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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】日本エム・ディ・エムは14年11月高値試す動き、16年3月期業績予想に再増額の可能性
- 2015/11/5 06:43
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
日本エム・ディ・エム<7600>(東1)は整形外科分野の医療機器商社である。メーカー機能を強化して収益拡大基調だ。11月4日には米国子会社ODEV社製人工股関節の新製品の薬事承認取得を発表した。株価は16年3月期業績予想の増額修正を好感して年初来高値圏で堅調に推移している。16年3月期業績予想に再増額の可能性があり、10月14日の年初来高値675円、そして14年11月高値698円を試す展開だろう。
■整形外科分野の医療機器商社、メーカー機能を強化して自社製品比率上昇
人工関節製品、骨接合材料、脊椎固定器具など整形外科分野を主力とする医療機器商社である。メーカー機能の強化によって高収益体質への転換を推進している。
ジョンソン・エンド・ジョンソンとの販売契約が13年3月期に終了したが、米国子会社オーソデベロップメント(ODEV)社製品の拡販、自社製品比率上昇による売上原価率低下効果で収益拡大基調だ。米ODEV社製の人工膝関節製品は中国でも薬事承認を取得している。
自社製新製品の動向としては、米国で14年1月に米ODEV社製の人工膝関節製品「BKS-Momentum」と「E-Vitalize」を販売開始した。日本では14年5月に人工膝関節製品「BKSオフセットティビアルトレイ」を販売開始した。
14年9月には米ODEV社製の人工股関節大腿骨ステム「OVATION Tributeヒップシステム」と、ステムヘッド「ODEV BIOLOX deltaセラミックヘッド」を販売開始した。また米ODEV社は人口膝関節製品「KASM」の米国食品医薬品局(FDA)薬事承認を取得して販売開始している。
15年5月には米ODEV社製の人工膝関節製品「バランスド・ニー・システム TriMax PS」の販売を開始した。より深い膝関節の屈曲を可能としたHigh-Flexタイプの人工膝関節である。現在販売中の「バランスド・ニー・システム」シリーズにHigh-Flexタイプの製品が加わることで人工膝関節製品の販売拡大が期待される。
15年7月にはMaterialise社(ベルギー)と、3D技術を用いた人工股関節置換術に使用する患者毎の手術器械PMIに関して取引契約を締結した。17年から順次販売予定で、注力分野である人工股関節製品の販売拡大に寄与するとしている。
15年8月には、オズール社(アイスランド)製造のハローベストシステム「ReSolveハローシステムCE」の販売開始を発表した。3.0T-MRI診断装置による撮影を行えることが特徴で15年9月から順次発売する。
11月4日には米ODEV社製の人工股関節の新製品「Alpine ヒップシステム」の薬事承認取得を発表した。16年2月から順次販売を予定している。新製品は人工股関節市場において、当社が未だ参入しきれていないセグメントに対する人工股関節で、本製品の導入によって人工股関節市場における主要なセグメントを網羅することになる。
■下期の構成比が高い収益構造
15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)26億32百万円、第2四半期(7月~9月)26億87百万円、第3四半期(10月~12月)31億59百万円、第4四半期(1月~3月)33億77百万円、営業利益は第1四半期2億39百万円、第2四半期2億53百万円、第3四半期5億38百万円、第4四半期2億65百万円だった。
15年3月期は税制改正等に伴う繰延税金資産取崩が影響して最終赤字だったが、整形外科医療機器の販売は下期が繁忙期となる傾向があるため、当社の業績も下期の構成比が高い傾向があるとしている。なお15年3月期の自社製品売上比率は14年3月期比5.6ポイント上昇して80.0%、売上総利益率は同0.7ポイント低下して69.9%、販管費比率は同4.6ポイント低下して59.0%だった。
■16年3月期第2四半期累計は大幅増益、通期は再増額余地
10月30日発表の今期(16年3月期)第2四半期累計(4月~9月)の連結業績(7月30日に利益を増額修正、10月13日に売上高と利益を増額修正)は、売上高が前年同期比16.0%増の61億72百万円、営業利益が同40.5%増の6億91百万円、経常利益が同47.2%増の5億96百万円、純利益が同54.6%増の3億33百万円だった。
地域別の売上高を見ると、日本は同10.0%増の40億23百万円だった。人工関節製品および骨接合材料製品が好調に推移し、脊椎固定器具製品も大幅伸長した。米国は同29.3%増の21億49百万円だった。人工関節製品が順調に推移し、ドル高・円安に伴う換算額増加も寄与した。米ドルベースでは同10.2%増収だった。なお自社製品売上比率は同6.0ポイント上昇して85.0%となった。
売上総利益率はドル高・円安の影響で同0.8ポイント低下して71.0%となったが、売上高が計画を上回り、医療工具の運用改善によって減価償却費が計画を下回ったことも寄与して大幅増益だった。販管費は米ODEV社の販売拡大に伴う支払手数料増加などで同11.0%増加したが、販管費比率は同2.7ポイント低下して59.8%となった。なお特別損失に医療工具など固定資産除却損1億10百万円を計上した。
品目別売上高を見ると、人工関節は米ODEV社製人工股間接製品「オベーションヒップシステム」が好調で同17.3%増の38億69百万円(日本が同5.8%増収、米国が同30.1%増収)、骨接合材料(日本)は「MDMプリマヒップスクリューシステム」が堅調で同1.6%増の13億円、脊椎固定器具は米ODEV社製「Pagodaスパイナルシステム」および14年12月発売「IBISスパイナルシステム」が好調で同60.5%増の7億54百万円(日本が同71.1%増収、米国が同17.3%増収)だった。
四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)30億46百万円、第2四半期(7月~9月)31億26百万円、営業利益は第1四半期3億29百万円、第2四半期3億62百万円だった。
通期連結業績予想については10月13日に増額修正を発表した。前回予想(4月30日公表)に対して、売上高が50百万円増額して前期比12.6%増の133億50百万円、営業利益が2億円増額して同23.5%増の16億円、経常利益が2億円増額して同28.8%増の14億円、純利益が30百万円増額して7億30百万円(前期は3億91百万円の赤字)とした。配当予想については前回予想(4月30日公表)を据え置いて同1円増配の年間6円(期末一括)としている。予想配当性向は21.8%となる。
米ODEV社製の人工股間接製品「オベーションヒップシステム」や脊椎固定器具「Pagodaスパイナルシステム」、当社と米ODEV社が共同開発した骨接合材料製品「MODE」シリーズなど、主力製品の販売が日本および米国において好調に推移する。14年12月発売の脊椎固定器具「IBISスパイナルシステム」や15年5月発売の人工膝関節製品「バランスド・ニー・システム TriMax PS」も寄与する。自社製品比率上昇も寄与して増収増益予想だ。
純利益は繰延税金資産取崩の影響一巡も寄与する。想定為替レートは1ドル=120円(15年3月期実績は1ドル=110円30銭)としている。なお6月末に米国ArthroCare Corporationとの日本国内販売代理店契約を終了したが、業績への影響は軽微としている。
通期会社予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が46.2%、営業利益が43.2%、経常利益が42.6%、純利益が45.6%である。下期の構成比が高い収益構造であり、15年3月期の第2四半期累計の構成比(売上高44.9%、営業利益38.0%、経常利益37.3%、純利益は通期ベースで赤字)との比較でみれば高水準と言えるだろう。通期会社予想に再増額の可能性がありそうだ。
■中期経営計画で18年3月期ROE8.0%目指す
15年4月に発表した16年3月期~18年3月期の新中期経営計画「MODE2017」では、経営目標数値に18年3月期売上高160億円、営業利益20億円、経常利益18億円、ROE8.0%を掲げている。
中期経営指針を「成長領域への積極投資を通じ新たなステージへ成長を加速させる」として、顧客ニーズに対応した自社新製品の開発強化、10品目以上の自社開発新製品群の継続的市場投入、整形外科領域周辺・隣接分野での調達力強化、製品ラインナップの強化、北米市場での販売拡大、自社製造能力(米ODEV社)の拡大と製造コストのさらなる低減、品質管理の強化、製造から販売・市販後まで一貫した安全管理体制の整備、などの施策を推進する。
高齢化社会到来も背景として、利益率の高い自社製品の拡販が牽引して中期的に収益拡大基調だろう。
■株価は年初来高値圏で堅調、14年11月高値試す
株価の動きを見ると、16年3月期業績予想の増額修正を好感して、10月14日に年初来高値675円まで上伸した。その後も年初来高値圏で堅調に推移している。そして11月4日は673円まで上伸して10月14日高値に接近した。
11月4日の終値650円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS27円58銭で算出)は23~24倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間6円で算出)は0.9%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS409円70銭で算出)は1.6倍近辺である。時価総額は約172億円である。
週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって強基調の形だ。16年3月期業績予想に再増額の可能性があり、10月14日の年初来高値675円、そして14年11月高値698円を試す展開だろう。