ティムコ、25年11月期は2桁増収・黒字予想で収益改善基調、1倍割れの低PBRも評価材料
- 2025/1/29 09:26
- アナリスト銘柄分析
ティムコ<7501>(東証スタンダード)は、フィッシング用品およびアウトドア用品の企画・開発・販売を展開している。フィッシング用品分野ではフライフィッシングのパイオニアであり、アウトドア用品分野ではオリジナル衣料ブランドFoxfireを主力としている。24年11月期は減収・赤字だった。フィッシング事業ではコロナ期需要からの反動減による在庫調整局面が継続し、アウトドア事業では期初の暖冬影響や期後半の記録的高温の影響で防寒衣料等の販売が低調だった。ただし25年11月期は前期の悪条件の影響が一巡して2桁増収・黒字予想としている。積極的な事業展開で収益改善を期待したい。株価は順調に水準を切り上げて戻り高値圏だ。1倍割れの低PBRも評価材料であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。
■フィッシング用品およびアウトドア用品の企画・販売
フィッシング用品(ルアーフィッシング用品、フライフィッシング用品)およびアウトドア用品(アウトドア衣料・用品)の企画・開発・販売事業を展開している。
フィッシング用品の分野では、日本では歴史の浅いフライフィッシングのパイオニアであり、竿から衣料品に至るまで全てのフライ用品を取り扱う唯一の企業であることなどを特徴・強みとしている。アウトドア用品の分野では、自社オリジナルブランドのアウトドア衣料ブランドFoxfireを主力としている。
24年11月期のセグメント別売上高はフィッシング事業が8億02百万円、アウトドア事業が23億89百万円、その他(不動産賃貸収入)が19百万円、セグメント別利益(全社費用等調整前営業利益)はフィッシング事業が54百万円、アウトドア事業が92百万円、その他が12百万円、全社費用等調整額が▲1億89百万円だった。
全社ベースの売上高の新製品比率は57.1%、自社企画品比率は94.4%、国内自社通販売上高(主にアウトドア用品)はFoxfire会員制度本格稼働の効果により前期比7.9%増の1億23百万円、自社EC比率は3.9%、自主管理EC(自社およびECモール等の自社管理取引)比率は8.6%、輸出売上(主にフィッシング用品)比率は4.9%、仕入の輸入比率は9.8%だった。
■顧客接点の強化、EC分野の拡大、海外展開を推進
中期的な目標値としては、27年11月期売上高41億64百万円、営業利益2億63百万円、営業利益率6.3%、1株当たり利益(EPS)63円90銭、株主資本利益率(ROE)3.4%を掲げている。基本戦略として顧客接点の強化、EC分野の拡大、海外への展開を推進している。
顧客接点の強化では、SNSやHPなどによる情報発信の強化、会員制度の拡充、イベントやスクールなどの充実などの施策により、会員数を現在(24年11月期)の約4.7万人から3年後の27年11月期に約7.7万人、5年後の29年11月期に10万人以上へ拡大することを目指す。
EC分野の拡大では、24年11月に実施したTIMCOホームページのリニューアル効果に加え、全アイテムの自社ECスタート、自社ECと外部ECの連動による自主管理ECの拡大、グローバルECの展開などの施策により、自社EC比率を現在の約3.9%から3年後に6.0%、自主管理EC比率を現在の8.6%から3年後に12.1%へ、さらに将来的には25%へ引き上げることを目指す。
海外への展開では、フライ用品のグローバルブランド化、ルアー用品の欧米市場向け拡大、フライ用品・ルアー用品のアジア圏への展開、Foxfireのグローバル展開などの施策により、輸出比率を現在の4.9%から3年後に8.7%へ、さらに将来的には20%へ引き上げることを目指す。
なお22年11月末時点の流通株式時価総額がスタンダード市場における上場維持基準に適合しない状況となったため、23年2月24日に上場維持基準適合に向けた計画書を発表、24年2月に計画期間の変更を発表した。企業価値の向上(時価総額の増大)に向けて業績の向上を図るため、基本戦略である顧客接点の強化、EC分野の拡大、海外への展開を推進するほか、フィッシング事業とアウトドア事業の相互の有機的連携を強化し、全社的な収益力向上に取り組むとしている。さらにIR活動をいっそう強化して、投資家や株主とのコミュニケーションを高める方針だ。計画期間については25年11月末としている。
■スノーピークとの共同事業も推進
19年4月に資本業務提携して第1位株主となったスノーピーク<7816>との共同事業も推進している。21年11月には同社、スノーピーク、アイビック、アイビック食品の4社共同で新会社キャンパーズアンドアングラーズ(札幌市、以下C&A)を設立した。新たなアウトドアカルチャーの価値創造を目的として、キャンプ・フィッシング・食を融合した体験型施設などを展開する。23年9月にはC&Aが体験型アウトドアショップ第1号店「C&A北広島店」(北海道北広島市)をオープンした。さらに24年4月には「C&A北広島店」が、ジェラート&ピザの人気店であるレストラン「アルトラーチェ北広島店」とともにグランドオープンした。
また23年4月には、複合リゾート「エンゼルフォレスト白河高原」内に、初となるフィッシングエリア併設直営店Foxfire白河高原を開業した。スノーピークの直営店スノーピーク白河高原とのコラボショップである。23年7月開業のスノーピーク直営キャンプフィールド「スノーピーク白河高原キャンプフィールド」において、新たなアウトドアスタイル「CAMP FISHING」を提案し、イベント共同開催なども計画している。
24年4月には群馬県上野村、上野村漁業協同組合、スノーピークおよび同社の4者が、上野村の地域循環共生圏の実現に向けた包括連携協定を締結した。関東でも屈指の清流として知られる神流川など、河川環境や自然環境といった村のフィールドを活かした体験イベントなどを企画していく予定としている。
■25年11月期2桁増収・黒字予想で収益改善基調
24年11月期の業績(非連結)は売上高が23年11月期比5.6%減の32億12百万円、営業利益が30百万円の損失(23年11月期は1億16百万円)、経常利益が24百万円の損失(同1億18百万円)、そして当期純利益が1億09百万円の損失(同1億08百万円)だった。配当については23年11月期と同額の12円(期末一括)とした。
減収・赤字だった。フィッシング事業ではコロナ期需要からの反動減による在庫調整局面が継続し、アウトドア事業では期初(23年12月~24年2月)の暖冬影響や期後半(24年9月~11月)の記録的高温の影響で防寒衣料等の販売が低調だった。ただし前回予想(24年11月27日付で下方修正、売上高31億88百万円、営業利益39百万円の損失、経常利益37百万円の損失、当期純利益1億33百万円の損失)を若干上回る水準で着地した。なお特別損失に減損損失26百万円、関係会社株式評価損29百万円を計上した。
フィッシング事業は、売上高が11.1%減の8億02百万円、営業利益(全社費用等調整前)が53.1%減の54百万円だった。ルアー用品のフィッシングロッド(釣竿)など一部商品の売上が増加したものの、コロナ期需要からの反動減による在庫調整局面が継続し、記録的な猛暑や各地で発生した自然災害(水害、地震など)に伴う釣行回数の減少なども影響した。
アウトドア事業は売上高が3.6%減の23億89百万円、営業利益が50.3%減の92百万円だった。防虫素材(スコーロン)を使用した春夏物衣料の販売や通信販売は堅調だったが、期初の暖冬影響や期後半の記録的高温の影響で防寒衣料等の販売が低調だった。
その他(主に不動産賃貸収入売上)は、売上高が賃貸面積縮小により3.9%減の19百万円、営業利益が修繕費減少により36.5%増の12百万円だった。
なお全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が7億39百万円で営業利益が38百万円の損失、第2四半期は売上高が9億62百万円で営業利益が55百万円、第3四半期は売上高が7億13百万円で営業利益が64百万円の損失、第4四半期は売上高が7億98百万円で営業利益が17百万円だった。
25年11月期の業績(非連結)予想は、売上高が24年11月期比12.7%増の36億20百万円、営業利益が1億03百万円(24年11月期は30百万円の損失)、経常利益が1億06百万円(同24百万円の損失)、そして当期純利益が67百万円(同1億09百万円の損失)としている。配当予想については24年11月期と同額の12円(期末一括)としている。予想配当性向は44.4%となる。
セグメント別の売上高計画はフィッシング事業が17.3%増の9億41百万円、アウトドア事業が11.3%増の26億60百万円、その他(主に不動産賃貸収入売上)が横ばいの19百万円としている。
前期の悪条件(フィッシング事業における在庫調整局面、アウトドア事業における暖冬・記録的高温など)の影響が一巡するほか、フィッシング事業ではキャンプ等のアウトドア・アクティビティとの融合による釣り人口拡大促進、EC販促や輸出の強化、アウトドア事業では在庫の効率的販売策の実施、EC販売の拡大、暖冬にも対応し得る商品アイテムの強化などを推進する。積極的な事業展開で収益改善を期待したい。
■株主優待制度は毎年11月末の株主対象
株主優待制度(詳細は会社HP参照)は、毎年11月30日現在の株主を対象として、保有株式数に応じてFoxfire Store20%OFFお買物優待券を贈呈している。
■株価は上値試す
株価は順調に水準を切り上げて戻り高値圏だ。1倍割れの低PBRも評価材料であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。1月28日の終値は809円、今期予想PER(会社予想のEPS27円05銭で算出)は約30倍、今期予想配当利回り(会社予想の12円で算出)は約1.5%、前期実績PBR(前期実績のBPS1827円68銭で算出)は約0.4倍、そして時価総額は約27億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)