インフォマート、24年12月期大幅増収増益予想、価格改定効果とコスト削減で利益拡大

 インフォマート<2492>(東証プライム)は、企業間の商行為を電子化する国内最大級のクラウド型BtoB電子商取引プラットフォーム(飲食業向けを中心とする受発注、全業界を対象とする請求書など)を運営している。24年12月期は大幅増収増益予想としている。BtoB-PF FOOD事業、BtoB-PF ES事業とも利用企業数が増加するほか、第4四半期にはFOOD事業の価格改定効果、サーバーのクラウド移行による原価低減効果なども本格寄与する見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は安値圏だが、調整一巡して反発の動きを強めている。戻りを試す展開を期待したい。

■国内最大級のBtoB(企業間電子商取引)プラットフォーム

 企業間の商行為を電子化する国内最大級のクラウド型BtoBプラットフォームを運営している。24年3月には、食品卸と個人飲食店の受発注デジタル化サービスを展開するタノム(21年2月に資本業務提携)を子会社化した。

 主なプラットフォームとしては、BtoB-PF FOOD事業では飲食店(主に外食チェーン)と食材卸・メーカー間の受発注業務を電子化する受発注、小・中規模飲食店向けの受発注ライト、食の安全・安心に関わる商品規格書を電子管理する規格書、LINEを使った発注が可能なTANOMU、店舗オペレーション管理ツールのV―Manage、BtoB-PF ES事業では全業界を対象に請求書発行・受取業務を電子化する請求書、安心・安全な契約書管理を実現する契約書、取引先との見積書・発注書・納品書・検収書をデジタル化するTRADE、業務用食品食材の商談をデジタル化する商談などがある。また、多様な価値提供の一環および新たな収益源育成に向けて、100万社の顧客基盤に基づく商流データを活用したBtoB Financeを開発中(一部機能をリリース済み)である。

 23年7月には自治体のLGWAN(総合行政ネットワーク)に対応したBtoBプラットフォーム on LGWANを本格稼働、23年12月には紙やPDFなど様々な形式で受け取る請求書をAI OCRでデータ化するサービス「BP Storage for 請求書」の提供を開始した。また25年4月にはBtoBプラットフォームTRADEにおいて、建設業の商慣習に対応した新機能「請求書機能」の提供を開始する。

 なお23年12月期の売上高は、BtoB-PF FOOD事業が84億47百万円、BtoB-PF ES事業が49億16百万円だった。主な収益は利用企業から得る使用料収入およびセットアップ費用である。受発注ではフード業界の買い手企業(外食チェーン、ホテル、給食等)から得る月額システム使用料、売り手企業(食材メーカー・卸等)から得る定額制または流通金額に係る従量制のシステム使用料、請求書ではシステム使用料(基本料金+従量制)などが柱となっている。

■26年12月期営業利益50億円目標

 中期業績目標値には26年12月期売上高200億円、営業利益50億円、売上高営業利益率25%を掲げ、5年間平均のCAGR(売上高成長率)は全社16%(FOOD事業8%、ES事業30%)としている。

 中期経営方針として、BtoBプラットフォームの強化(新サービス・新プロダクツを含む機能強化、販売力強化、認知度向上、CS向上など)、増収増益基調の継続と高収益性への回帰、出資先のシナジー拡大と収益化を掲げている。24年12月にはBtoBプラットフォームが、クラウドセキュリティの国際標準規格ISO/IEC27017認証を取得した。

 なおFood Techに特化したファンドを設置し、20年6月にはAIを活用した飲食店向けの自動発注クラウドサービス「HANZO自動発注」を開発・提供するGoalsに出資して資本業務提携(22年6月に追加出資)した。23年6月には、国内の旅館・宿泊業の再生支援を行うRQ旅館再生ファンド投資事業有限責任組合に出資した。

■利用企業数は増加基調

 利用企業数の増加に伴って収益が拡大するストック型収益モデルである。利用企業数は増加基調で、23年12月期末の全社ベースの利用企業数は22年12月期末比18万5502社増加の101万1176社、事業所数は36万1904事業所増加の188万8288事業所となった。主要なプラットフォームでは、受発注の買い手企業が273社増加の3915社、買い手店舗が4088店舗増加の7万2468店舗、売り手企業が2016社増加の4万4044社だった。請求書は18万5737社増加の100万2514社となり100万社を突破した。有料契約企業は3193社増加の1万1808社(受取モデルが1631社増加の6913社、発行モデルが1562社増加の4895社)となった。なお24年10月には請求書の利用企業数が110万社を突破した。

 国内最大級のBtoBプラットフォームである。23年12月にはBtoBプラットフォーム請求書が東京商工リサーチの調査において請求書クラウドサービス市場国内シェアNO.1を3年連続で獲得した。24年9月には未来トレンド研究機構調べ(調査期間24年7月~8月)の受発注クラウドサービス市場における受発注流通金額において国内シェアNo.1を獲得した。

 BOXIL SaaS AWARD Autumn 2024においては、BtoBプラットフォーム請求書が請求書発行部門で、BtoBプラットフォーム受発注が受発注管理システム部門で、それぞれ1位を受賞した。アイティクラウドのITreview Grid Award 2024 Springでは、BtoBプラットフォーム請求書が請求書・見積書作成ソフトおよび請求書受領サービスの2カテゴリで最高位のLeaderを受賞した。24年6月にはアイティクラウドのITreviewにおいて、Customer Voice Leaders 2024をエグゼクティブ活用部門で受賞した。

■アライアンスも積極推進

 アライアンス戦略も積極推進している。21年3月には三井物産と共同出資で特別目的会社I&Mを設立し、中国フードテック企業のトップAcewillのグループ会社である博君と資本業務提携、22年4月にはプロダクト・データ・プラットフォームを開発・提供するLazuliに出資した。

 21年10月に串カツ田中ホールディングス<3547>と業務提携して設立した合弁会社Restartz(リスターツ)は、22年11月に飲食店舗運営のDXを支援する店舗オペレーション管理アプリ「V-Manage」をリリースし、23年4月に串カツ田中ホールディングスの全ての直営店舗(155店舗)への導入を開始した。そして23年8月末に利用企業数が100社を突破した。

 24年11月にはJTBのグループ企業であるJTB旅連事業と業務提携した。宿泊施設と生産者・加工食品業者をつなぎ、食材の調達業務効率化する「ホテル・旅館向けマーケットプレイス」を「BtoBプラットフォーム商談」内に開設し、宿泊業界のデジタル化を推進する。

 24年12月には国立大学法人東京大学大学院工学系研究科早矢仕研究室とAIを用いた共同研究を開始した。

■24年12月期大幅増収増益予想

 24年12月期の連結業績予想は売上高が23年12月期比20.4%増の160億86百万円、営業利益が20.4%増の10億円、経常利益が23.5%増の7億80百万円、そして親会社株主帰属当期純利益が特別損失一巡も寄与して80.6%増の5億39百万円としている。配当予想は23年12月期比57銭増配の1円54銭(第2四半期末77銭、期末77銭)としている。連続増配予想で予想配当性向は64.7%となる。

 第3四半期累計は売上高が前年同期比15.8%増の112億44百万円、営業利益が5.9%増の6億71百万円、経常利益が21.4%増の6億61百万円、親会社株主帰属四半期純利益が42.4%増の5億33百万円だった。増収増益と順調だった。BtoB-PF FOOD事業、BtoB-PF ES事業とも順調に拡大した。第3四半期末時点の利用企業数(BtoBプラットフォームを利用する企業のうち重複企業を除いた企業数)は前年同期比14.9%増の110万6233社、第3四半期のストック収益率は96.7%となった。

 営業利益37百万円増益(前年同期比)の増減分析は、BtoB-PF FOOD事業の売上増加で8億24百万円増益、BtoB-PF ES事業の売上増加で7億05百万円増益、売上原価におけるデータセンター費増加で3億83百万円減益、ソフトウェア償却費減少で20百万円増益、手数料(BtoBプラットフォーム請求書におけるアライアンスパートナーへの紹介手数料)増加で1億60百万円減益、販管費における人件費増加で3億58百万円減益、販売促進費増加で1百万円減益、支払手数料(BtoBプラットフォーム受発注およびBtoBプラットフォーム請求書の稼働業務の外注費)増加で2億52百万円減益、その他販管費増加で3億57百万円減益だった。売上原価ではサーバーのクラウド化(第3四半期に実施)に伴う移行までの検証費用および移行費用が増加したほか、販管費ではタノムを子会社化したことに伴いのれん償却費やタノムの販管費が増加した。

 BtoB-PF FOOD事業は、売上高が13.3%増の70億46百万円、営業利益が30.4%減の4億58百万円だった。売上高の内訳は受発注が13.7%増の50億35百万円、受発注ライト&TANOMUが36.3%増の6億37百万円、その他が3.6%増の13億73百万円だった。売上面では、受発注は外食チェーンやホテル旅館業態の新規契約が好調に推移し、24年8月より実施した料金改定も寄与して大幅伸長した。受発注ライト&TANOMUは食品卸売企業と外食個店間のデジタル化ニーズの高まりによって新規利用が増加し、成長が加速した。利益面は営業人員およびカスタマーサクセス人員の補強に伴う人件費の増加に加え、タノムを子会社化したことに伴いのれん償却費や同社の販管費の増加も影響した。なお第3四半期累計ベースでは大幅減益だが、四半期別に見ると第1四半期が2億96百万円、第2四半期が2億25百万円に対して、第3四半期は5億30百万円だった。第3四半期は大幅増収効果に加え、サーバーのクラウド移行費用が減少したことも寄与して前年同期比でも増益に転じた。

 BtoB-PF ES事業は売上高が20.2%増の41億98百万円、営業利益が3億82百万円の損失(前年同期は8億80百万円の損失)だった。売上高の内訳は請求書が20.2%増の32億48百万円、TRADEが74.1%増の2億円、その他が11.2%増の7億49百万円だった。売上面では大手企業・グループを中心に請求書の導入が進み、TRADEも見積もりから請求書までのデジタル化ニーズの高まりによって高成長を継続した。利益面は増収効果で営業損失が縮小した。

 なお全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が35億19百万円で営業利益が2億29百万円、第2四半期は売上高が36億94百万円で営業利益が80百万円、第3四半期は売上高が40億30百万円で営業利益が3億61百万円だった。第3四半期の売上高は四半期ベースで過去最高となった。

 通期連結業績予想は据え置いている。事業別売上高計画はBtoB-PF FOOD事業が15.6%増の97億67百万円、BtoB-PF ES事業が28.5%増の63億18百万円としている。BtoB-PF FOOD事業では、フード業界におけるデジタル化進展で利用企業数が増加することに加え、24年8月より実施した受発注の料金改定効果も寄与する見込みだ。BtoB-PF ES事業では、請求書の新規有料契約企業数の増加に加え、既存有料契約企業における請求書の電子化進展によってARPUも上昇する見込みだ。

 営業利益1億70百万円増益(前期比)の増減分析計画は、増収効果で27億23百万円増益、データセンター費増加で35百万円減益、ソフトウェア償却費増加で1億15百万円減益、売上原価における手数料(BtoBプラットフォーム請求書におけるアライアンスパートナーへの紹介手数料)増加で4億82百万円減益、販管費における人件費増加で6億13百万円減益、販売促進費増加で2億36百万円減益、支払手数料(BtoBプラットフォーム受発注およびBtoBプラットフォーム請求書の稼働業務の外注費)増加で6億70百万円減益、その他販管費増加で3億98百万円減益としている。

 第3四半期累計の進捗率は売上高64%、営業利益67%、経常利益85%、当期純利益99%である。売上高と営業利益の進捗率がやや低水準の形だが、ストック収益が積み上がる収益構造であることに加え、第4四半期には、24年8月実施のFOOD事業の価格改定効果、第3四半期に完了したサーバーのクラウド移行による原価低減効果なども本格寄与する見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は反発の動き

 株価は安値圏だが、調整一巡して反発の動きを強めている。戻りを試す展開を期待したい。12月25日の終値は293円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS2円38銭で算出)は約123倍、今期予想配当利回り(会社予想の1円54銭で算出)は約0.5%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS46円66銭で算出)は約6.3倍、そして時価総額は約760億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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