【アナリスト水田雅展の銘柄分析】テクマトリックスは上場来高値更新の展開、16年3月期第2四半期累計の大幅増益も好感

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 テクマトリックス<3762>(東1)はシステム受託開発やセキュリティ関連製品販売などの情報サービス事業を展開している。10月30日発表の第2四半期累計(4月~9月)大幅増益も好感して、株価は上場来高値更新の展開だ。16年3月期増収増益・増配予想で指標面に割高感はなく、サイバーセキュリティ関連やマイナンバー制度関連のテーマ性も注目点だ。目先的な過熱感を冷ましながら上値追いの展開だろう。

■システム受託開発やセキュリティ関連製品販売などを展開

 ネットワーク・セキュリティ関連のハードウェアを販売する情報基盤事業、医療・CRM・EC・金融を重点分野としてシステム受託開発やクラウドサービスを提供するアプリケーション・サービス事業を展開している。

 重点戦略として、ストック型ビジネスの保守・運用・監視サービス関連の戦略的拡大、クラウド関連事業の戦略的・加速度的推進、ネットワーク・セキュリティ関連商材およびサービスの充実、ビッグデータ分析支援サービス、大規模EC事業者向けバックオフィスシステム構築ソリューション「楽楽ECインテグレーションサービス」などを強化している。

 クラウドサービスではCRM事業「FastCloud」、医療事業「NOBORI」およびEC事業「楽楽バックオフィス」など、各分野で独自クラウドサービスを開発・展開している。

 15年10月には米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)が提供する「AWSパートナーネットワーク(APN)」に参加するため「APNスタンダードコンサルティングパートナー」の認定を取得した。世界トップクラスのクラウド事業者であるAWSのパートナー制度に参加することで、クラウド関連事業のさらなる発展・拡大を目指すとしている。

■中期成長に向けてM&A・アライアンスを積極活用

 中期成長に向けてM&A・アライアンスを積極活用するとともに、グループ再編も推進している。14年2月に子会社の沖縄クロス・ヘッドが台湾のデータセンター事業者eASPNetと事業協力についての覚書を締結、14年3月にクロス・ヘッドを完全子会社化した。

 14年7月に日本事務器(NJC)と医療情報クラウドサービス「NOBORI」に関する販売代理店契約を締結、14年8月に沖縄クロス・ヘッドが日本HPと業務提携、14年10月にクロス・ヘッドが仮想化技術の米Pica8(ピカエイト)社に出資、ソフトバンクテレコムなどと3社共同でクラウド型医療情報サービス「地域健康・医療情報プラットフォームサービス(HeLIP)」の提供を開始した。14年12月にはクロス・ヘッドがエヌ・シー・エル・コミュニケーションの株式を追加取得して完全子会社化し、15年4月合併した。

 15年3月にはApple関連技術の研修サービスを提供している子会社カサレアルが、JetBrains社(チェコ)とトレーニングパートナー契約を締結し、サムライズム(東京都)とJetBrains社製品を利用した研修に関する業務提携を開始した。またスリーゼットに対して医療情報クラウドサービス「NOBORI」を、クリニックを対象としてOEM提供する契約を締結した。

 15年5月には医療サービス事業に特化したベンチャー企業である中国の北京ヘルスバンク・テクノロジー有限公司と、合弁会社(北京ヘルステック医療情報技術有限公司、当社出資比率40%)を設立(15年8月)すると発表した。当社子会社の合同会社医知悟が開発した遠隔医療ソフトウェアのライセンスを供与して、中国において遠隔医療事業を展開する。

 15年6月にはクロス・ヘッドが、クライアント仮想化ソフトウェア「OVD」の開発元であるカナダのInuvika(イヌビカ)社に出資した。クロス・ヘッドは「OVD」の国内卸・日本語環境対応開発支援を行っており、今後3年間で2万ライセンスの販売を目標としている。

 15年9月には米Parasoft社が開発したソフトウェア開発・テスト管理プラットフォーム「Parasoft DTP」の販売開始を発表した。また沖縄クロス・ヘッドがスプラッシュトップ(東京都)および日本ヒューレット・パッカードと共同でリモートデスクトップサービス「Reemo(リーモ)」の提供を開始すると発表した。さらにオーストリアのRanorex社が開発したUI(ユーザーインターフェース)テスト自動化ツール「Ranorex」の国内総販売代理店権を獲得して販売開始すると発表した。

 15年10月には、トランスコスモス(タイ)とコンタクトセンターCRMシステム新製品「Fastシリーズ」のタイにおける販売代理店契約を締結した。国内トップクラスの導入実績を誇る「Fastシリーズ」の、ASEAN地区を中心とした海外展開を強化する。

■第4四半期の構成比が高く、ストック型収益の積み上げも推進

 なお医療分野では、オンプレミス型(ユーザーがハードウェア、ソフトウェア、データを自分自身で保有・管理)システム提供から、クラウド型(ユーザーがインターネット経由で利用)サービス提供へビジネスモデル変更を推進しているため、14年3月期から医療情報クラウドサービスの売上と利益をサービス期間に応じて按分計上する方法に変更した。このため今後複数年に亘って売上と利益にマイナス影響となるが他事業の成長でカバーする。

 15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)39億49百万円、第2四半期(7月~9月)46億55百万円、第3四半期(10月~12月)43億75百万円、第4四半期(1月~3月)54億38百万円、営業利益は第1四半期63百万円、第2四半期2億87百万円、第3四半期1億92百万円、第4四半期5億88百万円だった。第4四半期の構成比が高い収益構造である。

 15年3月期のストック型売上比率(単体ベース)は情報基盤事業で14年3月期比3.5ポイント低下して40.2%、アプリケーション・サービス事業で同3.0ポイント上昇して41.8%となった。ROEは同4.2ポイント低下して9.4%、自己資本比率は同1.5ポイント低下して45.3%、配当性向は31.1%だった。

■16年3月期第2四半期累計は大幅増益、通期も増収増益基調

 10月30日発表の今期(16年3月期)第2四半期累計(4月~9月)連結業績は、売上高が前年同期比17.8%増の101億38百万円、営業利益が同47.3%増の5億16百万円、経常利益が同51.0%増の5億18百万円、純利益が同40.2%増の2億96百万円だった。売上高は第2四半期累計として過去最高だった。

 情報基盤事業、アプリケーション・サービス事業とも好調に推移して大幅増収増益だった。売上総利益率は32.0%で同2.5ポイント低下したが、販管費比率は26.9%で同3.5ポイント低下した。なお特別損失に事務所移転費用29百万円を計上している。

 セグメント別動向を見ると、情報基盤事業は売上高が同22.1%増の69億58百万円、営業利益が同15.8%増の4億64百万円だった。売上高は過去最高となった。主力の負荷分散装置で次世代ファイアウォール関連が好調に推移した。文京向け大型案件の受注にも成功した。

 アプリケーション・サービス事業は売上高が同9.5%増の31億80百万円、営業利益が52百万円(前年同期は50百万円の赤字)だった。インターネットサービス分野はEC関連など既存顧客を中心に受託開発案件の受注が堅調だった。ソフトウェア品質保証分野は製造業や金融業向けテストツールの受注が好調だった。医療分野は医療情報クラウドサービス「NOBORI」が好調に推移し、大型案件の受注にも成功した。CRM分野は次世代製品の販売開始や大手システム・インテグレータとの業務提携効果でクラウド関連が好調に推移し、大型案件の受注にも成功した。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)48億48百万円、第2四半期(7月~9月)52億90百万円で、営業利益は第1四半期1億04百万円、第2四半期4億12百万円だった。

 通期の連結業績予想は前回予想(5月8日公表)を据え置いて、売上高が前期比10.8%増の204億円、営業利益が同15.0%増の13億円、経常利益が同14.8%増の13億円、純利益が同43.7%増の8億40百万円としている。配当予想は同2円増配の年間17円(期末一括)で予想配当性向は24.5%となる。

 人件費の増加などを吸収して2桁増収増益予想だ。セグメント別計画は、情報基盤事業の売上高が同14.6%増の138億円、営業利益が同8.9%増の11億20百万円、アプリケーション・サービス事業の売上高が同3.6%増の66億円、営業利益が同78.2%増の1億80百万円としている。

 情報基盤事業では、サイバー攻撃に対応した次世代ネットワーク・セキュリティ関連商材・サービスが好調で、セキュリティ運用・監視サービス契約数も順調に増加する。またアプリケーション・サービス事業ではCRM分野、医療分野、インターネットサービス分野におけるクラウドサービスが好調に推移する。医療分野では医療情報クラウドサービス「NOBORI」の引き合いが好調だ。

 通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が49.7%、営業利益が39.7%、経常利益が39.9%、純利益が35.2%である。低水準の形だが第4四半期の構成比が高い収益構造でありネガティブ要因とはならない。15年3月期の第2四半期累計の構成比は売上高が46.7%、営業利益が31.0%、経常利益が30.3%、純利益が36.1%だった。16年3月期通期ベースでも増収増益基調だろう。

■中期的に年率売上高成長率10%目指す

 15年5月発表の中期経営計画「TMX3.0」では、経営目標数値として18年3月期の売上高251億円(情報基盤事業170億円、アプリケーション・サービス事業81億円)、営業利益23億50百万円(情報基盤事業16億円、アプリケーション・サービス事業7億50百万円)を掲げている。

 中期的には年率売上高成長率10%で、M&Aや海外展開を含めて事業規模250億円~300億円、ストック売上(クラウド、保守、運用・監視サービス)比率50%超を目指し、売上高営業利益率10%へ挑戦する。

 従来のIT産業の労働集約的な請負型ビジネスから脱却し、自らITサービスを創造し、ITサービスを提供する「次世代のITサービスクリエーター」そして「次世代のITサービスプラバイダー」への変貌を継続する。

 重点事業戦略は、クラウド関連事業の戦略的・加速度的推進、セキュリティ&セイフティの追求として、コストダウンによる高収益化やパートナーとのアライアンス強化も推進する。

 なお株主還元については連結配当性向20%以上を基本方針として、利益水準を踏まえた配当額の引き上げを重視し、株主優待制度の充実も推進する。

■自己株式取得で楽天の所有割合が低下

 15年6月に株主優待制度の内容を発表した。15年9月30日現在500株以上保有株主に対して1000円相当の商品5点の中から1点、1000株以上保有株主に対して3000円相当の商品5点の中から1点を選択する。寄付を選択することもできる。

 なお8月21日に自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)によって自己株式取得を実施(取得株式総数347万8000株、買付価格881円、取得価額総額約30億64百万円)した。これによって楽天<4755>の議決権所有割合が31.57%から4.16%に低下し、大株主順位は第1位から第3位に低下した。楽天とは今後も良好な取引関係を維持するとしている。

■株価は上場来高値更新の展開

 株価の動きを見ると、10月9日に1099円まで上伸して6月の1040円を突破した。さらに10月30日発表の第2四半期累計大幅増益も好感して11月2日に1247円まで急伸した。上場来高値更新の展開だ。

 11月2日の終値1242円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS73円79銭で算出)は16~17倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間17円で算出)は1.4%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS530円20銭で算出)は2.3倍近辺である。時価総額は約154億円である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線、週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインの上昇トレンドの形だ。16年3月期増収増益・増配予想で指標面に割高感はなく、サイバーセキュリティ関連やマイナンバー制度関連のテーマ性も注目点だ。目先的な過熱感を冷ましながら上値追いの展開だろう。

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