玉工場が稼働してSPA(製造小売業)モデルへの事業構造転換を推進している。一人暮らし高齢者、生活習慣病患者、食事制限対象者の増加などで健康食宅配市場は拡大基調だろう。

■健康冷凍食「ミールタイム」宅配のMFD事業

 MFD事業は、健康冷凍食(冷凍弁当)の通販カタログ「ミールタイム」を医療機関や調剤薬局などを通じて配布し、顧客(個人)から注文を受けて宅配する。製造は外部に委託している。従来の食事宅配サービスと一線を画し、食事コントロールを通じた血液検査結果の数値改善を目指している。

 全国の医療機関や調剤薬局など約2万ヶ所の紹介ネットワークを通じた効率的な顧客獲得、専門性の高い栄養士による「ヘルシー食」「たんぱく質調整食」「ケア食」そして「パワーアップ食」など多様な健康食の開発やカウンセリングを強みとして、栄養士が顧客の疾病・制限数値・嗜好などに合わせてメニューを選び、定期的に届ける「栄養士おまかせ定期便」も提供している。製造は外部に委託している。

 24年3月期末のアクティブ会員数(過去1年以内に1回以上購入した会員数)は23年3月期末比2234人減少の2万4088人、アクティブ会員の月間ARPUは935円減少の1万5003円、定期コース会員数は317人減少の6084人、紹介ネットワークは167箇所減少の1万9698箇所となっている。

 コロナ禍に伴う外来患者減少などで病院等の紹介ネットワークを通じた新規顧客獲得が減少しているため、紹介ネットワーク活性化に向けて22年5月に神奈川支社を開設した。営業拠点としては本社(東京都北区)および大阪支社に続いて3拠点目となる。紹介ネットワーク数2万3500箇所(23年3月期末時点で1万9865箇所)に向けてアクションを開始した。

■ハイブランド冷凍食「旬をすぐに」のCID事業

 ハイブランド冷凍食「旬をすぐに」宅配のCID事業は、21年3月期第2四半期に開始した自社工場(埼玉工場)で製造する冷凍食の製造小売事業である。健康な身体はバランスの良い食事からという考えのもと、食の安心・安全にこだわり、国産食材100%であること、健康被害の恐れのある67種類の食品添加物を使用していないこと、食材ごとに異なる最適な加熱温度特許技術で1℃単位のコントロールを行っていること、冷凍工学に基づいた究極の特許冷凍技術で-70℃の瞬間凍結を行っていることなど、従来の冷凍弁当とは一線を画すクオリティの高さを特徴としている。

 管理栄養士が考えた栄養バランスや、特許加熱・冷凍による美味しさが特徴のメニュー構成である。コスト面では全国の生産者で構成する「旬すぐ共栄会」を通して、栄養価の高い旬の食材を収穫量が多く価格が下がる時期に仕入れる。商品力強化の面では21年12月に、メニュー評価などでAIが顧客の嗜好を学習し、毎日発売される約250種類のメニューから一人ひとりに最適化したメニューを提案する「AI旬すぐ」サービスを開始した。21年1月にはワンランク上の美味しさを追求した新ブランドPREMIUMシリーズを販売開始し、さらに22年12月にはPREMIUMを超えた最高峰ブランド「SUPER PREMIUM」シリーズを創設した。商品構成変化による平均単価上昇も期待される。

 24年3月にはNTT東日本グループのNTTアグリテクノロジーとの協業を発表した。最先端農業ハウスで収穫した規格外の野菜を使用してコラボ商品を製造・販売する。第一弾としてトマトの甘みと酸味が味わえる2メニューを商品化する。またNTTアグリテクノロジーへ「旬をすぐに」の卸売販売もスタートする。食品ロスの削減や「旬をすぐに」の販売拡大を推進する。24年6月には小売店舗での販売も開始し、卸売やスーパーマーケットでの小売を強化している。

 なお24年3月期末時点のアクティブ会員数は23年3月期末比2984人減少の3148人、アクティブ会員の月間ARPUは2542円増加の8417円、AI旬すぐ会員数は383人減少の1072人となっている。ARPUの増加は送料体系の変更も寄与した。

■周辺領域のマーケティング事業

 マーケティング事業は健康食宅配サービスから派生した周辺事業として、食品メーカーなどへの健康食通販カタログ誌面の広告枠販売、食品メーカーからの商品サンプリングや健康食レシピ作成の業務受託、健康食レシピサイト運営などを展開し、収益源の多様化を推進している。

■健康意識を高めるための「らくだ6.0プロジェクト」

 日々の食事において塩分摂取量を適正に保つことの重要性を啓蒙し、日本全体の健康意識を高めるための「らくだ6.0プロジェクト」も展開している。賛同企業として24年4月にイカリソース、24年5月に恩地食品、寿がきや食品、マエカワテイスト、もり、通宝、24年6月に大森屋、浅利佐助商店、24年9月に一正蒲鉾、オタフクソース、24年10月にカルビー、24年11月に山崎製パン、カゴメ、24年12月にはくばく、亀田製菓、大塚食品が新規加入し、賛同企業は48社、認定商品は115品となっている。

■25年3月期営業増益予想で収益改善基調

 25年3月期の業績(非連結)予想は売上高が24年3月期比16.1%増の30億72百万円、営業利益が6.9%増の62百万円、経常利益が63.1%減の20百万円、当期純利益が71.2%減の19百万円としている。

 第2四半期累計(中間期)は、売上高が前年同期比14.5%減の11億64百万円、営業利益が1億28百万円の損失(前年同期46百万円)、経常利益が1億52百万円の損失(同24百万円)、四半期(中間)純利益が1億53百万円の損失(同23百万円)だった。期初計画を下回り減収・赤字だった。当期はマーケティング事業が下期偏重であることに加え、MFD事業の新規会員獲得が計画を下回ったことも影響した。

 MFD事業は売上高が7.7%減の9億68百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が23.3%減の1億24百万円だった。減収減益だった。新規会員獲得が計画を下回り、定期購入顧客数が減少した。仕入原価の高騰も影響した。なお四半期別売上高を見ると、24年3月期第4四半期の4億68百万円をボトムとして、25年3月期第1四半期が4億81百万円、第2四半期が4億86百万円と回復傾向になっている。また会員数で見ると、第2四半期の定期コース会員数は6051人となって減少が続いているが、アクティブ会員数は24年3月期第3四半期の2万4044人をボトムとして、第4四半期が2万4088人、25年3月期第1四半期が2万4646人、第2四半期が2万5084人と回復傾向になっている。第2四半期末時点の紹介ネットワーク数は1万9808箇所だった。

 CID事業は売上高(セグメント間の内部売上高含む)が45.8%減の69百万円、利益が1億99百万円の損失(前年同期は1億55百万円の損失)だった。販売数が減少したことに加え、製造品目見直しに伴って製造数の調整を実施したことも影響して営業損失が拡大した。

 マーケティング事業は売上高が42.6%減の1億46百万円、利益が49.3%減の92百万円だった。業務受託案件の減少で大幅減収減益だが、第3四半期以降の獲得見込み案件が多数あるため、当期は下期偏重の計画としている。

 全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が5億84百万円で営業利益が48百万円の損失、第2四半期は売上高が5億80百万円で営業利益が80百万円の損失だった。

 通期の業績(非連結)予想は据え置いている。セグメント別計画は、MFD事業の売上高が16.6%増の24億06百万円でセグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が12.1%増の3億63百万円、CID事業の売上高(セグメント間の内部売上高含む)が24.0%減の1億86百万円で利益が3億68百万円の損失(24年3月期は2億05百万円の損失)、マーケティング事業の売上高が9.4%増の5億20百万円で利益が7.4%増の3億67百万円としている。

 経常利益と当期純利益については支払利息の増加などを考慮して減益予想だが、売上面はMFD事業の受注増加やマーケティング事業の堅調推移などで2桁増収を見込み、営業利益は人件費や広告宣伝費などの増加を吸収して増益予想としている。MFD事業のアクティブ会員数が回復傾向であり、CID事業の営業損益も第3四半期以降のリテール販売の拡大により改善見込みとしている。またマーケティング事業は期初時点で下期偏重の計画である。積極的な事業展開で収益回改善基調を期待したい。

■株価は調整一巡

 株価は反発力が鈍く安値圏だが、調整一巡して出直りを期待したい。12月18日の終値は226円、今期予想PER(会社予想のEPS3円01銭で算出)は約75倍、前期実績PBR(前期実績のBPS64円00銭で算出)は約3.5倍、そして時価総額は約15億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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