エスプール、25年11月期は2桁営業増益予想、中期経営計画で営業利益GAGR10.1%を目指す

 エスプール<2471>(東証プライム)は、障がい者雇用支援などのビジネスソリューション事業、コールセンター向け派遣などの人材ソリューション事業を主力として、環境経営支援サービス、広域行政BPOサービス、地方創生支援サービスなどの拡大も推進している。24年11月期の各利益は計画を上回る水準で着地した。ビジネスソリューション事業が牽引した。25年11月期は増収・2桁営業増益予想としている。ビジネスソリューション事業の成長が牽引する見込みだ。また中期経営計画(25年11月期~29年11月期)を発表し、営業利益のGAGR(年平均成長率)10.1%を目指すとしている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は安値圏で軟調だが、調整一巡して出直りを期待したい。

■ビジネスソリューション事業と人材ソリューション事業を展開

 ビジネスソリューション事業(障がい者雇用支援サービス、ロジスティクスアウトソーシング、セールスサポート、採用支援など)および人材ソリューション事業(コールセンター向け派遣、販売・営業スタッフ派遣)を主力として、新規事業の環境経営支援サービスや広域行政BPOサービスの拡大も推進している。

 23年11月期のセグメント別業績(セグメント間取引および全社費用等調整前)は、ビジネスソリューション事業の売上収益が150億16百万円(障がい者雇用支援サービスが80億35百万円、広域行政BPOサービスが15億06百万円、環境経営支援サービスが15億93百万円、ロジスティクスアウトソーシングサービスが13億31百万円、採用支援サービス(OMUSUBI)が7億87百万円、セールスサポートサービスが11億66百万円)で営業利益が36億99百万円、人材ソリューション事業の売上収益が106億20百万円(コールセンター業務が85億83百万円、販売支援が12億20百万円)で営業利益が8億67百万円だった。

 23年5月には、国際連合が提唱する国連グローバル・コンパクト(UNGC)に署名し、参加企業として登録された。併せて、UNGCに署名している日本の会員企業や団体で構成されるグローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンに加入した。24年3月には経済産業省および日本健康会議が認定する健康経営優良法人2024に選定(5年連続)された。24年4月には「ハタラクエール2024」において福利厚生推進法人に認証された。24年6月には経団連自然保護協議会の常任委員となり、同協議会が主催する経団連生物多様性宣言イニシアチブに参画した。24年9月には「Gomez ESGサイトランキング2024」において優秀企業に初選出された。24年10月には東洋経済オンライン「障がい者雇用率が高い会社」ランキングTOP100に選出された。

■ビジネスソリューションは障がい者雇用支援が主力

 ビジネスソリューション事業は、障がい者雇用支援サービスを主力として、広域行政BPOサービス、環境経営支援サービス、ロジスティクスアウトソーシングサービス、アルバイト・パート求人応募受付代行の採用支援サービスOMUSUB、対面型会員獲得・販売促進のセールスサポートサービスなども展開している。

 障がい者雇用支援サービス「わーくはぴねす農園」は、障がい者雇用を希望する企業に対して農園を貸し出し、企業が主に知的障がい者を直接雇用する。障がい者の職業的自立および社会参加の支援を通じて、ノーマライゼーション社会の実現に貢献する事業である。24年11月期末時点の顧客数は664社、管理区画数は8809区画、就労者数は4405名(定着率92%)となった。売上高の内訳は運営管理費、設備販売、人材紹介料などである。

 ロジスティクスアウトソーシングは品川センターと流山センターの2拠点において展開している。収益力向上に向けた事業基盤再構築を進めており、物流センター運営代行サービスを終了してEC通販発送代行サービスに集中する。

 採用支援サービス(OMUSUBI)は飲食・小売業を中心に求人応募受付業務を行っている。23年4月には面接代行サービスの実施件数が10万件を突破した。

 セールスサポートサービスでは、24年3月にエスプールセールスサポートがベルシステム24と共同で「リアルプロモーションCRM」サービスの提供を開始した。

 顧問派遣サービスについては23年1月に、企業のプロ人材の活用を支援するサービスの名称を、従来の「プロフェッショナル人材バンク」から新ブランド「TAKUWIL(タクウィル)」に変更した。

■広域行政BPOサービス

 広域行政BPOサービスは、人口10万人以下の地方都市を中心に、隣接する複数の自治体業務を受託する地方自治体向けシェアード型BPOサービスを全国展開している。

 24年5月には徳島県鳴門市と包括連携協定を締結した。地域の交通課題の解決に向けた取り組みや自治体BPOを推進する。24年7月には沖縄県宜野湾市と立地協定を締結、また山口県宇部市と立地協定を締結した。いずれも県内の複数自治体をカバーするシェアード型BPOセンターを新設する。

■環境経営支援サービス

 環境経営支援サービスは、市場拡大が期待できる環境ビジネス分野での新たな収益柱の構築を目指し、20年6月にエコノス<3136>からカーボンオフセット事業を展開するブルードットグリーンの株式を取得して子会社化(22年4月に株式追加取得して完全子会社化、現エスプールブルードットグリーン)した。CO2排出量算定支援から、CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)関連の排出量削減コンサルティング、クレジット仲介支援まで、ワンストップサービスの展開を推進する。

 ゼロカーボンシティ実現に向けた包括的連携協定は、24年2月に群馬県富岡市、24年3月に鹿児島県和泊町、24年6月に栃木県さくら市、24年7月に北海道陸別町、24年9月に宮崎県都農町、岐阜県輪之内町と締結して全国18件となった。またエスプールブルードットグリーンは、24年3月にbooost technologiesと業務提携契約、一般社団法人サステナブル経営推進機構と連携協定契約、24年4月に公益社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)とJリーグ気候アクションパートナー契約を締結した。

■人材ソリューション事業はコールセンター派遣が主力

 人材ソリューション事業はコールセンター業務の派遣を主力として、販売支援業務や介護系業務の派遣・紹介なども展開している。

■その他分野

 その他分野では、24年6月に地域中小企業の課題解決に向けて事業承継支援サービスを展開する子会社エスプールブリッジを設立した。24年9月にはエスプールブリッジが地方創生支援の取組として、地域特産品を販売するオフィスコンビニ「ふるさとすたんど」サービスを開始した。24年10月にはサステナビリティ研修ツール「PivottAサステナ」を活用し、ニフコと共同でニフコのサプライチェーンマネジメントにおける実証実験を開始すると発表した。

■新中期経営計画(25年11月期~29年11月期)を策定

 25年1月に策定・公表した新中期経営計画では、最終年度29年11月期の目標値に売上収益360億円、営業利益45億円、営業利益率13.3%、連結配当性向30%以上、高水準のROE維持を掲げている。24年11月期実績を基準とするGAGR(年平均成長率)は売上収益が7.1%、営業利益が10.1%となる。重点戦略としては、主力事業を軸としたオーガニック成長の継続、グループシナジーによる事業推進、AI/DX活用による収益性および経営効率の向上、次世代を担う多様な人材の育成を掲げている。

 注力事業の戦略として、障がい者雇用支援サービス(売上収益29年11月期目標130億円、GAGR10.6%)では、農園サービスの全国展開(24年11月期53農園、29年11月期目標90農園)を推進し、26年11月期より既存モデルの7大都市圏への拡大、27年11月期より小規模な新型モデルの地方都市への展開を推進する。

 広域行政BPOサービス(同29年11月期目標29億円、GAGR14.0%)では広域行政モデルの確立に向けて、BPOセンターの拡充(24年11月期21拠点、29年11月期目標30拠点)や、広域行政業務比率の引き上げ(24年11月期30%、29年11月期目標70%)を推進する。

 環境経営支援サービス(同29年11月期目標24億円、GAGR8.5%)ではサステナビリティ経営コンサルティングのリーディングカンパニーを目指し、顧客基盤拡大、サービスメニュー拡充による顧客深耕、コミュニティプラットフォーム立ち上げなどを推進する。

 また、人材アウトソーシングサービス(同29年11月期目標110億円、GAGR0.7%)では、フィールドコンサルタントの専門性向上による現場改善機能強化や、派遣スタッフの定着率アップによる顧客満足度向上などにより、高付加価値化を推進する。

■24年11月期の各利益は計画超、25年11月期は2桁営業増益予想

 24年11月期の連結業績(IFRS)は売上収益が23年11月期比0.9%減の255億54百万円、営業利益が0.2%増の27億83百万円、親会社所有者帰属当期利益が21.4%増の20億99百万円だった。配当は23年11月期と同額の10円(期末一括)とした。配当性向は37.6%となる。

 売上高は計画(270億60百万円)を下回ったが、各利益は計画(営業利益27億50百万円、親会社株主帰属当期純利益18億29百万円)を上回る水準で着地した。人材ソリューションが低調だったが、ビジネスソリューション事業の成長が牽引した。

 セグメント別(内部取引、全社費用等調整前)に見ると、ビジネスソリューション事業は売上収益が19.6%増の150億16百万円で、営業利益が21.7%増の36億99百万円だった。

 障がい者雇用支援サービスの売上収益は16.4%増の80億35百万円だった。法定雇用率の引き上げ(24年4月)などにより受注・販売とも高水準に推移した。設備販売に期ズレが発生したが、売上高・利益とも計画を達成した。期末時点の顧客数は664社(新規18社、解約5社)で、管理区画数は8809区画、就労者数は4405名(定着率92%)となった。

 広域行政BPOサービスの売上収益は8.4%増の15億06百万円だった。下期より定額減税業務を開始し、販管費抑制も寄与して収益改善した。なお総選挙の影響で国策系業務の営業が停滞したため、25年11月期の上期に営業が発生する見込みとしている。環境経営支援サービスの売上収益は67.8%増の15億93百万円だった。コンサルティングサービスの納品次期集中により第4四半期の売上が大幅に伸長した。

 ロジスティクスアウトソーシングサービスの売上収益は9.5%減の13億31百万円だった。物流センター運営代行業務からの撤退の影響で減収となり、通販発送代行業務の採算も悪化して営業損益が大幅に減少した。採用支援サービス(OMUSUBI)の売上収益は10.0%増の7億87百万円だった。AI活用による低価格化により応募受付代行の新規顧客が順調に増加した。営業利益は業務効率化効果で3割増益だった。セールスサポートサービスの売上収益は44.9%増の11億66百万円だった。拠点開設効果により大規模キャンペーンの受託が進展したほか、ベルシステム24との共同サービスが拡大した。

 人材ソリューション事業は、売上収益が20.2%減の106億20百万円で、営業利益が31.5%減の8億67百万円だった。主力のコールセンター業務の売上収益は21.8%減の85億83百万円、販売支援の売上収益は15.3%減の12億20百万円だった。コールセンター業務の売上収益は新型コロナ関連業務終了により大幅減収だが、需要は緩やかに持ち直し傾向としている。また、需要拡大基調の建設業領域への派遣サービスを第4四半期に開始した。

 なお全社ベースの業績を四半期別に見ると、第1四半期は売上高が56億58百万円で営業利益が25百万円、第2四半期は売上高が64億35百万円で営業利益が7億16百万円、第3四半期は売上収益が60億86百万円で営業利益が5億38百万円、第4四半期は売上高が73億75百万円で営業利益が15億04百万円だった。第4四半期は売上高、営業利益とも四半期ベースで過去最高だった。

 25年11月期連結業績(IFRS)予想は売上収益が24年11月期比5.0%増の268億28百万円、営業利益が10.4%増の30億74百万円、親会社所有者帰属当期利益が9.2%減の19億07百万円としている。配当予想は24年11月期と同額の10円(期末一括)としている。予想配当性向は41.4%となる。

 セグメント別(内部取引、全社費用等調整前)の計画は、ビジネスソリューション事業の売上高が12.6%増の169億08百万円、営業利益が14.3%増の42億29百万円としている。売上高の内訳は障がい者雇用支援サービスが12.0%増の90億円、広域行政BPOサービスが16.2%増の17億50百万円、環境経営支援サービスが15.5%増の18億40百万円、ロジスティクスアウトソーシングサービスが3.8%減の12億80百万円、採用支援サービス(OMUSUBI)が11.1%増の8億75百万円、セールスサポートサービスが22.6%増の14億30百万円としている。

 障がい者雇用支援サービスの農園開設は6農園、設備販売は1300区画の計画である。26年より農園の全国展開を目指すが、当面は既存農園の欠員補充対策(採用強化・退職抑制)を優先するため販売を一時的に抑制する。広域行政BPOサービスは下期偏重の計画(上期5億円、下期12.5億円)である。環境経営支援サービスは主要サービスの納品が第3四半期に集中する見込みだ。ロジスティクスアウトソーシングサービスは収益改善に向けて抜本的な立て直しに取り組む。採用支援サービス(OMUSUBI)は新規顧客獲得や既存顧客へのクロスセルを推進する。セールスサポートサービスは主要顧客との取引拡大やベルシステム24との協業拡大を推進する。

 人材ソリューション事業は売上高が4.9%減の101億円、営業利益が8.3%減の7億95百万円の計画としている。コールセンター派遣の回復に向けてサービスの差別化に取り組む。売上高の内訳はコールセンター業務が2.1%減の84億円、販売支援が26.2%減の9億円、その他が2.1%減の8億円の計画としている。

 25年11月期は増収・2桁営業増益予想としている。また中期経営計画(25年11月期~29年11月期)を発表し、営業利益のGAGR10.1%を目指すとしている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は調整一巡

 株価は安値圏で軟調な形だが、調整一巡して出直りを期待したい。1月30日の終値は285円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS24円14銭で算出)は約12倍、今期予想配当利回り(会社予想の10円で算出)は約3.5%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS124円51銭で算出)は約2.3倍、そして時価総額は約225億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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