JPホールディングス、25年3月期は受入児童数の増加と効率的な運営で増収増益予想、さらに上振れの可能性
- 2024/12/20 10:18
- アナリスト銘柄分析
JPホールディングス<2749>(東証プライム)は子育て支援のリーディングカンパニーである。長期ビジョンに「選ばれ続ける園・施設づくり」を掲げ、認可保育園・学童クラブ運営を中心に子育て支援の質的向上と事業を通じた社会貢献を推進するとともに、新規領域への展開も推進している。25年3月期は受入児童数の順調な増加や施設の効率的運営などにより増収増益予想としている。中間期の進捗率が高水準であり、期後半の構成比が高い収益特性も考慮すれば通期予想は上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は13年の最高値を抜けずに反落して上値を切り下げる形となったが、一方では大きく下押す動きも見られない。調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。
■総合子育て支援のリーディングカンパニー
子育て支援のリーディングカンパニーである。長期ビジョンに「選ばれ続ける園・施設づくり」を掲げ、認可保育園・学童クラブ運営を中心に子育て支援の質的向上と事業を通じた社会貢献を推進するとともに、新規領域への展開も推進している。事業区分は認可保育園や学童クラブなどを運営する子育て支援事業、保育所向け給食請負事業、英語・体操・音楽教室請負事業、保育関連用品の物品販売事業、研究・研修・コンサルティング事業としている。
23年10月にダスキン<4665>と業務提携契約を締結した。そして21年1月に資本業務提携して第1位株主となっていた学研ホールディングス<9470>が保有する全株式をダスキンへ譲渡(23年11月)し、ダスキンが第1位株主となった。学研ホールディングスとの業務提携は継続する。
■保育園は期末に向けて児童数増加・稼働率上昇
グループは持株会社の同社、全国で保育園・学童クラブ・児童館などの子育て支援施設を運営する日本保育サービス、保育園向け給食請負などを行うジェイキッチン、子育て支援施設向け英語・体操・音楽教室の請負、保育関連用品の企画・販売、保育や発達支援に関する研修・研究、保育所等訪問支援、子育て支援プラットフォーム「コドメル」運営などを行う日本保育総合研研究所、コンサルティングを行う子育てサポートリアルティ、外国人の就労支援を行うワンズウィル(24年1月子会社化)で構成されている。
24年4月1日時点の運営施設数は首都圏を中心に、保育園が205園、こども園が4園、学童クラブが96施設、児童館が13施設、交流館が2施設、子育て支援施設合計が320施設となっている。なお23年4月に同社グループ初となる英語に特化した新業態としてバイリンガル保育園を首都圏で3施設開設するなど、既存保育園のバイリンガル保育園への業態変更も推進している。
収益は既存施設の稼働率、新規施設の開園、保育士待遇改善に伴う人件費の増加、補助金の増減などが影響する。また新規施設の開園は概ね4月のため、期前半は各施設への保育士配置に係る費用が先行するが、児童数が増加して稼働率が上昇する期後半に向けて収益が拡大する特性がある。自治体から受け取っている保育士の借り上げ社宅に対する補助金等については、従来は補助金収入として営業外収益に計上していたが、22年3月期から売上高に計上する方法に変更した。
■長期経営ビジョンは「選ばれ続ける園・施設」
子育て支援事業を取り巻く事業環境としては、保育園の待機児童問題が概ね解消した一方で、学童クラブの待機児童数増加対策などが新たな政策テーマに浮上し、新たな少子化対策および幼児教育・保育の質的向上対策として24年度より、親の就労を問わず生後6ヶ月から2歳を対象に誰でも保育を利用できる「こども誰でも通園制度(仮称)」の開始、保育士配置基準における対人数の変更、出産を機に退職した親が再就職する際にこどもを保育所に預けやすくする保育所「入所予約枠」制度の開始、これまで特別区で運用していた地域限定保育士の全国運用の開始、保育士不足緩和に向けた保育補助者支援金の有資格者への拡大などが推進されている。
こうした事業環境を背景として、長期経営ビジョンでは「選ばれ続ける園・施設」を目指し、連結売上高1000億円(既存事業500億円、新規事業・M&A500億円)に向けて既存事業改善・拡大、新規事業、資本・業務提携を推進している。
さらに中期経営計画(ローリング方式により年次で見直し実施)では、目標数値として27年3月期売上高401億65百万円、営業利益50億73百万円、営業利益率13%、ROE20%超などを掲げている。株主還元方針は配当性向30%を目指すとした。基本方針として引き続き成長・競争優位性の確立、収益構造改革、経営基盤改革を推進する。
成長・競争優位性の確立では、新規事業として国内外専門人材派遣・紹介事業の規模並びに収益拡大、グローバル対応に向けた東南アジアを中心とする現地企業と連携した早期施設展開、既存事業拡大を見据えた新たな学習プログラムおよび地域連携による「選ばれ続ける園・施設づくり」の推進、ドミナント戦略に基づく学童クラブ・児童館受託運営の現在の2倍への早期拡大、保護者の困りごと並びに社会問題解決に向けた新たな事業展開、積極的なM&A推進を推進する。また収益構造改革では経営の効率化・コスト削減、収益基盤の強化、経営基盤改革では人財育成・風土刷新、経営管理の高度化、SDGsおよび環境改善に向けた取り組み強化を推進する。
23年1月には埼玉県草加市の草加市立松原児童青少年交流センターmiraton(ミラトン)の受託運営を開始した。30歳までのこどもと若者を中心に誰でも使える施設で、児童館の機能に加えて青少年の活動の場、多世代交流の場、さらに文化交流の振興や音楽活動の場として複合機能を有する施設である。こうした複合施設の全施設の受託運営はグループ初となる。
24年6月には東京都で学童保育を運営する事業者が集まり、学童保育の質の向上を目指す東京都学童保育協会を設立した。24年7月にはインクルーシブ保育(障害のある子、特別の配慮の必要な子を区別せず、同じ空間で保育を行い、それぞれの子の個性を尊重し認め合う保育)のさらなる機会拡大を図るため、AIAIグループ<6557>の子会社であるAIAI Child Careが提供する保育所等訪問支援サービス「AIAI VISIT」を千葉エリアの保育園3園に導入した。
24年9月には「子育て支援日本一」を目指し、子育て支援の充実に向けた様々な施策を実施している茨城県境町と、子育て支援に関する協定を締結した。そして24年11月には茨城県境町へ「企業版ふるさと納税制度」を活用した寄付を行った。
■子育て支援とSDGsの両立に向けた「コドメル」サービス
子育て支援と資源の有効活用・環境保全(SDGs)の両立を目的として、会員制の子育て支援プラットフォーム「コドメル(codomel)」サービスを強化している。全国で運営する300超の子育て支援施設(保育所、学童クラブ、児童館)の園児・児童と、その保護者を会員化して、乳児期・幼児期・学童期において子育てに関する様々な商品やサービスを幅広く提供する。
第1弾サービスとして22年4月より、子育て関連用品を中心とするリユース品に関する「子育て商品マッチングサービス」を開始した。24年6月には業務提携先であるダスキン本社、およびダスキン東京オフィスに子育て関連商品の「コドメル寄付受付BOX」を設置した。今後は第2フェーズとして子育て世代に商品や様々なサービスを提供するBtoC事業、第3フェーズとして東南アジアへのサービス展開を推進する。そして6年目に取扱高18億円を目指し、新たな事業柱を構築する方針だ。
さらに新規領域への展開も推進している。保護者の困りごとの解決に向けた事業展開では、自宅で簡単に調理できる「夕食準備」として、東京都・神奈川県・埼玉県で運営する保育園10園において23年8月より食品のテスト販売を開始した。テスト販売の状況を確認し、販売する保育園の拡大や商品ラインナップの拡充を図り、同業他社への外販や子育て支援プラットフォーム「コドメル」を活用したWebでの販売も検討する方針としている。
■25年3月期増収増益予想、さらに上振れの可能性
25年3月期の連結業績予想は売上高が24年3月期比1.8%増の385億28百万円、営業利益が3.6%増の47億51百万円、経常利益が5.6%増の47億78百万円、そして親会社株主帰属当期純利益が6.0%増の31億06百万円としている。配当予想は24年3月期比1円50銭増配の9円50銭(期末一括)としている。連続増配で予想配当性向は26.1%となる。
第2四半期累計(中間期)は、売上高が前年同期比6.6%増の192億51百万円、営業利益が34.6%増の27億20百万円、経常利益が39.2%増の27億35百万円、親会社株主帰属四半期(中間期)純利益が51.7%増の19億40百万円だった。
増収・大幅増益だった。物価高騰等による補助金の減収や処遇改善による人件費の増加などがあったものの、新規施設の開設・受託、「選ばれ続ける園・施設づくり」に向けた各種施策による期中の児童数増加などに加え、異次元の少子化対策として実施された対人数の変更(4・5歳児の預かり児童数に対応した保育士配置基準見直し)などが寄与した。売上総利益率は2.4ポイント上昇、販管費比率は0.6ポイント低下した。純利益については特別利益(本社所在地域の再開発に伴う本社移転補償金2億01百万円)計上も寄与した。
施設開設は保育所2園(うち1園は東京都認証保育所から認可保育園へ移行)、認可保育園からこども園へ移行4園、学童クラブ・児童館17施設、交流館2施設の合計20施設(認可保育園・こども園への移行施設を除く)で、第2四半期末時点の子育て支援施設数は保育園205園、こども園4園、学童クラブ96施設、児童館13施設、交流館2施設、合計320施設となった。
なお全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高96億円、営業利益13億98百万円、経常利益14億05百万円、第2四半期は売上高96億51百万円、営業利益13億22百万円、経常利益13億30百万円だった。
通期の連結業績予想は据え置いている。児童数の順調な増加、24年1月に子会社化したワンズウィルの連結、施設の効率的な運営などにより小幅増収増益予想としている。ただし第2四半期累計の進捗率は売上高が50%、営業利益が57%、経常利益が57%、純利益が62%と高水準であり、期後半の構成比が高い収益特性も考慮すれば通期予想は上振れの可能性が高く、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株価は調整一巡
株価は13年の最高値を抜けずに反落して上値を切り下げる形となったが、調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。12月19日の終値は648円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS36円39銭で算出)は約18倍、今期予想配当利回り(会社予想の9円50銭で算出)は約1.5%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS188円71銭で算出)は約3.4倍、そして時価総額は約569億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)
(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)