【鈴木雅光の投信Now】インバース型ETFにありがちな誤解

マーケットが下落トレンドにある時、注目を集めるETFがある。連動目標となる指数が下落するほど取引価格が値上がりする「インバース型」がそれだ。目先、株価が下落しそうな時に、インバース型ETFを購入しておくと、指数が下落した時、取引価格が上昇するため、リターンが得られる。

たとえば現物株式のポートフォリオを保有しているとしよう。保有銘柄は新興銘柄が中心のため、株式市場での流動性が低い。目先、株価が大きく下げそうな時、この手の銘柄を一旦、ポートフォリオから外そうとしても、株式市場の流動性が低いため、自分の売り注文で株価を下げてしまう恐れがある。そんな時、現物株式のポートフォリオには手を付けず、インバース型ETFを購入すれば、現物株式は値下がりしたとしても、インバース型ETFの取引価格は値上がりするため、100パーセントとは言わないまでも、ある程度、現物株式ポートフォリオに生じる損失を、インバース型ETFの値上がり益によって相殺できる。

 本来、現物株式の値下がりリスクをヘッジする手段としては、信用取引の売り、株価指数先物取引の売り、あるいはプットオプションの買いか、コールオプションの売りという手段があるものの、いずれも取引のハードルが高いため、手軽にこの手の手段でヘッジするわけにはいかない。この点、インバース型ETFであれば、現物株式を買うのと同じ感覚で、手軽にヘッジができる。

ただ、ひとつだけ注意点がある。それは、インバース型ETFは長期保有に適さないことだ。なかでも2倍型のように、指数が5%下がると、取引価格が10%上昇するレバレッジの効いたタイプは、あくまでも前日の取引価格に対して2倍のレバレッジが掛るため、上昇、下落を繰り返すボックス相場の展開になった時、長期間保有すればするほど、レバレッジ通りのリターンが得られなくなる。

連動目標の指数に対して、2倍のレバレッジを持つダブルインバース型と呼ばれるETFは、あくまでも短期の値下がりに対応するためのヘッジ手段と考えておくべきだろう。

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