【どう見るこの相場】不動産株、富裕層の投資で活況呈す―金利上昇の逆風を跳ね返す力強い動き

■ムゲンエステート、ミガロホールディングスなど高値更新―富裕層のオルタナティブ投資が牽引

 昔から「金持ち 喧嘩せず」といわれてきた。それと同じように「金持ち、家作を買う」も、財産三分法として資産運用の鉄則であった。その非居住者による投資用・賃貸用不動産の取得は本来、日本銀行が、政策金利を引き上げ「金利のある世界」に変化した金融環境下では逆風が吹くはずである。ところがこのところ、富裕層の非伝統的なオルタナティブ投資によって不動産株に業績を上方修正し増配を発表し昨年来高値を更新する銘柄が相次いでいる。ムゲンエステート<3299>(東証スタンダード)やミガロホールディングス<5535>(東証プライム)などが代表例だ。

 このうちムゲンエステートは、昨年11月に続き、今年1月29日に目下集計中の2024年12月期の2回目の上方修正と増配を発表し、株価は15%も急騰したが、この再上方修正は、日銀が、政策金利を0.25%から0.5%に引き上げを決定した1月24日の金融政策決定会合や、大手銀行が、住宅ローン金利の基準となる短期プライムレートの引き上げを決定した直後である。

■建築コスト上昇や大工不足など課題も―タマホーム、ロゴスホールディングスは業績下方修正

 業績の上方修正そのものは、昨年11月が不動産買取再販事業で投資用・居住用不動に堅調に需要が続き、今年1月の再上方修正は、その投資用・居住用不動産が前回予想時を上回る利益率で販売が進捗していることを要因としている。株価は、昨年11月の業績修正時に昨年来高値2210円まで買い進まれ41%高し、その後の昨年12月の日銀の金融政策決定会合での政策金利引き上げを警戒して1683円まで調整したが、今年1月の政策金利引き上げでは、このアゲインストな事業環境にもかかわらず18%の急騰を演じたことになる。

 見渡せば不動産株には同様のカタリストで業績を上方修正する銘柄が相次いでいるのである。富裕マネーは、ちょっとやそっとの金利引き上げにはびくともしない厚みを持っていることを物語っているようである。もちろん不動産株には、逆に苦戦して業績を下方修正する銘柄も少なくない。例えばタマホーム<1419>(東証プライム)、ロゴスホールディングス<205A>(東証グロース)などである。建築資機材、物流費の上昇や大工不足による建築期間の長期化などのコストを価格転嫁する販売価格の値上りが引渡戸数の減少として業績を押し下げた結果である。

■「金利のある世界」でも業績上方修正・増配の不動産株は物件取得より株券取得でショートカット

 このパワービルダーは、あの新型コロナ感染症のパンデミック(世界的な感染爆発)時にはリモートワークの巣ごもり需要で戸建住宅の販売戸数を大幅に増加させ業績も株価も大きく伸ばした実績がある。それが足元ではコスト増と住宅ローン金利上昇のダブルパンチを受けていることになる。そこに海外投資家の日本の不動産市場への積極攻勢が加わる。不動産業界は、業績伸び悩み・下方修正組と上方修正組の二極化に拍車を掛けているといってもいいようだ。

 しかもこの業績修正の勝ち組は、ムゲンエステートをみても2024年12月期ベースでまだPERは7倍台、年間配当利回りも 5.59%と割安なのである。またこの勝ち組のなかには、M&Aを仕掛け、仕掛けられ住宅業界の一部流動化を示唆する銘柄も含まれている。ここは勝ち組不動産株や関連の不動産DX(デジタルトランスフォーメーション)株にも照準を合わせ、取り扱う投資物件は高額でとても手が出せそうもないが、株券は相対的に入手しやすいだけに代替投資のショートカットに一考余地がありそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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