【編集長の視点】11月相場の「二日新甫」が追い風か逆風かはまず地銀株の業績上方修正組からトライ=浅妻昭治

編集長の視点

きょう2日に初商いが始まる11月相場は、今年3回目の「二日新甫」である。相場アノマリー(経験則)では「二日新甫は荒れる」とされてきた。ようやく10月末にFRB(米連邦準備制度理事会)のFOMC(公開市場委員会)や中国共産党の中央委員会第5回全体会議、日銀の金融政策決定会合などのビッグ・イベントを通過し、NYダウの10月月間の上昇幅は1378ドルと過去最大となり、日経平均も1694円高となったのに、またかと戦わずして厭戦気分になる向きもあるかもしれない。現に前週末は、シリアへの米国の軍事介入による地政学的リスクの高まりだの中国人民元の急伸だのと気掛かり材料も出てきた。ただし、この「荒れる」というのは、必ずしも株価が、ダウンサイドに急落することをだけを意味しているのでなく、アップサイドに急騰することも示唆しているとされてきた。これを裏打ちするように今年2月、3月の「二日新甫」では、月足は、急騰とはいえないまでもいずれも陽線を立ててアップサイド方向に動いた。

「二日新甫」の厳しさに足が震えたのは8月である。3日が初商いの8月の「二日新甫」は、例の中国人民銀行の人民元切り下げに始まる中国リスクが、たちまち世界のマーケットを波乱の渦に巻き込み世界同時株安となって、日経平均株価は、9月29日の1万7000円台割れまで急落した。11月の「二日新甫」が、株価の上昇圧力を強める追い風となるか、再び下値に突っ込む逆風として吹くのか、このいずれのケースになるかに大きく影響するのは、まず月初の4日に新規株式公開(IPO)される日本郵政<6178>(東1)グループ3社の動向にあることは間違いない。11月相場は、「二日新甫」と大型IPOの2つのハードルを前にスタートすることになるわけだ。

日本郵政グループ3社合計の売り出し規模は、1兆4362億円に達し、1987年に上場されたNTT<9432>(東1)以来の大型民営化案件となる。NTT上場時は、折からの民営化ブームに「第2次証券民主化」などの笛、太鼓の鳴り物入りのセールストークも加わって大いに盛り上がり、その後のバブル経済惹起の導火線となった。今回も、「貯蓄から投資へ」を加速する一大イベントとして、市場にニューマネー呼び込んでくれるとの期待も強い。初めて株式投資に踏み込んだ資金が、好回転すれば相場は好循環し、既存の上場銘柄にもプラスに働く。その一方、IPO3社に吸い上げられたニューマネーが、期待も空しく固定されてコゲつくよだと、いわゆる「御用金相場」の大型IPOの後には「ぺんぺん草も生えない」、「一将功なって万骨枯る」などと嘆かなくてはならなくなる。どちらのケースとなるか、4日の上場日が注目されることになる。

大型IPOが、追い風となるか逆風となるか個別に注目されるセクターもある。地方銀行株である。「貯蓄から投資」への流れが続けば、それでなくても空洞化が進む地方経済下での経営環境はいっそう厳しくなり、さらに今回IPOされるゆうちょ銀行<7182>(東1)とのサバイバル競争を迫られる可能性も強まる。その一方で、IPO3社の投資ポイントは、配当利回りの高さと低PBRの割安感にあるとされており、この比較感から地銀株が見直されるかもしれない。さらに厳しい経営環境は、業界再編を不可避なものとして株価の思惑材料に浮上する展開も想定される。

地銀株の11月相場が、どちらのケースになるか占うような先行事例がある。10月26日に観測報道された足利ホールディングス<7167>(東1)傘下の足利銀行と常陽銀行<8333>(東1)の経営統合である。株価は、足利HDが急騰して年初来高値を更新する一方、常陽銀も急伸したものの、その後は観測報道前の水準を下回ったままだ。実は、常陽銀は、観測報道前に今3月期業績を上方修正し期末配当の増配も発表していた。株価感応度は、「決算プレー」より「再編プレー」の方が高いことを示唆した。

しかしである。今回の足利銀-常陽銀統合は、あのバブル経済崩壊下で続いた不良債権処理に苦しむ銀行が、他行に合併される「救済型」ではなく、新たなビジネス機会を求めて互いの経営資源を融合させる「成長指向型」とされている。「再編プレー」に「決算プレー」が合算すれば、株価変化率も高くなるはずだ。そこで注目したいのが、今年9月中旬以降に今3月期業績を上方修正した地銀株である。上方修正時の株価反応は、華々しいというにはほど遠い地味なものにとどまったが、このなかの低PER・PBRで高配当利回りを示す銘柄は、日本郵政グループ3社との比較感も働いて「外れ日本郵政」の投資家の関心も引くとも想定され、要アプローチである。(本紙編集長・浅妻昭治)

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