ゼリア新薬工業は年初来高値更新の展開、25年3月期は医療用・一般用医薬品事業が好調で増収増益予想、さらに再上振れ余地
- 2024/12/20 10:19
- アナリスト銘柄分析
ゼリア新薬工業<4559>(東証プライム)は消化器分野が中心の医療用医薬品事業、および一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。第11次中期経営計画では、好調な欧州事業に加えてアジア地域での事業展開も推進する方針としている。国内では医療用医薬品市場におけるプレゼンスの確保や、コンシューマーヘルスケア事業の拡大を推進している。25年3月期は医療用医薬品事業、コンシューマーヘルスケア事業とも伸長して増収増益予想(11月5日付で上方修正)としている。通期会社予想には再上振れ余地があり、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は順調に水準を切り上げて年初来高値更新の展開だ。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。
■医療用医薬品事業とコンシューマーヘルスケア事業を展開
消化器分野が中心の医療用医薬品事業、および一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。収益面では薬価改定、ライセンス収入・ロイヤリティ収入、研究開発費、広告宣伝費などの影響を受けやすい。
24年3月期のセグメント別業績は、医療用医薬品事業の売上高が495億71百万円で営業利益(全社費用等調整前)が92億46百万円、コンシューマーヘルスケア事業の売上高が259億98百万円で営業利益が52億60百万円、その他(保険代理業・不動産賃貸収入)の売上高が1億54百万円で営業利益が2億51百万円、全社費用等調整額が▲51億36百万円だった。地域別売上高は日本が367億52百万円、イギリスが95億39百万円、欧州が244億07百万円、その他が50億25百万円だった。
■医療用医薬品事業は潰瘍性大腸炎治療剤アサコールなどが主力
医療用医薬品事業は、潰瘍性大腸炎治療剤アサコールを主力として、炎症性腸疾患治療剤Entocort(エントコート、国内販売名ゼンタコート)や、機能性ディスペプシア治療剤(FD)アコファイドなども拡大している。20年9月に国内で販売開始した鉄欠乏性貧血治療剤フェインジェクトについては、消化器科・産婦人科を中心に市場構築を推進している。23年4月には、アステラス製薬が日本において製造販売しているクロストリジウム・ディフィシルによる感染性腸炎治療剤「ダフクリア錠200mg」(一般名:フィダキソマイシン、以下:ダフクリア)について製造販売承認を継承した。
24年3月期の主要製品の売上高はアサコールが209億18百万円、ディフィクリアが135億08百万円、エントコートが54億16百万円、アコファイドが30億67百万円、その他が66億61百万円だった。
海外展開は、アサコールについては欧州を中心に高用量製剤の販売国数を拡大中である。競合する高用量製剤の処方獲得を目指してプロモーションを展開している。アコファイドについては、Meiji Seika ファルマとタイにおける独占的開発・販売ライセンス契約、スペインのFAES社とラテンアメリカにおける独占的開発・販売ライセンス契約を締結している。また24年6月にはベルギーのAgastra社と、欧州・米国・カナダ地域における機能性ディスペプシア治療剤としての独占的開発および販売に関する契約を締結した。
子会社のTillotts Pharma(ティロッツ社、スイス)は、アストラゼネカ社からエントコートの米国を除く全世界における権利を取得(国内ではゼンタコートカプセルとして販売)し、アサコールとともに海外での拡販を推進している。また20年11月に、アステラス製薬の英国子会社からクロストリジウム・ディフィシル感染症治療剤ディフィクリア錠(英名DIFICLIR)の欧州、中東、アフリカおよび独立国家共同体(CIS)における製造販売承認を承継し、販売を拡大している。
24年11月には子会社のティロッツ社がShanghai Pioneer Holdihg Ltd傘下の香港Pioneerと、潰瘍性大腸炎治療剤ASACOL錠800mgの中国におけるマーケティングに関する契約を締結した。
■コンシューマーヘルスケア事業はヘパリーゼ群などが主力
コンシューマーヘルスケア事業はヘパリーゼ群、コンドロイチン群、ウィズワン群を主力として、日本で初めて月経前症候群の効能を取得した西洋ハーブ・ダイレクトOTC医薬品プレフェミン、連結子会社イオナ インターナショナルの「イオナ」ブランド化粧品なども全国の薬局・薬店・ドラッグストアなどに販売している。
24年3月期の主要製品の売上高は、ヘパリーゼ群が109億68百万円、コンドロイチン群が57億52百万円、ウィズワン群が12億92百万円、その他が79億85百万円だった。
事業拡大に向けて、西洋ハーブ群の開発・育成、ヘパリーゼ群およびコンドロイチン群に続く新規主力製品の開発・育成、既存製品(OTC医薬品プレバリン群、オーラルケアのマスデント群やイオナ化粧品など)の育成を推進している。20年4月にはヘパリーゼ群の主原料である肝臓加水分解物の安定調達とコンシューマーヘルスケア事業拡大を目的として、日水製薬<4550>から日水製薬医薬品販売の全株式を譲り受けて子会社化(現社名:健創製薬)した。なお、生産拠点の集約や最適化を目的として、25年4月1日付(予定)で健創製薬を吸収合併する。
24年3月には、デンマークの子会社ZPD A/Sが、デンマークの栄養補助食品の原料メーカーであるEHP ApSと共同で、栄養補助食品の企画・販売会社JoinHealth ApSを設立し、デンマークにおいてコンドロイチン硫酸を配合した栄養補助食品「Movagain Pro」を発売した。デンマークにおいて唯一のコンドロイチン硫酸を配合した栄養補助食品である。
24年10月には、ヘパリーゼWシリーズの新製品ヘパリーゼWシャイン(清涼飲料水)を、全国のコンビニエンスストアで販売開始した。
■消化器分野を最重点領域として新薬開発を推進
消化器分野を最重点領域と位置付けて新薬開発を推進している。新薬パイプラインの状況(24年11月6日現在)は以下の通りである。
高カリウム血症治療薬ZG-801(ビフォーファーマ社から導入、ビルタサ)については、日本において24年9月に国内製造販売承認を取得した。なお海外では米国、カナダ、欧州諸国など世界41ヶ国(24年9月時点)で承認されている。
Z-338(自社品、一般名アコチアミド)は、日本では小児機能性ディスペプシアを適応症として第3相段階、ZG-802(自社品、一般名アコチアミド)は低活動膀胱を適応症として第2相段階である。
Z-338の海外導出に関しては、Faes Farmaが機能性ディスペプシアを適応症としてエクアドル、ドミニカ共和国、ホンジュラス、エルサルバドル、チリで24年3~5月に販売開始、ペルー、グアテマラで承認取得、コロンビア、コスタリカ、パナマ、ニカラグアにおいて承認申請中である。また、Meiji Seikaファルマが機能性ディスペプシアを適応症としてタイで24年9月に販売開始、Pharmaceutical Joint Stock Company of February 3rdが機能性ディスペプシアを適応症としてベトナムで承認申請中、United Italian Trading Borporationが機能性ディスペプシアを適応症としてシンガポールで承認申請中、Agastra―Labが機能性ディスペプシアを適応症として欧州・米国・カナダで第3相段階となっている。
なお23年7月には、子会社のTillotts Pharmaが世界的ベンチャーキャピタル大手TVMと共同で、潰瘍性大腸炎に対する経口抗体療法開発を目的として、米国のバイオベンチャーMage Bioに対して最大28百万USドル出資した。
■好調な欧州事業に加えてアジア地域での事業展開も推進
第11次中期経営計画(24年3月期~26年3月期)では経営目標値に、最終年度26年3月期連結売上高900億円、海外売上比率50%以上を掲げている。
重点戦略としては、欧州地域における継続的な市場形成(アサコール、ディフィクリア)に加えて、アジア地域への展開(ゼリア新薬工業の製品輸出拡大、ベトナムFTファーマの新工場建設や東南アジア近隣諸国への製品輸出拡大)を推進する。また国内の医療用医薬品事業では、自社創薬品であるアコファイドをはじめ、フェインジェクト、ダフクリアの拡販に加えて、第11次中期経営計画中に上市が見込まれる高カリウム血症治療剤ZG-801の投入などにより、国内医療用医薬品市場におけるプレゼンスを確保する。コンシューマーヘルスケア事業では、コンドロイチン群やヘパリーゼ群などの主力製品群に加えて、ローヤルゼリー群、西洋ハーブ群、化粧品群など多くの製品群において市場拡大を図る。
■25年3月期増収増益予想で再上振れ余地
25年3月期の連結業績予想(11月5日付で上方修正)は、売上高が24年3月期比13.6%増の860億円、営業利益が14.3%増の110億円、経常利益が29.2%増の110億円、親会社株主帰属当期純利益が9.9%増の85億円としている。配当予想は据え置いて24年3月期比2円増配の46円(第2四半期末23円、期末23円)としている。連続増配で予想配当性向は23.9%となる。
第2四半期累計(中間期)は売上高が前年同期比15.7%増の424億22百万円、営業利益が21.2%増の64億59百万円、経常利益が44.6%増の79億49百万円、そして親会社株主帰属四半期(中間期)純利益が12.3%増の60億61百万円だった。
大幅増収増益(11月5日付で上方修正)だった。前回予想(5月9日付公表の期初計画)に対して売上高は14億22百万円、営業利益は8億59百万円、経常利益は23億49百万円、親会社株主帰属四半期(中間)純利益は17億61百万円、それぞれ上回った。海外の医療用医薬品事業がクロストリジウム・ディフィシル感染症治療剤ディフィクリアを中心に好調に推移したことに加え、欧州通貨に対するスイスフラン安の進行で営業外収益に為替差益13億20百万円を計上(前年同期は1百万円)したことも寄与した。
医療用医薬品事業は売上高(外部顧客への売上高)が19.4%増の285億44百万円、営業利益(全社費用等調整前)が10.9%増の58億30百万円だった。主要製品の売上高は、アサコールが11.5%増の112億54百万円、ディフィクリアが51.1%増の98億89百万円、エントコートが7.5%増の26億30百万円、アコファイドが0.3%増の15億26百万円、その他が1.4%減の32億43百万円だった。潰瘍性大腸炎治療剤アサコールは国内が薬価改定の影響で苦戦したが、海外が好調に推移した。クロストリジウム・ディフィシル感染症治療剤ディフィクリア(国内販売名ダフクリア)はフランス、スペイン、ドイツなどで売上が拡大した。炎症性腸疾患(IBD)治療剤エントコート(国内販売名ゼンタコート)は、カナダでの売上が好調だった。
コンシューマーヘルスケア事業は、売上高が8.7%増の138億02百万円、営業利益が23.6%増の31億21百万円だった。主要製品の売上高は、ヘパリーゼ群が13.2%増の58億77百万円、コンドロイチン群が1.3%減の28億25百万円、ウィズワン群が17.9%増の7億22百万円、その他が8.5%増の43億76百万円だった。ヘパリーゼ群は医薬品ヘパリーゼ群・コンビニエンスストア向けヘパリーゼW群とも伸長した。植物性便秘薬ウィズワン群や皮膚疾患治療剤プレバリン群も伸長した。なおコンシューマーヘルスケア事業の一部製品について9月2日出荷分より価格改定を実施した。
その他(保険代理業・不動産賃貸収入等)は売上高が1.9%減の75百万円、営業利益が4.7%減の1億18百万円だった。
全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高214億55百万円、営業利益39億39百万円、経常利益54億59百万円、第2四半期は売上高209億67百万円、営業利益25億20百万円、経常利益24億90百万円だった。
通期連結業績予想は前回予想(5月9日付公表の期初計画)に対して売上高を30億円、営業利益を10億円、経常利益を10億円、親会社株主帰属当期純利益を7億円それぞれ上方修正した。通期については為替差益の発生を見込んでいないが、引き続き海外の医療用医薬品事業が好調に推移する見込みだ。第2四半期累計の進捗率は売上高49%、営業利益59%、経常利益72%、当期純利益71%である。通期会社予想には再上振れ余地があり、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株主優待は年2回、9月末と3月末の株主対象
株主優待制度は毎年9月末および3月末現在の株主を対象として、保有株式数に応じて自社グループ商品を贈呈(詳細は会社HP参照)している。
■株価は年初来高値更新の展開
株価は順調に水準を切り上げて年初来高値更新の展開だ。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。12月19日の終値は2446円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS192円83銭で算出)は約13倍、今期予想配当利回り(会社予想の46円で算出)は約1.9%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1806円33銭で算出)は約1.4倍、そして時価総額は約1299億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)