アルコニックス、25年3月期は需要回復と価格転嫁が奏功し大幅増益予想、高配当利回りや低PBRも魅力

 アルコニックス<3036>(東証プライム)は商社機能と製造機能を併せ持ち、M&Aも積極活用しながら、非鉄金属の素材・部品・製品の生産から卸売までをONE-STOPで提供する「非鉄金属等の総合ソリューションプロバイダー」である。25年3月期は大幅増益予想としている。需要・市況の回復、価格転嫁やコスト改善などの効果を見込んでいる。積極的な事業展開で収益改善基調だろう。株価はやや小動きだが順調に水準を切り上げて戻り高値圏だ。高配当利回りや1倍割れの低PBRも評価材料であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。

■非鉄金属等の総合ソリューションプロバイダー

 商社機能と製造機能を併せ持ち、M&Aも積極活用しながら、非鉄金属の素材・部品・製品の生産から卸売までをONE-STOPで提供する「非鉄金属等の総合ソリューションプロバイダー」である。

 24年1月には子会社ソーデナカノと合弁で米国にリチウムイオン電池用部材を製造するSoode Kansas Corporationを設立、また中国にメッキ材料製造の新会社を設立(26年7月事業開始予定)した。24年7月にはグループ企業再編の一環として、子会社のアルコニックス・エムティが同じく子会社のアルコニックス・東北化工を吸収合併した。また、金属精密機械加工部品などの製造を展開する坂本電機製作所を子会社化した。25年1月(予定)には同社がアルコニックス・エムティと冨士カーボン製造所を吸収合併する。

 ベンチャー投資としては21年12月に、投資事業(アルコニックスグローバルイノベーション投資事業有限責任組合、21年8月設立の子会社アルコニックスベンチャーズが運用)を開始した。先端材料・高成長事業および素材・モノづくりに関連のあるベンチャー企業または事業を投資先として成長支援し、投資先が生み出すアイデアや技術を取り込んで新規事業開拓と更なる業容拡大を目指す方針だ。

■製造も収益柱に成長

 報告セグメント区分は、商社流通の電子機能材事業(化合物半導体、電子材料、チタン製品、ニッケル製品、レアメタルなど)、商社流通のアルミ銅事業(アルミニウム製品、伸銅品、非鉄スクラップ、各種配管機材など)、製造の装置材料事業(非破壊検査装置、マーキング装置、カシュー樹脂、カーボンブラシなど)、製造の金属加工事業(精密機構部品、精密研削加工部品、精密金属プレス部品、金属加工部品など)としている。

 24年3月期のセグメント別経常利益(消去前)は、商社流通が20億40百万円(内訳は電子機能材が17億40百万円、アルミ銅が3億円)で、製造が34億21百万円(内訳は装置材料が9億55百万円、金属加工が24億65百万円)だった。レアメタル・レアアースの取り扱いが特徴とされているが、製造も収益柱に成長している。

■中期経営計画

 中期経営計画(25年3月期~27年3月期、1年ごとに見直すローリング方式)では、最終年度となる27年3月期の目標値として、売上高2200億円、営業利益120億円、経常利益120億円、EBITDA164億円、ROE(株主資本利益率)12.1%、ROIC(投下資本利益率)6.7%、DOE(株主資本配当率)3.0%以上を掲げている。セグメント別経常利益は、商社流通が38億円(電子機能材が26億円、アルミ銅が12億円)で、製造が82億円(装置材料が25億円、金属加工が57億円)としている。製造が全体の68%を占める計画だ。

 基本戦略として、既存事業の収益力強化と新規事業の成長加速を両輪として、事業収益面の増強(事業戦略)、投下資本の効率的活用(財務戦略)、戦略に適合した人財戦略の3戦略を推進し、ROEの向上を図るとしている。なお3年間合計のキャピタルアロケーションのイメージとしては成長投資200~240億円、維持投資100~140億円、株主還元50~70億円、借入返済20億円としている。

 23年2月には、非鉄リサイクル事業を展開するグループ会社の移転および拡充を目的として土地取得(北九州市若松区)を発表した。本件土地取得を契機にグループを横断した総合リサイクルセンターを建設し、環境配慮型企業グループの実現を目指すとしている。

 サステナビリティ経営に関しては、23年7月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同を表明した。23年8月には、グループ全体としての内部統制体制の在り方をより明確にするため、内部統制システムの基本方針を改定した。24年3月には経済産業省が定める健康経営優良法人認定制度において健康経営優良法人2024(大規模法人部門)に認定された。24年5月には従業員向けインセンティブ・プランの導入を発表した。また24年7月には新卒初任給22%引き上げを実施する。

■25年3月期大幅増益予想

 25年3月期連結業績予想は売上高が24年3月期比5.8%増の1850億円、営業利益が31.8%増の72億円、経常利益が32.2%増の72億円、親会社株主帰属当期純利益が181.6%増の45億円、そしてEBITDAが14.1%増の117億円としている。配当予想(11月6日付で第2四半期末3円、期末3円、合計6円上方修正)は、24年3月期比9円増配の64円(第2四半期末32円、期末32円)としている。予想配当性向は43.0%となる。

 第2四半期累計(中間期)は売上高が前年同期比14.2%増の956億51百万円、営業利益が14.8%増の34億51百万円、経常利益が32.9%増の40億30百万円、親会社株主帰属四半期(中間)純利益が38.9%増の26億61百万円だった。

 商社流通分野における販売数量の増加、製造分野における価格転嫁の進展などにより大幅増益だった。営業外ではデリバティブ評価益が1億75百万円減少したが、為替差損益が3億90百万円改善(前期は為替差損9百万円、当期は為替差益3億81百万円)した。経常利益の前期比10.0億円増益の分析は、数量要因で1.5億円減益、市況要因で4.8億円増益、為替要因で1.7億円増益、製造セグメント要因(原価上昇分の価格転嫁)で5.9億円増益、販管費増加で5.6億円減益、営業外損益(為替除く)改善で1.6億円増益だった。特別利益では投資有価証券売却益が1億02百万円増加し、特別損失では事業構造改善費用1億07百万円を計上した。

 セグメント別利益(経常利益)は、商社流通の電子機能材が23.8%増の14億55百万円、商社流通のアルミ銅が342.1%増の6億70百万円、製造の装置材料が87.5%増の4億88百万円、製造の金属加工が1.6%減の14億19百万円だった。

 商社流通の電子機能材は、レアメタルの販売価格が下落したが、ニッケル原料取引の販売量増加や収益率改善などにより大幅増益だった。商社流通のアルミ銅は、アルミ地金等の販売数量増加・価格上昇に加え、半導体用途の銅板条の販売数量大幅増加により大幅増益だった。製造の装置材料は、海外におけるメッキ材料、マーキング装置、検査用消耗品の販売好調に加え、カーボンブラシ等の製造原価上昇分の販売価格への転嫁も寄与して大幅増益だった。製造の金属加工は、半導体実装装置用部品等の販売好調で増収だが、半導体実装装置用部品や自動車用プレス部品における製品ミックス悪化による収益率低下で小幅減益だった。

 なお全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が458億50百万円、営業利益が18億02百万円、経常利益が20億78百万円、第2四半期は売上高が498億01百万円、営業利益が16億49百万円、経常利益が19億52百万円だった。

 通期の連結業績予想は据え置いている。セグメント別利益(消去前経常利益)の計画は、商社流通が27.4%増の26億円(電子機能材が26.4%増の22億円、アルミ銅が33.2%増の4億円)で、製造が34.5%増の46億円(装置材料が36.1%増の13億円、金属加工が33.8%増の33億円)としている。

 需要・市況の回復、価格転嫁やコスト改善の進展などの効果により大幅増益、そして連続増配予想としている。第2四半期累計の進捗率は売上高が52%、営業利益が48%、経常利益が56%、当期純利益が59%と順調だった。積極的な事業展開で収益改善基調だろう。

■株主優待制度は3月末の株主対象

 株主優待制度は毎年3月末時点の株主を対象として、保有株式数および保有期間に応じて優待商品を贈呈(24年5月15日付で一部変更を発表、26年度から適用、詳細は会社HP参照)する。

■株価は上値試す

 株価はやや小動きだが順調に水準を切り上げて戻り高値圏だ。高配当利回りや1倍割れの低PBRも評価材料であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。12月25日の終値は1486円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS148円85銭で算出)は約10倍、今期予想配当利回り(会社予想の64円で算出)は約4.3%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2180円07銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約462億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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